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【つむサポ講座】「医療的ケア児」の子育てについて考えよう|新しい法律と必要な支援を学びました

【つむサポ講座】「医療的ケア児」の子育てについて考えよう|新しい法律と必要な支援を学びました

高知の新しい子育て支援「みんなでつむサポ」から、講座の様子を紹介します

2021 年度に始まった高知県の新しい子育て支援「みんなでつむサポ」では子育てサークルなど 8 団体・個人が「つむサポ講座」を企画しています。

今回ご紹介するのは「医療的ケア児の子育てについて考えよう」と企画された勉強会です。10 月 17 日にオンラインで開かれました。医療的ケアが必要な子どもと家族を支える新しい法律が施行するまでの流れや、これから必要な支援について学びました。

支援を考える際は「どんな障害があっても、子どもでも、その人がどうしたいのか、本人の意思を聞くこと」「本人を抜きに周囲の大人が決めないこと」が大事だということです。

 

つむサポ講座「医療的ケア児の子育てについて考えよう!」は病気や障害のある子どもを育てる家族のサークル「Smile Support Kochi(スマイル・サポートこうち)」とNPO高知市民会議が協働で開催。家族や医療、教育、福祉関係者ら約 60 人が参加しました。

共催として、次の 3 団体も参加しました。

  • 高知県医療的ケアの必要な子どもの家族の会
  • 高知県重症心身障害児(者)を守る会
  • バクバクの会~人工呼吸器とともに生きる~四国支部(高知県)

「高知県医療的ケアの必要な子どもの家族の会」は今年 9 月に施行された「医療的ケア児支援法」に合わせて、高知県内のお母さんたちが立ち上げた新しい団体です。

「医療的ケア児」について知っていますか?

講師はNPO法人「地域ケアさぽーと研究所」(東京都小平市)の理事・下川和洋さん。特別支援学校の元教諭で、医療的ケアが必要な障害のある人々が地域で豊かに暮らすことを目指し、訪問型生涯学習支援事業や人材育成などに取り組んでいます。

講師の下川和洋さん
講師の下川和洋さん

 

下川さんは「医療的ケア児支援法」が施行されるまでの流れを解説しました。

そもそも、「医療的ケア」とは何でしょうか。

医療的ケアは「日常生活に必要な医療的な生活援助行為」と位置付けられています。自宅や学校など病院以外の場所で生活する上で必要な医療行為を、医師の指示の下で、医師以外の人が行います。

下川さんが紹介した代表的な医療的ケアは次の通りです。医療的ケアが必要な子どもたちは「医療的ケア児」と呼ばれます。

・たんの吸引:病気や障害などの理由で自分でたんを出せない場合、鼻や口からチューブで引き出します。喉に取り付けた「気管カニューレ」から引き出す人もいます

・経管栄養:口から栄養を取る「経口摂取」ができない人や、経口摂取だけでは不十分な人が管から栄養を取り入れます。「胃ろう」「腸ろう」のほか、鼻のチューブから取ることもあります

・人工呼吸器:自発呼吸ができない人や、呼吸に助けが必要な人が使います

・在宅酸素療法:酸素を体の中に取り込めない人が酸素を吸入します。鼻にチューブを着けています

・人工肛門、導尿:排泄障害のある人に必要です。「人工肛門」はおなかに新しく作られた便の出口です。「導尿」はカテーテル(細い管)を使ってぼうこうから尿を出すことです

 

医療が大きく進歩し、小さく生まれた赤ちゃんや、病気や障害のある赤ちゃんなど、以前なら助からなかった命が日常的なケアで救えるようになりました。医療的ケア児はこの 10 年で増え、全国に 2 万人、高知県内では 90 人ほどいると言われています。

医療的ケアを主に担っているのは保護者です。学校では看護師のほか、必要な研修を受けた職員がたんの吸引など決められたケアを行っています。

人工呼吸器を着けていたら、地域の小学校に通えない?

