「赤ちゃんはどこから来るの?」にどう答える?おうちで始める性教育とは?|幼児ママの疑問を「土佐姉妹」と考えました
高知のお父さん、お母さんと専門家をつなぐ「ココトーク」。第1回は「性教育」をテーマに開催しました
高知のお父さん、お母さんと専門家をつなぐココハレ企画「ココトーク」。
第 1 回は「性教育」をテーマに、性教育に取り組む助産師さんのグループ「いのちのおはなしキャラバン隊!土佐姉妹」が登場しました。
集まったのは乳幼児を育てるお母さんたち。「『赤ちゃんってどこから来るの?』と子どもに聞かれて困りました」「子どもがおまたに興味を持っていて戸惑っています」などの声が上がりました。
おうちでの性教育の始め方、子どもの質問や行動への対応について、一緒に楽しく考えました。
目次
ココトーク第1回の先生は「いのちのおはなしキャラバン隊!土佐姉妹」
子育てをしていると生まれる、ちょっとした疑問や困りごと。わが子への上手な関わり方など、「専門家に聞いてみたいなぁ」と思う瞬間もありますよね。
ココトークは高知で活躍する子育ての専門家を講師に招く、ココハレの新企画。少人数の子育てセミナーを開催していきます。
第 1 回は「いのちのおはなしキャラバン隊!土佐姉妹」さんとコラボし、2024 年 7 月 12 日に高知新聞社(高知市本町 4 丁目)で開催しました。
土佐姉妹は、助産師の谷泰子さんと細川真利さんが 2023 年につくったグループです。性について「大人が子どもに教える」だけでなく、「親子で学ぶ」ことを大切に、新たな性教育に取り組んでいます。
参加したのは乳幼児を育てるお母さん 8 人。自己紹介では「これから性教育を始めたい」という赤ちゃんのお母さんもいれば、「小学生のきょうだいがいて、『赤ちゃんはどこから来るの?』と聞かれて困った」というお母さんもいました。
谷さんと細川さんは、お母さんたちの声に「分かる分かる!」「困っちゃうよねぇ」。明るい雰囲気でスタートしました。
5歳までに80%が「赤ちゃんはどこから来るの?」と質問します
今回のココトークのテーマは「『赤ちゃんはどこから来るの?』にどう答える?」です。実は「赤ちゃんはどこから来るの?」という質問、 5 歳までに 80 %の子どもがするそう。
聞かれた大人はドキッとしたり、「どうやって答えよう」と戸惑ったりしてしまいますが、細川さんは「子どもは純粋に命の根源や、自分はどうして存在しているかを知りたいんですよ」と説明しました。
私たち大人は今の子どもたちと違って、「性教育をきちんと受けていない世代」です。女子だけを集めて月経の話を聞いたり、高校生で性感染症や避妊について学んだり…といった程度。
「日本の性教育って“おまたのあたりのお話”が中心。でも、世界では、正しい知識を得て自分の体をしっかり取り扱い、相手を大事にする『豊かに生きるためのお話』として性教育が行われています」
世界の性教育は「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」に指針が示されています。子どもたちに伝える内容は、日本人からすると「ちょっと早過ぎない?」という印象を受けます。
例えば「人間のからだと発達」というキーコンセプトにある「生殖」の学習目標の一部がこちら。
- 5~8 歳…生殖のプロセス、特に精子と卵子が結合し、それが子宮に着床して初めて妊娠が始まることを説明する
- 9~12 歳…ペニスが膣内で射精する性交の結果で妊娠が起こることを再認識する
- 12~15 歳…妊娠は計画的にすることも、防ぐこともできると再認識する
日本では、性教育に対してさまざまな考え方があります。昔から言われる「寝た子を起こすな」に科学的根拠はないそう。
性について早くから教えることで、性行為が活発になるのではなく、性行為についてきちんと考えられるようになるそう。細川さんは「効果はデータとしてはっきり出ていますので、しっかりした知識を教えてくださいね」と呼びかけました。
おうち性教育に取り入れたい「あなたのことが大事だから伝えるよ」
なぜ今、「おうちで性教育を」と言われているのでしょうか。細川さんはこう説明しました。
「おうちは学校と比べて、長い時間を過ごす場所です。日常生活には体や性について話すきっかけがたくさんあるし、生まれてくる根源である親から『あなたのことが大事だから伝えるよ』と教えてもらえるのが、子どもはうれしいんです」
では、どうやって始める?実は、おうちでの性教育のスタートは、私たちが産後まもなくから頑張ってきた子育てにありました!
細川さんによると、性教育は「快・不快」から始まります。おむつ替えの時の「すっきりしたね」「気持ちよくなったね」という声かけは、自分で自分の体を大事にする一歩。
「人生を豊かに生きるためには、自分の体が大事。『汗をかいたから着替えようね』とか『歯を磨こうね』もその一歩であり、性教育なんですよ」
親が子どもとスキンシップを取ったり、子どもの話を受け止めたり。そんな親子の関わりから、子どもは「相手を大事にすること」も学んでいるそうです。
性教育はいつする?誰がする?どのようにする?
