「パンどろぼう」7作目はスイーツ!迷路、絵探しを親子で楽しんで|シリーズ累計480万部を突破!大人気絵本の制作で心がけていることは?柴田ケイコさんに聞きました

最新作「パンどろぼうとスイーツおうじ」ってどんなお話?柴田ケイコさんのインタビューをお届けします
高知市在住の絵本作家・柴田ケイコさんの大人気シリーズ「パンどろぼう」。7 作目となる「パンどろぼうとスイーツおうじ」が 2025 年 9 月 10 日に刊行されました。
今回の舞台は「スイーツおうこく」。食わず嫌いの「スイーツおうじ」が登場します。「迷路」に「絵探し」と、初の仕掛けも話題となっています。
シリーズは累計 480 万部を突破。アニメ化も発表され、さらに盛り上がっています。“産みの親”の柴田さんの心境は?制作で心がけていることは?ココハレ編集部がお話を聞きました。
目次
「スイーツおうじ」誕生の裏側は?
「パンどろぼう」は 2020 年 4 月、KADOKAWAから刊行されました。主人公は、おいしいパンを探し求める大泥棒。ある日、森の中で見つけたパン屋さんに忍び込むところから始まりました。
2021 年 1 月に 2 作目の「パンどろぼうvsにせパンどろぼう」、2024 年 9 月には 6 作目の「パンどろぼうとりんごかめん」を刊行。コンスタントに新作が発表され、多くのファンを楽しませてきました。

最新作となる 7 作目が「パンどろぼうとスイーツおうじ」です。

柴田さんに最新作の裏側から聞きました。
――今回の「スイーツおうじ」はどんなアイデアから生まれたんですか?
「スイーツをテーマにというのがあって、キャラクターを考えていきました。『王子かな、王女かな』『どんな性格?」と何案か考えました」
――王子はライオンなんですね。
「他の動物でも考えたんですけど、王子って強いイメージということでライオンになりました」
――「スイーツおうじ」は食わず嫌いがあって、わがままで、だいぶ子どもっぽいなと。
「そうですね。3 歳から 5 歳くらいかな。主な読者である幼児をイメージしました」
迷路、絵探し…「読者参加型」の仕掛けを作りました
スイーツおうじはスイーツばかり食べて、他のものを食べません。心配したおうひさまがパンどろぼうに解決を依頼しますが、スイーツおうじは気に入りません。
逃げるスイーツおうじを追いかけるパンどろぼう。ページをめくると、迷路が出てきて、絵探しも。これまでのシリーズにはなかった仕掛けです。

――絵本の帯に「こんなパンどろぼう 見たことない!」とあります。子どもに読み聞かせをすると、迷路も絵探しも真剣に楽しんでいました。
「よかった!ありがとうございます(笑)。今回は『ダンジョンを作ろう』ということで、お城の中にいろんな仕掛けをして、パンどろぼうが挑んでいくストーリーにしました」
――ダンジョン!
「そう。でも、パンどろぼうが挑むのを見るだけじゃなくて、読者参加型にしたいなと思って。それで、迷路と絵探しを入れました」
――なるほど。わが家では 1 年生が挑戦したんですけど、ちょっと考え込んでいて。
「そうそう。パンどろぼうと一緒に挑んでもらえるように、ちょっと難しいくらいにしました」

