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「子どもが言うことを聞かない」「わざと親を怒らせるのはなぜ?」|子どもの個性についてJA高知病院・本浄謹士先生が講演しました

「子どもが言うことを聞かない」「わざと親を怒らせるのはなぜ?」|子どもの個性についてJA高知病院・本浄謹士先生が講演しました

子どもは「小さな大人」ではありません。子育ては「思うようにいかないもの」と思っておきましょう

子どもに対して、「なぜ言うことを聞いてくれないんだろう?」「どうしてわざと親を怒らせるんだろう?」と感じたことはありませんか?

「子どもの個性」をテーマにした保護者向けの講演会が高知市内で開かれ、JA高知病院(南国市)の小児科医・本浄謹士さんが子どもの発達について語りました。

子育てをする上で頭に入れておきたいのは「子どもは『小さな大人』ではない」ということ。子どもとの付き合いは「思うようにはいかないもの」と思っておくことが大事だそうです。

 

本浄さんは南国市にあるJA高知病院の小児科医長です。小児科診療の中で、子どもの発達相談や発達障害の診療に取り組んでいます。南国市と香美市の乳幼児健診を担当し、学校や保育園・幼稚園、行政とも連携しながら子どもと保護者への支援を進めています。

今回ご紹介する講演会は 2022 年 3 月 19 日、高知市六泉寺町の地域子育て支援センター「いるかひろば」で開かれました。

子どもが月曜の朝にぐずるのはなぜ?発想を変えてみましょう

「子育て、うまくいってます?」。本浄さんの講演は、保護者へのそんな投げ掛けから始まりました。

「うまくいかんでしょ?ざっくり、腹が立ちますよね」「僕は子どもが 3 人いるんですけど、振り返れば『何で?』っていうくらい子どもを怒ってました。もう大人になったので、『あの時、ごめんよ』と謝ってます」。思いがけない告白に、場が和みました。

いるかひろばで行われた本浄謹士さんの講演。子どもを遊ばせながら、発達について考えました
いるかひろばで行われた本浄謹士さんの講演。子どもを遊ばせながら、発達について考えました

「子どもがなぜ、言うことを聞いてくれないのか」「なぜ、わざと親を怒らせるようなことをするのか」という疑問に、本浄さんは発達の視点から答えていきました。

例に挙げたのが次の“あるある”な場面です。

4 歳の子どもです。月曜の朝になるとぐずるので、保育園に連れて行くのが大変です

 

4歳児の多くは大人と言葉でコミュニケーションを取れるようになっています。ですが、日曜日の夜に「明日から保育園だよ」と予告しておいても、ぐずる時はぐずります。子どもの言葉にまつわる特徴として、本浄さんは次のように説明しました。

【子どもの言葉にまつわる特徴】

  • しゃべっている以上には分かっていない…おしゃべりが上手になっても、内容を理解して話しているとは限りません
  • 大きい声で、遠くから、いっぱい言われると分かりにくい…認知処理能力の問題。大人でも苦手な人はいます
  • 大人が思っているほどには分かっていない…会話が成り立っていると、見落としがちです

 

もう一つ頭に入れておきたいのが、「この社会は大人の都合でできている」ということ。「月曜日から金曜日までが保育園で、土曜日と日曜日はお休み」という曜日の感覚は、この年代の子どもにはまだ分かりづらいそう。

「月曜日から保育園というのは大人の都合ですし、日曜日は同じ『お休み』でも、日によって活動内容が違います。子どもからしたら『何で?』となります」

さまざまな要素が絡み合い、「月曜日から保育園ね」「分かった」という会話ができていたとしても、月曜の朝には子どもがぐずり、親はイライラ。「『子どもが言うことを聞かない』のではなく、『大人が言っていることを理解しにくいのかもしれない』と発想を変えてみてください」

「ちゃんとしなさい!」の「ちゃんと」って何?

