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虐待、非行…居場所をなくした子どもに緊急避難場所を|子どもシェルター「おるき」が2024年3月、高知県内に開所します

虐待、非行…居場所をなくした子どもに緊急避難場所を|子どもシェルター「おるき」が2024年3月、高知県内に開所します

四国初の「子どもシェルター」を高知に。医療、福祉、法律に携わる人々がNPO法人「子どもシェルターおるき」で活動しています

「子どもシェルター」をご存じですか?児童虐待や非行などさまざまな問題で、安全で安心して過ごせる居場所をなくした子どもたちのために用意された、緊急の避難場所です。

この子どもシェルターを四国で初めて高知につくろうと、医療、福祉、法律に携わる人々がNPO法人「子どもシェルターおるき」を設立しました。2024 年 3 月に子どもシェルター「おるき」を開所します。

子どもシェルターはどんな施設で、なぜ必要なのでしょうか。高知市内で開かれた開設記念シンポジウムから紹介します。

 

NPO法人「子どもシェルターおるき」は 2021 年12月、子どもシェルター開設に向けた準備をスタート。2023 年 3 月にNPO法人として認証を受けました。

メンバーは医療、福祉、法律の専門家の皆さん。理事長は、ココハレでもおなじみの小児科医・吉川清志さんです。

小児科医の吉川清志さん。「子どもシェルターおるき」の理事長を務めています
小児科医の吉川清志さん。「子どもシェルターおるき」の理事長を務めています

開設記念シンポジウムは 2023 年 12 月 16 日、高知市朝倉戊の高知県立ふくし交流プラザで開かれました。国内初の子どもシェルター「カリヨン子どもの家」(東京都)の創設に携わった弁護士で、社会福祉法人「カリヨン子どもセンター」理事の坪井節子さんが講演しました。

開設記念シンポジウムには約150人が詰めかけました
開設記念シンポジウムには約150人が詰めかけました

坪井さんの講演と、「子どもシェルターおるき」の理事で弁護士の中島香織さんのお話から、子どもシェルターについて紹介します。

子どもシェルターは「緊急避難場所」。高校生、大学生の年代に必要とされています

子どもシェルターは子どものための緊急避難場所で、全国に 20 カ所あります。母子シェルターや女性シェルターの子ども版で、NPO法人や社会福祉法人などが民間シェルターとして運営しています。

高知の子どもシェルター「おるき」は、女子専用のシェルターとなります。定員は 6 人で、2 カ月間をめどに無料で利用できます。場所は安全確保のため非公開です。

弁護士の中島香織さん。「子どもシェルターおるき」の理事です
弁護士の中島香織さん。「子どもシェルターおるき」の理事です

中島さんによると、想定される利用者は高校生から大学生の年代です。児童相談所の一時保護所では過ごしづらい子どもや、年齢制限のために利用できない子どもが対象になります。

「親から虐待を受け続けてきた子、家にいられなくなって外で危ない大人とつながり、危険な目に遭っている子が高知にもいます。そんな子どもたちの命と心を守る場所が子どもシェルターです」

子どもシェルターには、子ども本人の意思で入居します。個室があり、スタッフが 24 時間交代制で一緒に生活をします。

子どもシェルター「おるき」での生活の流れ。一人一人のペースに合わせていきます(「おるき」ウェブサイトより)
子どもシェルター「おるき」での生活の流れ。一人一人のペースに合わせていきます(「おるき」ウェブサイトより)

子どもにはそれぞれ、担当の弁護士が付きます。「子ども担当弁護士」なので「コタン弁護士」と呼ばれます。

コタン弁護士は、子どもの話を聞き、退去後の生活や住まいを一緒に考えていきます。「子どもの居場所は親には知らせません」と中島さん。親とも顔を合わせず、やりとりはコタン弁護士が担当します。

シェルターでの生活費や弁護士費用なども全て無料です。シェルターの運営は助成金や寄付でまかなわれます。

なぜ「子どもシェルター」が必要?原点となった少女とのエピソード

こうした子どもシェルターがなぜ必要なのでしょうか。開設記念シンポジウムで講演した坪井節子さんは、活動の原点となった 16 歳の少女とのエピソードを語りました。

弁護士の坪井節子さん。国内初の子どもシェルターの創設に尽力しました
弁護士の坪井節子さん。国内初の子どもシェルターの創設に尽力しました

坪井さんと少女との出会いは今から 30 年ほど前。少女は薬物を使用して逮捕され、少年院に送致されるかどうかという状況で、坪井さんが付添人となりました。

小学生でシンナーを吸い始めたという少女に坪井さんが理由を聞くと、少女はこう答えました。

「見たくないことがたくさんあったから」「シンナーを吸ったら忘れられるよと教えてもらった」

少女は幼い頃から父親に虐待され、母親からは「お前なんか生まれてこなければよかった」と言われてきました。生育歴を聞きながら、「この子に私がしてあげられることは何もない」と感じた坪井さんは、少女にこう声を掛けました。