医療的ケアは子どもたちが生きるために必要な行為ですが、「医療的ケアが必要だ」ということを理由に、希望する保育園や学校に通えない、通えたとしても保護者の付き添いが必要になるといったことが起きています。

下川さんは「重度の障害を理由に地域の小学校に通えないのはおかしい」と裁判を起こした親子の事例を紹介しました。

神奈川県川崎市に住む男の子の家族は 2018 年に裁判を起こしました。男の子は難病のため人工呼吸器を着けていて、たんの吸引なども必要です。保護者が付き添って地域の幼稚園に通い、小学校も同じように地域の小学校に通うことを望みましたが、県と市の教育委員会は「専門的な教育が適切」と判断し、就学先を特別支援学校に決めました。裁判では原告、つまり男の子の家族の請求は棄却されました。

県と市の教育委員会の主張は、裁判では「社会通念に照らし、著しく妥当性を欠くものとは認められない」と判断されました。「これが今の日本のインクルーシブ教育の現状だと感じた」と下川さんは振り返ります。「インクルーシブ教育」とは障害がある人とない人が共に学ぶ教育のことです。

男の子と家族は「地域の小学校に通う」という希望をかなえるため、東京都世田谷区に転居しました。「川崎市は『人工呼吸器=特別支援学校』という一律の対応でしたが、世田谷区に引っ越すと通えるようになった。地域によって対応がまちまちというのが現状です」

どこに住んでいても、適切な教育が受けられるように

こうした地域格差をなくし、どこに住んでいても、医療的ケア児が希望する保育所や学校に通い、適切な教育を受けられることを目指すことを柱にした法律が「医療的ケア児支援法」です。必要な医療的ケアや家族の状況、希望によって求められる支援はさまざまですが、例えば次のようなケースです。

・「医療的ケアが必要」という理由で希望する保育園、学校に通えない

・地域の学校に通えるようになったが、「ケアの専門職が不足している」という理由で保護者の付き添いを求められた

・「医療的ケアが必要」という理由で特別支援学校のスクールバスに乗れず、保護者が送迎している

・学校への付き添いによって保護者が働けなくなった

 

「医療的ケア児支援法」では国や都道府県、市町村などに対して、こうしたケースへの支援を「努力義務」よりも重い「責務」としたことが特徴です。

支援は一律ではなく、本人や家族の希望や状況に応じて取り組んでいくことが必要です。下川さんは入学後の付き添い期間を短くする取り組みや、バスや福祉タクシーを使った通学支援事業など県外の事例を紹介しました。

障害があっても、子どもでも、本人の意見に耳を傾け、その権利を守りましょう

下川さんは最後に、たんの吸引が必要という理由で希望する保育園や学校になかなか通えなかった子どもたちのその後を紹介しました。現在は成人し、研修会などで自らの経験を語っています。

その中で、たんの吸引についてこんな意見が出ました。

「私が吸引する時に、大人がパーテーションで隠そうとするんです。『隠さないといけない』という意識があると思うけど、自分にとっては普通のこと。隠さなくていいのに」

 

別の当事者はこう語りました。

「私は人から見られない環境で吸引したいなと思います」

 

たんの吸引という同じ医療的ケアでも、当事者が望む支援や配慮は異なります。下川さんは「Nothing About us without us(私たちのことを私たち抜きに決めないで)」という言葉を紹介し、こう語りました。

「障害があっても、子どもでも、本人抜きで本人のことを決めてはいけません。本人の意見に耳を傾け、その権利を守る。知的障害があっても、重症心身障害の方に対してもそれは例外ではなく、意思決定支援をベースにした取り組みが求められます」

「医療的ケア児はNICU(新生児集中治療室)で救われた命です。医療が救った命を私たちが社会で守り、支えていきましょう」

医療的ケア児の子育てについて、相談は「きぼうのわ」へ

勉強会では高知県の担当者が県の取り組みについて紹介しました。

医療的ケア児の相談・支援拠点に「きぼうのわ」があります。重症心身障害児者・医療的ケア児等支援センターとして、「土佐希望の家」(南国市小篭)に開設されています。社会福祉士の資格を持つ相談支援専門員が本人や家族、主治医、支援機関などから相談を受けています。

今回の勉強会を主催した「Smile Support Kochi(スマイル・サポートこうち)」は、病気や障害のある子どもを育てる家族のサークルです。コロナ禍の現在はオンラインで勉強会やおしゃべり会を開いています。活動予定はFBで紹介しています。

この記事の著者

門田朋三

門田朋三

小 2 と年中児の娘がいます。「仲良し」と「けんか」の繰り返しで毎日にぎやかです。あだなは「ともぞう」。1978年生まれ。

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