「もしかしたら、私が子どもに言い聞かせていることが伝わっていないのかもしれない」と発想を変えると、次の手だてが見えてきます。日常の会話で、振り返ってみたいのが次の言葉です。

【子どもを叱る時に親が言いがちな言葉】

  • ちゃんとしなさい!…「ちゃんと」って何?
  • じっとしなさい!…「じっと」ってどうしたらできる?
  • 早くしなさい!…どうしたら早くできる?
  • そんなことしたらダメ!…じゃあ、どうしたらいいの?
  • いい加減にしなさい!…「いい加減」って具体的には?

 

これらの言葉を全く使わずに子育てをするのは難しいですが、伝わっていないのにイライラしても仕方がないですね。口頭での指示のこつとして、本浄さんは「具体的に、肯定的に、一つずつ」と説明しました。さらに、遠くから伝えるのではなく、「子どもに近づいて、穏やかに、静かに伝える」ことも大事だそうです。

「子どもはもともと、興味関心が多く、聞いているようで、指示する大人に注意が向いていない可能性があります。伝え方を変えてみてもうまくいかない場合は、大人が一緒に行動し、まねをさせていくといいですよ」

子どもへの指示は「具体的に、肯定的に、一つずつ」
子どもへの指示は「具体的に、肯定的に、一つずつ」

親を怒らせる行動をわざとしている?「好ましい行動」に注目を

親をイライラさせる子どもの行動に「わざと怒らせる」があります。例えば、食事中に「やめなさい」と注意しても笑いながら何度もフォークを落とすという行動。「子どもは発達すると、いらんことをするんです」と本浄さん。「わざとではなく、行動を身に付ける過程です。ある行動をすることで、大人が反応するのを学習しているんですね」

親はどうしても、子どもの「好ましくない行動」に目が行きがちです。そこをあえて、「好ましい行動」「できている行動」に目を向けてみましょう。

【「笑いながら何度もフォークを落とす」という好ましくない行動への対応】

  • 「落とすのをやめなさい」と落としたことに注目する→「落とす」という行動が伸びていく
  • 落としたことに注目せず、フォークを持って食べる行動に注目する→「フォークを持って食べる」という行動が伸びる

 

「子どもが当たり前にできている行動は、決して当たり前ではない」とのこと。「好ましい行動が出た時や、いつもできている行動を褒めてあげる対応の方が次につながります」

本浄さんが担当する発達相談では、診察室から飛び出す子どもがいるそうです。「飛び出しても必ず帰ってくるので、『出たらいかん』と注意するのではなく、帰ってきた時に『帰ってきたね』と声を掛けます。声を掛けてもまた飛び出しますが、帰ってくる時間がだんだん短くなるんですよ」

「好ましい行動を褒める」という対応は幼児期だけでなく、小学生になっても使えるそうです。

「『宿題しなさい!』と叱るんじゃなくて、鉛筆を持ったら『鉛筆持った!すごい!』とか『鉛筆を持ったその人さし指がすてき』とか」「まだ漢字を 1 個も書いてなくてもいいんです。できてるささいなことはどんどん褒めてあげてください」

「遊び」は他者と良好な関係を築いていくために必要です

人間はライフステージを通して、亡くなるまで発達すると言われています。その中でも子どもは、めまぐるしく発達していく時期。成長していろいろな行動ができるようになる一方で、さまざまな行動を通して人間関係も築いていきます。

他者と良好な関係をつくれるようになる、つまり社会で生きていくために必要なこととして、本浄さんは二つ挙げました。

【他者と良好な関係をつくれるようになるために必要なこと】

  • 他者と楽しいことを共有する
  • 困った時に十分に受け入れられる

 

本浄さんが特に大切にしているのが「遊び」で、「遊びによって子どもたちは成長し、保護者と安全で安定して養育関係をつくっていく」と語ります。

例えば、子どもは限られた時間で遊ぶ時、子どもなりに「どうしたらめいいっぱい楽しく遊べるか」を考えていきます。そこで身に付くのが次の能力です。

【遊びで身に付く実行機能…「あれもしたい!これもしたい!」という場面】

  • 計画性…「今日は何をして遊ぼうかな」と自分で考えたり、友達と話したりする
  • 優先順位を付ける…たくさんの遊びの中から「今日は一番に三輪車に乗る」と順番を決める
  • マルチタスクをこなす…「一輪車に乗りながら、砂場の様子を見て、砂場が空いたら砂場で遊ぶ」といったように同時並行で行動する