「あなたが生まれてきたことを誰も喜んでないと思う?私はあなたに生きててほしいと願ってる」

16歳の少女との出会いが、子どもシェルターの活動の原点となりました
16歳の少女との出会いが、子どもシェルターの活動の原点となりました

坪井さんは少女のもとに通い続け、「心の糸が通じている」と手応えを感じていました。しかし、少女の親は面会に来ることはなく、少年院送致が決定的となります。

坪井さんと面会した少女は、怖い顔をして叫びました。「少年院になったら極道になってやる!極道になるしかない!」

「役に立たない弁護士だと思われたのでしょう。『お願いだから、そんなことを言わないで。帰ってくるのを待ってるから』と声をかけるのが精いっぱいでした」

一番大好きな親に虐待されて育った子どもは、大人を信じられなくなります。幼い頃から児童相談所での一時保護や施設入所が繰り返され、「16 歳、17 歳になると、心の扉をガチガチに閉じてしまう」と坪井さんは説明します。

少年院を出た少女はその後、数々の困難を乗り越えました。どうしようもなくなった時には、坪井さんに電話をかけてきました。

心の扉を閉ざしてしまった子どもに、私たち大人ができることは?
心の扉を閉ざしてしまった子どもに、私たち大人ができることは?

30 代になり、母になった少女は、坪井さんにある時、こんな話をしました。

「うちの近くの公園に、1 人でシンナーを吸ってる子がいたの。その子からシンナーを取り上げて、うちでご飯を食べさせてるんだよ。シンナー吸ってる子の気持ちは、吸ってた大人にしか分かんないからね」

「人間ってどんなものなのか、私は坪井先生や少年院の先生から教わった。だから今は、私にできることをしていきたい」

坪井さんは「私たち大人は無力」と語ります。

「目の前の子どもに、私たちは『生きててほしい』と願うことしかできない。でも、その小さい点を頼りに、子どもは生き抜けるんです。子どもって本当にすごいんです」

「自分を否定されない」「自分のことを一緒に考えてもらえる」…ひとりぼっちじゃない経験を

子どもシェルター「カリヨン子どもの家」では 2004 年のスタートからこれまで、約 600 人の子どもたちに関わってきました。女子の利用が多いそうです。

講演で坪井さんは「子どもの人権とは何かを考えると、3 本の柱がある」と語りました。

【子どもの人権とは】

  • 生まれてきてよかったね…「自分は生まれてきてよかった」という確信がないと、子どもは生きていけません
  • ひとりぼっちじゃないんだよ…たくさんの問題を解決してあげられなくても、「1 人じゃない」と伝えてください。子どもをひとりぼっちにしないでください
  • あなたの道は、あなたが選んでいい…子どもが自分の道を選ぶまで、周りの大人は先回りせず、ぐっと待ちましょう

 

全国の子どもシェルターで、この三つを柱に支援が続けられています。

「とにかく、子どもの話を聞く。これからに向けての選択肢は提示するけれど、『決めるのはあなたなんだよ』と伝えます」

「選択する経験のない子どもには『朝ご飯はパンがいい?ご飯がいい?』から始めます。三つの柱を大事に関わっていくと、子どもたちは回復していきます」

パネルディスカッションでは、高知県内の現状が語られました
パネルディスカッションでは、高知県内の現状が語られました

講演後のパネルディスカッションでは、中村署少年育成指導官の佐々木美紀さん、児童家庭支援センター「高知ふれんど」センター長の谷本恭子さん、JA高知病院の小児科医・本浄謹士さんが登壇しました。谷本さん、本浄さんは「子どもシェルターおるき」の副理事長も務めています。

それぞれの立場から、「子どもシェルターを必要としている子どもは高知にもいる」と語られました。

高知で子どもたちの支援に携わる皆さんも「高知に子どもシェルターがあれば…」と思うことが多々あったそうです
高知で子どもたちの支援に携わる皆さんも「高知に子どもシェルターがあれば…」と思うことが多々あったそうです

「おるき」では入居の 2 カ月間、スタッフやコタン弁護士が子どもに向き合います。弁護士として少年事件や虐待事案に携わる中島さんは「おうちの中はブラックボックス」だと感じることが多いそうです。

「子どもたちは自分に真摯(しんし)に向き合ってもらう経験、自分のことを一緒に考えてもらう経験をしてきていません。大人と一緒に楽しい時間を過ごした経験も乏しいです」

「『おるき』で私たち大人がじっくり話を聞くこと、これからを一緒に考えていくことを通して、子どもたちが『大人に頼ってもいいかな』と思い、前向きに生きる意欲を獲得していく場所にしていきたいです」

2024年3月の開所に向けて準備を進めていきます
2024年3月の開所に向けて準備を進めていきます

子育て中のお父さん、お母さんには「お子さんの話をよく聞いてあげてください」と語りました。

「子どもに言うことを聞かせようとすると、親は追い詰められます。子育てに正解はないので、お父さんもお母さんも気持ちを楽にしてください」

「子育ては旅と一緒で、親子は一緒に旅をする仲間です。旅行の準備のように調べたり、旅先で誰かに助けてもらって旅する仲間を増やしたりしながら、結果ではなくプロセスを大事に、楽しんでもらえたらと思います」

 

子どもシェルター「おるき」は 2024 年 3 月の開所予定です。NPO法人「子どもシェルターおるき」のウェブサイトで情報を発信していきます。

運営に必要な寄付も募っていくとのことです。ココハレでもご紹介していきます。

この記事の著者

門田朋三

門田朋三

小 2 と年中児の娘がいます。「仲良し」と「けんか」の繰り返しで毎日にぎやかです。あだなは「ともぞう」。1978年生まれ。

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