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子どもの安全地帯を親が広げていこう!|松岡修造さんが語る「子育て」とは?ココハレ編集部が聞きました

子どもの安全地帯を親が広げていこう!|松岡修造さんが語る「子育て」とは?ココハレ編集部が聞きました

土佐の「おきゃく」にもサプライズ登場!「ノーバリアゲームズ」で高知を訪れた松岡修造さんに「子育て」を熱く語っていただきました

高知市内で 3 月 10 日に開かれた「第 4 回ノーバリアゲームズ ~#みんなちがってみんないい~」。MCを務めた松岡修造さんがなんと、ココハレ編集部のインタビューに応じてくださいました!

プロテニスプレーヤーとして活躍し、ジュニアの育成に長く携わってきた松岡さん。「褒める」「個性」「ルール」「時代の変化」などをキーワードに子育てを考え、「子どもの安全地帯を広げていくのが親の役割かな」と語りました。

イベントに合わせて、中央公園で開かれた「土佐の『おきゃく』」にもサプライズ登場したそう。高知の印象や、ココハレ読者へのメッセージも紹介します。

 

スポーツキャスターや解説者などでおなじみの松岡修造さん。元プロテニス選手で、1995 年のウィンブルドンでは、日本人男子として 62 年ぶりにグランドスラムのベスト 8 に進出しました。コートに大の字になって天を仰いだシーンを思い出す方も多いのでは。

「ノーバリアゲームズ」でMCを務めた松岡修造さん
「ノーバリアゲームズ」でMCを務めた松岡修造さん

松岡さんは、高知市の丸ノ内緑地で開かれた「第 4 回ノーバリアゲームズ ~#みんなちがってみんないい~」に参加するため、高知を訪れました。

「ノーバリアゲームズ」はWOWOWのパラリンピック・ドキュメンタリーシリーズ「WHO I AM」から生まれたユニバーサルスポーツイベントです。松岡さんは第 1 回からMCを務め、性別、年齢、国籍、障害の有無を問わない多様な参加者たちがチャレンジする様子を盛り上げています。

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ココハレ編集部はイベントの前日にお話を伺いました。

坂本龍馬さんの「万事、見にゃわからん」が僕の大きな主軸です

はじめに伺ったのが高知の印象。番組のロケなどで何度も来ているそうです。

――高知に来られたことはありますか?

松岡さん:よく来てます。「くいしん坊!万才」を 25 年やってるんで、番組で 2 回来てますし、むろと廃校水族館にも行きました。テニスクリニックでも来てますね。

――高知の印象は?

松岡さん:やっぱり坂本龍馬さんですね。現役の時、日本人は僕 1 人で、友達が本しかなかったんですね。食事が 1 人っていうのが多くて、その時に対話できるのが本だった。「竜馬がゆく」を読んで、龍馬さんの思いとか、日本の文化とか考え方とか、チャレンジするというのが、どこか僕の中に注入されたんだろうなと思います。

坂本龍馬の言葉が松岡さんの主軸となりました
坂本龍馬の言葉が松岡さんの主軸となりました

松岡さん:龍馬さんの「万事、見にゃわからん」が僕の大きな主軸です。動いて、見てみないと分からないぞという。今はSNSも含めて情報がすごく多いですよね。人の情報に振り回されるというか、操られることがすごく多くて。実際に見に行って、感じて、そこから何を思うのかが最も大事なんだろうなと思います。

イベントの前日には、中央公園で開かれていた「土佐の『おきゃく』」にサプライズで登場したそう。

――サプライズですか?!

松岡さん:しましたよ。カラオケ大会に。サプライズでも何でもないでしょう。

――酔っ払いがたくさんいたのでは…。

松岡さん:気持ちがハイになってる人は、僕が何だろうと関係ないですよ。カラオケが始まって、むちゃくちゃ面白かった。AIが歌の点数を出して、途中で駄目だったら、ぱんっとやめるんです。それが最高に面白くて。

「土佐の『おきゃく』」にサプライズ登場!「カラオケがむちゃくちゃ面白かった!」
「土佐の『おきゃく』」にサプライズ登場!「カラオケがむちゃくちゃ面白かった!」

松岡さん:中学生がむちゃくちゃうまかったのに、AIが途中でストップしたんです。AIが「駄目だ」って。それが許せなくて。AIは気持ちが分かってないって(笑)。僕もお酒を飲みたかったですし、高知の皆さん強いですしね。お酒を飲んだら、本当にノーバリアになるかなと(笑)。