 

どれも、大人になって家事や仕事をする場面で必要ですね。

子どもは自分で決めて遊ぶ中で、楽しい時には「ねぇねぇ、見て見て!」とにこにこしながら大人を呼びます。子どもの笑顔に大人が笑顔で反応することで、「他者と楽しいことを共有する」という経験をしていきます。

子どもの遊びはとても大切。「その子がしたい遊びに大人が乗っかり、一緒に楽しんでください」
子どもの遊びはとても大切。「その子がしたい遊びに大人が乗っかり、一緒に楽しんでください」

転んだり、友達とトラブルになったりした時には泣いて訴えます。「子どもが泣くのには理由があり、『泣くこと』が発達していく」と本浄さんは説明します。

自分が泣いた時に大人にピンチを救ってもらうことで、子どもは「困った時に十分に受け入れられる」という経験をしていきます。この経験を繰り返すことで、「困った時に『助けて』とSOSを出すこと」を身に付けていきます。他者に「助けて」と言えることは、社会を生きていく上でとても大切です。

「子どもが泣いたら、『泣いたらいかん』と言ってしまいがちです。それを否定はしませんし、僕も言ってきましたが、順番があります。まず、泣くほど困っている子どもを受け入れるのが先。話を聞いて共感し、ピンチを救った上で、『泣きやんで』と声を掛けてあげてください」

子どもは「小さな大人」ではなく、わが子でも違う人間です

子どもとの付き合いの中で前提としておきたいことは次の五つです。

【子どもとの付き合い】

  • なかなか思うようにはいかない
  • うまくできないのが当たり前…「うまくいかないからダメな親」ではありません
  • 親は最初から“親”ではない
  • 子どもは小さな“大人”ではない
  • わが子でも違うヒト…親とは考え方、捉え方が違います

 

「子育ての方法って学校では習いませんよね。1 個も教えられていないのに、こんな難しいことをいきなり完璧にしなさいというのは理不尽だなと思います」。本浄さんはそんな言葉で、保護者の気持ちを和らげました。

子どもは「小さな大人」ではなく、また「未完成なもの」でもないそうです。

「子どもは未熟ですが、その時その時で完成されたものであり、完成してほしいものがあります。泣いて甘える時期は『泣いて甘える』ということを完成させていく時期です。大人の顔色をうかがって我慢するのではなく、思い切り甘えてほしい。子ども時代は子どもらしく生きてほしいと思います」

脳の特徴から「もともと育てにくい子」もいます
脳の特徴から「もともと育てにくい子」もいます

一方で、「もともと育てにくい子どもは存在する」と本浄さんは語ります。その場合は早い段階から子どもの苦手なことに気付き、支援していくことが大事です。

「なかなか寝てくれない」「落ち着きがない」「強い偏食がある」など、子育ての困りごとと子どもの発達との関係について、ココハレの「発達障害を知ろう④」で紹介しています。発達障害の早期発見から診断までについては、「発達障害を知ろう②」で本浄さんが解説しています。ぜひご覧ください。

 

 

JA高知病院小児科は発達相談を月曜日午後と水曜日に行っています。完全予約制です。

【JA高知病院】

  • 住所:高知県南国市明見字中野 526-1
  • 電話:088-863-8544(予約センター)

初めての方はまず電話でお問い合わせください。予約センターの番号で、平日 13:30~16:30 の時間帯で対応しています。

この記事の著者

門田朋三

門田朋三

小 2 と年中児の娘がいます。「仲良し」と「けんか」の繰り返しで毎日にぎやかです。あだなは「ともぞう」。1978年生まれ。

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