女の子が主人公の昔話は世界各地にある!|中脇初枝さんが再話した「世界の女の子の昔話」
主人公は女の子、お姉さん、おばあさん…世界各地に伝わる女の子の昔話が楽しめます
四万十市出身の作家・中脇初枝さんは創作活動に加えて、昔話の「再話(さいわ)」に取り組んでいます。「よく知られる昔話の主人公は圧倒的に男の子が多い」という現状から、女の子が主人公の昔話の再話に力を入れ、本や絵本を発表してきました。
最新作は「世界の女の子の昔話」。15 カ国から 18 話が収録されています。
主人公は女の子にお姉さん、そしておばあさんも。親切だったり、勇気があったり、怠け者だったり、ずるいことをしたり…多様な世界の物語を親子で楽しんでみませんか?
女の子が主人公の昔話を掘り起こしてきました
中脇さんは小説「きみはいい子」「わたしをみつけて」「世界の果てのこどもたち」などで知られています。
子どもの頃から昔話が大好きで、大学では民俗学を専攻。その土地で語り継がれてきた昔話の資料を読み込み、各地を訪れ、出会った人たちの話や昔話に耳を傾けてきました。
昔話の主人公が男性に偏っている現状を変えていこうと、2012 年に刊行されたのが「女の子の昔話 日本につたわるとっておきのおはなし」(偕成社)。国内に伝わる女の子が主人公の昔話が 20 話収録されています。
さらに、2022 年には偕成社から「女の子の昔話えほんシリーズ」を刊行。高知に伝わる昔話「ちからもちのおかね」「おだんごころころ」のほか、外国の昔話も絵本として発表されました。
再話とは、昔話を読みやすく、語りやすいお話に再構成することです
最新作「世界の女の子の昔話」には、15 カ国の昔話が収録されています。日本で知られるヨーロッパの昔話だけでなく、アジア、南米、アフリカの昔話も再話しました。
再話とは、伝えられている昔話を、今を生きる私たちが読みやすく、語りやすいお話に再構成することです。
昔話は長い時間をかけて、たくさんの人に伝えられてきたお話です。地域や時代によって、内容も少しずつ変わっていきます。
中脇さんは最初に記録された昔話の資料を読んだり、研究者に協力してもらったり、実際に昔話を聞かせてもらいながら、たくさんの昔話と出合ってきました。
お話を再構成する過程では、子どもや昔話の語り手に実際に聞いてもらうそうです。
「伝えられてきた昔話の形を損なわないように、声に出して語りやすく、耳で聞いて分かりやすいことを心掛けています」
女性は若くて、きれいで、働き者じゃないといけない?
昔話を選ぶ際に中脇さんが大切にしているのが、子どもたちへのメッセージです。「昔話は『この世界は悪いものじゃないよ。安心して生きていってごらん』と子どもたちの背中を押していくもの」と考えています。
今回は、女性への固定観念を取り払うようなお話選びも意識したそうです。
「『女性は若くて美しい方がいい』とか、『女性は家事をしないといけない』『女性は男性よりも真面目で働き者でないといけない』など、知らず知らずのうちに内面化してしまいがちな固定観念がありますよね。私自身も縛られていたことに気付かされました」
今回選んだお話に「くいしんぼうのなまけもの」というスペインのお話があります。主人公の娘はタイトルの通り、食いしん坊の怠け者。周囲に助けられ、自分で機転も利かせて、怠け者のまま幸せになります。
「女性は何にでもなれるけれど、何にもならなくていい。幸せな結末も結婚だけじゃない。逆に男性も一家の大黒柱にならなくてもよくて、女性も男性も共に助け合って生きていけばいいんですよね」
「『何者にもならなくても、身の安全が守られ、生きているだけで十分なんだよ。だから、あなたはそのままでいいんだよ』というメッセージを伝えてくれるのが昔話です」
各国のお話を読むことで、文化の違いや共通点に気付けるのも「世界の女の子の昔話」の魅力。お話の後には解説があり、より理解が深まります。
対象年齢は「小学校中学年から」。一つ一つのお話は短いので、年長児や低学年の子どもに読んであげるのもよさそうです。
「高知にいながら、世界の広がりを感じさせてくれる一冊だと思います。日本にはないタイプのお話もありますので、親子でぜひ楽しんでくださいね」
【世界の女の子の昔話】
- 再話:中脇初枝
- 絵:うえのあお
- 対象年齢:小学校中学年から
- サイズ:20 ㎝× 14 ㎝、214 ページ
- 定価:1400 円(税抜き)
- 発行所:偕成社
金高堂書店などで販売しています。