――それは…失礼なくらいノーバリアになるかもしれません(笑)。

松岡さん:いいじゃないですか、それも(笑)。

ジュニア選手から相談された時は?答えを出さず、「WHY」をずっと投げ掛けていきます

高知に来る前日まで、ジュニアの強化選手の合宿に参加していた松岡さん。テニスの話から、子育ての話へと進みました。

松岡さん:テニスって、世界的なスポーツであり、個人的なスポーツ。世界で活躍するなら、低年齢から世界に行かないといけない。それも誰かと一緒に行くとか、チームで行くとかじゃない。1 人で英語をしゃべれないといけないし、何をしたいかが表現できないといけない。それって、日本人にとっては最も不得意分野です。錦織選手、西岡選手、トップ 100 に入ってる選手たちに、僕は低年齢から携わることができた。彼らにとって最も嫌なこと、タフなことが、自分の思いを表現していくことです。

――ジュニアの選手にどんなふうに関わっていかれるんですか?

松岡さん:何か相談されたとしても、僕は質問しかしないんですよ。

――質問のみ、ですか。

松岡さん:紙を 1 枚持って行って、言われたことをずーっと書いていく感じですね。そして、「これについては、どうして?」と「WHY」を投げ掛けていく。最終的には、答えを自分で持っているんです。そこで出た自分の答えであれば行動しやすいし、自分の力として動けるんですけど、僕が最初から答えを出したら、それは人の言葉。うまくいっても、壁に当たると、またすぐ聞くでしょうね。

「最初から僕が答えを出したら、またすぐ聞くでしょう」
「最初から僕が答えを出したら、またすぐ聞くでしょう」

――うーん、親はすぐに答えを出しちゃいがちですよね。

松岡さん:大人がすぐに答えを出すと、自分で決断できない人、大事な時に動けない人になってしまうんじゃないかという不安があります。

――確かに。

松岡さん:テニスで世界のトップに行ってもらうのは、うれしいですよ。一つの目標と思ってますから。でも、9 割以上の子はテニスの生活をしていかないわけです。テニス以外の、いろんな仕事を全うしている子どもたちが、昔感じていた「諦めない」「自立する」「チャレンジする」という思いとともに成長している姿を見るのが、僕にとっての一番の楽しみです。

「褒めて育てる」に大事なことは?本気で褒めてる?

ジュニアの選手を育てる上で、親への働きかけも大事だそうです。わが子にスポーツをさせているお父さん、お母さんへのアドバイスとは。

松岡さん:昔、親に対しての合宿も行っていました。僕が親御さんに「一番やめてほしい」と伝えたのが、試合のビデオを撮って、親がいろいろ指示を出すことです。

――それは…やりがちです。

松岡さん:最も難しいんですよ。僕ら指導者でも、子どもにたくさんのことを言ったら情報過多になるし、指導にはポイントがあって、そこをどうやって見極めて指示するか。親であって、テニスもそれほどしていなかったら、「なんであなた、ここでミスしたの?」「なんでここで下向いてるの?」。基本的に責める感覚、いいポイントを見極めないまま終わってしまう可能性がある。

「ノーバリアゲームズ」と同時開催の「楽しくあそぼう スポーツパーク」に飛び入り参加。熱血指導していました!
「ノーバリアゲームズ」と同時開催の「楽しくあそぼう スポーツパーク」に飛び入り参加。熱血指導していました!

松岡さん:褒めるのはすごく大事だと思います。日めくりカレンダーで「ほめくり」っていうのを出したんですよ。褒めるって、思ってもいないのにできないなと。

――なるほど、親が思っていないのに褒めても、子どもたちには伝わらない。

松岡さん:大人が、子どもたちに本気になって大事なことを伝えるというのは、厳しく聞こえるかもしれない。でも、ある意味、僕にとっては「君は成長できるんだ」っていう、褒めてる感覚にも近いんですよ。

――「褒める」と「厳しい」は、離れているように感じます。

松岡さん:おだてたり、「良かったね」では人は変わらないと思います。すごく厳しくて、壁にぶち当たって、殻を破っていく瞬間に人は変わるというのを僕は経験しているし、指導の中で見てきたことなので。褒めることと、本当の意味での、本気の情熱のある伝え方があれば、多分子どもたちは分かるんですよね。もっと欲してるかもしれないし。

失敗するのはいいこと!具体化して修正できる力があれば、全てがプラス!