――スイーツパーティーの場面は絵探しですね。キャラクターがたくさん描かれていて、制作が大変だったのでは。
「この場面は『スイーツおうこく』の国民という設定で、新たなキャラクターを描きました。人と動物の割合も考えて」
――そこまで考えるんですね!
「そうなんです。絵は日を分けて丁寧に描いていったらできるなと。私自身も楽しみながら完成できました」
―― 5 作目の「パンどろぼうとほっかほっカー」でも感じたんですけど、柴田さんが描き込まれた絵を見るのは本当に楽しいです。
「子どもって絵の細かい所まで見てくれるんです。『お城ってどんな所だろう』『お城の中には何があるんだろう』と調べたら、備品を置く部屋があったり、料理部屋があったり。お城の造りを盛り込みながら、スイーツを加えていきました」
令和で最も売れている児童書…「こんなキャラを作れるのは一生に一回」
「パンどろぼう」シリーズは累計 480 万部を突破しました( 2025 年 9 月 10 日時点)。
人気は絵本の販売だけにとどまりません。ファンシーショップにパンどろぼうのグッズがずらりと並ぶ光景は日常となりました。6 月にはアニメ化が発表され、ファンを喜ばせました。
柴田さん自身は今のパンどろぼう人気をどう受け止めているのでしょうか。
――発売からわずか 5 年で累計 480 万部を突破。「令和で最も売れている児童書」となりました。
「本当にあっという間!パンどろぼうくんについて行くのに必死です(笑)」
―― 7 作の中で、特に思い入れのある作品はありますか?
「やっぱり 1 作目の『パンどろぼう』かな。私の中では『これで終わり』と思って描いたので」
――そうなんですか?!
「KADOKAWAさんから 2 作目のお話をいただいた時に、『パンどろぼうは泥棒じゃなくなったけど続いていくんだな』と。1 作目が面白いのはどのシリーズもそう。超えようと思うと萎縮するから、また新たなキャラクターで新たなお話をつくっていこうと思っています」

――新しいお話をつくる時に心がけていることはありますか?
「パンどろぼうの性格をぶれずに守ること。『こういう性格だから、こう動く』という」
――柴田さんの考える「パンどろぼうの性格」とは?
「それが、時がたつと忘れちゃうんですけど(笑)。『パンが好き』といちずなところ。悪いことはしましたけど、出会った相手に熱い思いで対応する人情家。で、鈍くさいところもある。読者の皆さんにも共感してもらえるキャラクターかなと」

――絵本の読者は幼児から小学生くらいだと思うのですが、お店にはグッズがたくさん並んでいます。若い人がグッズを身につけていたり、広がりを感じます。
「今の時代は『絵本だけ描いて終わり』ではなくて、いろんな層に広がる機会があります。グッズもそうですし、人形劇もアニメも、絵本に興味のない人に興味を持ってもらうきっかけになります。手に取っていただけると、パンどろぼうが認められたなと感じます。こんなキャラクターを作れるのは一生に一回のことですよね。最初は『変なの生まれたな』と思ってたんですけど(笑)」
――なるほど。世に大きく羽ばたいたキャラクターの作者としては…。
「『パンどろぼうくん、行っておいで』という感じ(笑)」
――「累計480万部」という数字はどう受け止めていますか?
「『累計何万部!』『売れてます!』はプレッシャーになるので、マイペースにこの世界を描きたいと思っています。なかなか難しいですけど。でも、結果として報告を頂くとうれしいですし、糧にもなります」
「親子で一緒に楽しむ時間」をつくってください
シリーズは 1 年に 1 作のペースで刊行されています。最新作が刊行されたばかりですが、早くも次回作の準備に入る時期だそうです。
――次のお話はもう考えているんですか?
「頭の中で構想を練っています。『パンどろぼう』には毎回毎回、『予想外』や『あれ?』を入れていきたい。読者の皆さんが新しい作品を待ち望んでくださっていますので」

――次回作が楽しみです!最後に、ココハレ読者のお父さん、お母さんにメッセージをお願いします!
「『パンどろぼうとスイーツおうじ』では皆さんが大好きな甘い物がたくさん登場します。お子さんから大人まで楽しめますので、お忙しいとは思うんですが、親子で一緒に楽しむ時間をつくってほしいです」
――読み聞かせって「本好きの子にしたい」みたいな親の欲もあったりはしますが、親子にとっていい時間だなと思います。
「そうですね。親は読んであげた絵本を忘れますけど、子どもの記憶には残ります。子どもって、ページで覚えてたりしますよね。記憶に残るのがすごく大事で、その積み重ねが親子の絆になるんじゃないかな」
――「パンどろぼう」も今の子どもたちの記憶に残り、将来親になった時にわが子に読んであげたらステキです。
「そうそう。『変顔の絵本だったよね』って覚えてもらっていたらうれしいです(笑)」


【パンどろぼうとスイーツおうじ】
- 作:柴田ケイコ
- 発行:KADOKAWA
- 定価:1540円(税込み)
- 公式サイト:https://ehon.kadokawa.co.jp/pandorobo/
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