ここで、講師を谷さんにバトンタッチ。おうちでの性教育を実際にどう行っていくか、具体的に考えました。
谷さんによると、性教育で押さえておきたいポイントは次の三つです。
性教育はいつ行う?→子どもに聞かれた時がチャンスです
いわゆる「性の目覚め」は思春期以降ですが、性についての気付きはもっと早い段階で始まります。
例えば、「おちんちんの前に髪の毛があるね」など、子どもは思ったことを口にするので、その瞬間がチャンスです。
ポイント②
性教育は誰が行う?→子どもから質問を受けた人が答えましょう
質問されて戸惑ったとしても「『お母さんに聞いて』などのたらい回しは良くない」そう。
「そんなことを聞かないで」と否定すると、性について「聞きたいけれど、聞いてはいけない」と受け取ってしまうので、絶対に避けましょう。
性教育はどのように行う?→子どもの気づきを受け入れ、褒めましょう。質問の意図を確かめ、うそは言わずに淡々と説明しましょう
「赤ちゃんはどこから来るの?」と聞かれたら、まずは「すごいね!そんなことを考えるようになったんだね!」と褒めます。
そして、「どうしてそんなことを聞くの?」と質問の意図を確かめます。子どもが「お友達の家に赤ちゃんが生まれた」など理由を話したら、その気持ちに寄り添って答えます。
この時大事なのが、うそを言わないこと。谷さんは「『コウノトリが連れてきた』とか『命の星が降ってきた』はメルヘンですてきですが、事実ではありませんね」と語りました。
「赤ちゃんはどうやって生まれるの?」「赤ちゃんはどうやってできるの?」への答え方
ここで、参加者がグループワークを行いました。テーマはずばり、「『赤ちゃんはどこから来るの?』への答え方」です。
普段のママ友トークでは話す機会のないテーマとあって、これまでの経験や悩みも打ち明けながら語り合いました。
「赤ちゃんはどこから来るの?」という質問にはいろいろな意味が含まれるので、まずは質問の意図を確かめましょう。
「生まれた方」を知りたがっている場合の答え方
子どもが赤ちゃんの生まれ方を知りたがっていたら、「お母さんのおなかから生まれたよ」という答えになります。
さらにもう少し踏み込み、こんなふうに伝えるといいそうです。
「赤ちゃんのお部屋から生まれてくるまでに、赤ちゃんが知ってる道があるんだよ」「とても大切な場所だから、人に見せたり、触らせたりしないようにしようね」
幼い頃にここまで伝えておくと、性行為に興味を持つ年齢になった時に、「そんな神聖な場所に今、触れていいのか」と考えるようになるそうです。
「赤ちゃんのでき方」を知りたがっている場合の答え方
「赤ちゃんがどうやってできるのか」を知りたがっている場合は、子どもの発達段階に合わせた答えが必要です。
幼児期は例えば、こんな感じ。
「お母さん、○○(子どもの名前)に会いたくて、そしたら神さまがよこしてくれたんだよ。とってもうれしかった!」
子どもが「卵子」「精子」「受精」を習うのは小学 4 年生からです。「受精」を習っても、性交について教わるのはずっと先の高校になります。卵子と精子の結び付き方を教えるのは、親にとってはなかなかのハードル…。
そんな時に力を貸してくれるのが絵本です。
谷さんのおすすめは「おかあさんとみる性の本」として童心社から出版されている「ぼくのはなし」「わたしのはなし」。性交を説明するページもありますが、生々しくなく、淡々と読み進められます。
「絵本の言葉を借りると、性交も恥ずかしがらずに伝えられますし、子どもも『ふーん、そうなんだ』と受け止めます。『あなたが生まれてくれてうれしかったよ』という言葉もぜひ添えてあげてくださいね」
「性器への興味」「性器いじり」に困っています…ママの質問にも答えました
ココトークでは参加者からの質問に、土佐姉妹の 2 人が答えました。幼児のお母さんたちが困っていることの一つが「性器いじり」でした。
性器への興味は「自分の体のことを知りたい」という気持ちからなので、決していやらしいものではありません。まずは、興味を持つ理由を尋ねます。
「おまたがどうなっているかが知りたいから」だったら、「女の子にはおしっこを出す穴、うんちを出す穴、赤ちゃんの通り道があるんだよ」と伝えます。
「触って気持ちがいいから」という場合は、「あなたの大切な場所だよ」と、プライベートパーツ(プライベートゾーン)について教えます。「大切な場所だから人に触らせてはいけないし、人のを触ってはいけないよ。自分のを触りたい場合は手をきれいに洗って、人のいない所で触ろうね」と伝えましょう。
谷さんは「洗い方を教えるまでが親の役割」とも語りました。子どもが自分で性器を洗えるようになったら、「親も触らないし、見ない」を心がけましょう。
谷さん、細川さんのお話を聞き、性教育でもほかの教育と同じように「子どもの疑問や探究心に向き合う」ということが大事だとよく分かりました。
性教育を「子どもが幸せに生きていくための教育」と捉えると、親として恥ずかしがらずに伝えていけるのでは…と思います。おうちでの性教育、ご家庭でも始めてみませんか?
ココトークではこれからも、少人数のセミナーを企画していきます。「こんなことを学びたい」というリクエストがありましたら、ぜひココハレ編集部までご連絡ください!