「ノーバリアゲームズ」のテーマは「みんなちがって、みんないい」。金子みすゞさんの「私と小鳥と鈴と」にある有名な一節です。松岡さんは「個性」をどう捉えているのでしょうか。

松岡さん:海外の選手って、むちゃくちゃ個性を持ってます。日本の教育はやっぱり、みんな同じように授業を受けて。子どもたちも受け身で、自分が表現する機会がすごく少ない。個性を出していこう、と。

――日本人が不得意とするところですよね。

松岡さん:そうですね。ただ、個性といっても、個性が見た目だけとか、ルールが守られていないというのとは違うと思います。基本という軸をしっかり持ってる中で、ルールを守って発揮していくのが本当の個性じゃないかなと。

――見た目から入るのは、ありますね。

松岡さん:勘違いする可能性はありますよね。でも、失敗はいいんですよ。失敗する中で、いろいろ試していくし。

松岡さんが考える「個性」とは?
松岡さんが考える「個性」とは?

松岡さん:今回のジュニア合宿のメインテーマは「プラス」にしました。調子が良かったり、うまくいっている時はプラスで、何も考えずにできる。でも、うまくいかないと、消極的、ネガティブ、マイナスになる。それをどうプラスにしていくか。

――マイナスからプラスへ。知りたいです。

松岡さん:僕は意外と、根性論が好きじゃなくて。マイナスの時に「頑張れ」「できるよ」と言うだけだったら、みんなできる。どのようにしたら修正できるか、具体化するために本気で聞いていき、考えてもらう。具体化して修正できる力があれば、それはもう、全てがプラス。失敗したり、マイナスであればあるほど、むちゃくちゃ成長する。「失敗しろ」っていう言葉が生きてくるところなんですよね。

――具体的に伝えるって大事ですね。子どもはやり方が分かりませんもんね。

松岡さん:それが何につながるかって、面白さ、やる気なんです。できないからできていないことに対して「頑張れ」と言われても、僕が子どもだったらつまんない。最低限できる具体的な形を指導者は伝えないと。

テレビゲームは悪くない。でも、それ以上に面白い地上のゲームを見つけてほしい

話題はテレビゲームの話へと移りました。

松岡さん:僕、テレビゲームは悪いと思っていないんですよ。視力の問題やゲーム脳と批判される部分もありますけど、鍛えられる部分もありますから。今はeスポーツもあって、僕も取材しました。

――「ゲームはなるべくやらせたくない…」と親は思っちゃいます。

松岡さん:目指すのは、テレビゲームよりも面白い地上でのゲームです。スポーツもそうですが、地上でのゲームは自分が動いている生ものだから、それに勝るものはない。ゲームにはまっている子どもに対しては、それ以上のものを探せてないという捉え方です。あとはルールでしょうね。ルールって、子どもたちだけで決められるのかな?でも、この間取材したからねぇ…。

――松岡さんが認可外の学校を取材されているのを、テレビで見ました。子どもたちが何でも自主的に決めていく様子が印象的でした。

松岡さん:全部子どもが決めるんですよ。授業の内容も全部。でも、ルールはあるんですよ。子どもたちに責任があるから、自分たちで決めたルールがより厳しい。これは本当に自立していくなって。

――「個性」と「ルール」って相反するものと捉えられがちですが、「基本」という意味でのルールはないといけないですし、ルールがあると、子どもたちは面白さを感じて成長していけるんですね。

「地上のゲームに面白さを感じてほしい」
「地上のゲームに面白さを感じてほしい」

松岡さん:僕は自分で言うのも何ですけど、人から見たらちょっと若い感覚がある。僕の周りにいる人は迷惑かもしれない。僕自身が子ども的なところがあるから。

――(笑)。

松岡さん:それはジュニアや子どもたちに携わっているから。子どもたちのエネルギーは僕に大きな力をくれるんです。お孫さんのいるご年配の皆さんも含めて、子どもと一緒にいる時間ってすごく大事。子どもは最初は基本、「無理」って言わないから。年齢とともに諦めるんじゃなくて、やってみる。そのきっかけは子どもがくれるんじゃないでしょうか。

子どもにとって「今、ここが快晴」となるように支えていこう!

最後に、高知で子育てを頑張るお父さん、お母さんにメッセージを頂きました。「ココハレ」の名前の由来である「高知で子育て」と「晴れ晴れ」を説明すると、こんな言葉が返ってきました。

松岡さん:ココハレ。僕がやってる「がん晴れ」(テレビ朝日「サンデーLIVE!!」のコーナー「松岡修造のみんながん晴れ」)みたいですね。ココハレって(子どもにとって)今ここが快晴ということですよね。それを親御さんたちがつくってるんじゃないかなと思いました。

「ノーバリアゲームズ」も快晴でした!
「ノーバリアゲームズ」も快晴でした!

松岡さん:僕がジュニアたちによく言うのが「君たちは安全地帯にいるんだ。何があっても、どんな失敗をしようが、親が絶対守ってくれるぞ。支えてくれるぞ。だから、好きなことをやれ」。もちろん、全員の親がそうではないかもしれませんが。この言葉を発すれば発するほど、自分も守る力や支える力が大きくなります。

――子どもを守る力に、支える力。

松岡さん:ココハレを見ている方も十分頑張っています。だから、「頑張れ」とは僕は言いません。「頑張ってるね」っていうのが、僕の言える言葉です。

――ありがとうございます。励まされます。

松岡さん:安全地帯を広げるのが、親の役割かもしれないですね。今はどんどん狭めたい。怖いとか、危険とか。子どもにうまくいってほしいから、先に道をつくっちゃうんですよね。

――先回りはよくないと分かりつつ…。

松岡さん:ジュニアの親御さんからも「この子をこうしたい」「こうやったらうまくいく」という話があります。でも、僕は聞きません。それは親が考えていることであって、子どもが本当に何をしたいのかが大事。

――失敗するとたたかれたり、炎上も日常茶飯事です。ついつい、先に守ろうとしちゃいます。

松岡さん:だから、昔と違って大変でしょう。先生方も大変。一言一言を気をつけないといけない。ポイントは子どもたちがどう捉えたかじゃないでしょうか。本当の意味で愛情を持って伝えていたら、マイナスには取られないんじゃないかなっていう思い、希望ではいます。

「子どもの安全地帯を広げるのが親の役割かもしれないですよね」
「子どもの安全地帯を広げるのが親の役割かもしれないですよね」

松岡さん:時代が変わっても、メインとなるポイントはずっと変わらないんですよ。でも一つ、SNSも含めてこれだけ情報が多くて、便利になった今の状況が、今の子どもたちにとっての常識です。そこは僕らが合わせない限り、おかしくなります。「昔はこうだった」って、彼らには全く関係ないですから。そこは全て、今の時代の子どもになったつもりで話さないと、伝わりようがない。

――今の子どもたちに合わせながら、大事なことをどう伝えていくかですね。

松岡さん:一番の教育は「気付き」ですよね。「アハ体験」。その子が「あっ!」と気付く瞬間。若い女性とおばあさんの両方が見える絵があります。「若い女性に見えた!」「おばあさんに見えた!」で「あーっ!」ってなりますよね。あの感覚が大事だと思っています。

――発見すると、熱くなりますね。

松岡さん:発見した感覚は、一気に変わる瞬間です。あと、「ちょっとできた」という「ミニ・できた」。自分の中でちょっとできたことを「ビッグ・できた」というふうに捉えられるかです。

――変われる瞬間を、大事な瞬間として自分で捉えていけるかということですね。

松岡さん:「できたじゃないか!」と伝えた時に、「いやー…」と答える子がいたら、僕むちゃくちゃ怒る時があるんです。「何でだ!」「ちょっとでもこんだけ変わった自分を、君は何で喜べないんだ!」って。子どもからしたら、「なんで怒られるんだろう」みたいな(笑)。

――それは確かに(笑)。親として、子どもが気付く瞬間を大事にしていきたいと思います。

「ココハレ読者のお父さん、お母さん。皆さん、頑張ってます!」
「ココハレ読者のお父さん、お母さん。皆さん、頑張ってます!」

 

多忙なスケジュールの中でインタビューに応じてくださった松岡さん。冒頭で「僕、変わってるんですよねー」といきなり腕立て伏せを始めてココハレ編集部員の緊張をほぐしてくださるなど、気遣いの方でした。

「子どもに本気で向き合っていますか?」という熱い思いを受け取りました。自分の子育てにも早速、取り入れていこうと思います。

この記事の著者

門田朋三

門田朋三

小 3 と年長児の娘がいます。「仲良し」と「けんか」の繰り返しで毎日にぎやかです。あだなは「ともぞう」。1978年生まれ。

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