【つむサポ講座】高知こどもの図書館「おとなのためのくすくすひろば」|絵本選びのポイントは?読み聞かせで気を付けたいことは?花房果子さんが紹介しました
高知の新しい子育て支援「みんなでつむサポ」から、講座の様子を紹介します
高知県の子育て支援「みんなでつむサポ」。2022 年度も県内各地で「つむサポ講座」が開かれています。
今回ご紹介するのは、高知こどもの図書館が企画した「おとなのためのくすくすひろば」。フリーアナウンサーの花房果子さんがおすすめの絵本を手に取りながら、絵本選びのポイントを語りました。
読み聞かせで親がついやってしまう“NG行動”も紹介します!
目次
つむサポ講座「おとなのためのくすくすひろば」は高知こどもの図書館(高知市丸ノ内 1 丁目)が 2022 年 9 月 16 日に開催しました。
講師は花房果子さん。RKC高知放送のアナウンサーを経て、現在はフリーアナウンサーとしてラジオや司会の仕事をしています。NPO法人「絵本で子育て」センターの絵本講師の資格を持ち、「ママアナおはなし隊」の 1 人として、読み聞かせの活動にも力を入れています。
幼児期は「起承転結がはっきりしていて、スッキリ終わる絵本」がおすすめ
この日は大人向けの「くすくすひろば」ということで、花房さんが参加したお母さんたちに読み聞かせをしました。選んだ絵本は「こんとあき」。「はじめてのおつかい」で有名な林明子さんの作品です。
普段は読み聞かせをする側のお母さんたちが、じっと絵本を見詰めます。誰かに絵本を読んでもらう心地よさを実感していました。
「こんとあき」は、女の子の「あき」と、あきのおばあちゃんが作ったキツネのぬいぐるみ「こん」の冒険物語。途中に待ち受ける困難を 2 人で乗り越えていきます。
花房さんによると、幼児期には「起承転結がはっきりした物語」がおすすめ。物語のラストはハッピーエンドのようにスッキリ終わる方が、子どもは楽しめるそうです。
「ちょっと難しい終わり方や、もやもやする終わり方のお話は、小学生以上になってからがいいですよ」と話していました。
人気3大絵本は「いないいないばあ」「ぐりとぐら」「はらぺこあおむし」
国内の子ども向け絵本の草分けは「いないいないばあ」(文:松谷みよ子、絵:瀬川康男)。1967 年に刊行され、2020 年には日本の絵本で初めて累計 700 万部を突破しました。
日本の人気 3 大絵本は「いないいないばあ」に加えて、「ぐりとぐら」(作:なかがわりえこ、絵:おおむらゆりこ)、「はらぺこあおむし」(作:エリック・カール、訳:もりひさし)。いずれも 1960~1970 年代にかけて出版されました。日本ではこの頃から、良質な絵本の出版が始まりました。
絵本選びの際、花房さんがおすすめするのが「20 年以上読み継がれてきた絵本かどうか」という点。絵本の最後にある「奥付」を見て、初版から 20 年以上経過している絵本を選ぶといいそうです。
新しい絵本の場合は、刷数をチェック。刷数が多ければ、「これから読み継がれていく絵本」と判断できるそうです。
絵本は読んであげることで完成します
花房さんによると、絵本は「絵と言葉、めくることから生まれる総合芸術」。大人が手に取り、子どもに読んであげることで、芸術として完成します。
読み聞かせをする際は、表紙の絵からしっかり見せて、タイトルと作者名も読み上げます。「作者名を読むことで、子どもは作者の名前を覚え、好きな作者の絵本を選ぶようになります」
中表紙、裏表紙にも絵が描かれていて、裏表紙の絵まで見ることで、お話の世界は完結します。
「一冊の絵本ができるまでにかなりの時間がかけられていて、さまざまな工夫がされています。声色を演出しなくても、素直に読むだけで楽しさが伝わりますよ」
「良い絵本」の条件とは?
「良い絵本」の条件はさまざまありますが、花房さんが挙げたのは次の三つです。
【子どものためになる良い絵本とは】
- 想像(創造)性あふれる絵
- 豊かな言葉
- 子どもの心に同調する内容
例に挙げた絵本は「くだもの」(作:平山和子)。おいしそうな果物が登場するのはもちろん、一口大に切られた果物にフォークが添えられていたり、栗や梨など秋の果物が描かれた場面では洋服が長袖になっていたり。子どもが絵本の世界に入り込めるように、細かい工夫がなされています。
「『さあどうぞ』という言葉の響きも美しいですよね」と花房さん。日本語の優しさやリズムも大切にしたいところです。
「豊かな言葉」には「正しく美しい日本語で、それぞれの年代の子どもが理解できるように書かれているもの」も挙げられました。「6 歳の子にも 1 歳の子にも分かりやすいということがすごく大事です」
絵本は年齢を重ねていっても子どもにとって楽しいものですし、子どもの反応から成長を感じることもできます。花房さんは「どうすればいいのかな?」(文:わたなべしげお、絵:おおともやすお)のエピソードを紹介しました。
こぐまがシャツを足から履いたり、帽子を足から履いたり。子どもが自分で着替えるようになる時期に、育児を助けてくれる絵本として知られています。
保育園や幼稚園で読み聞かせをすると、子どもたちの反応が学年で違うそう。
- 年少児:「ふーん」という表情。自分も家で同じようにやっているのかも
- 年中~年長児:「おかしい!シャツは履かないよ!」と即座にツッコミを入れる。パンツを履いてお着替え完了という描写に、「パンツの上にズボンを履いてない!」とさらにツッコミを入れる
「同じ絵本でも子どもの反応は半年後、1 年後で異なります。わが子の成長を感じられるのは読み聞かせの楽しみの一つですね」と花房さん。
ちなみに、花房さんは読み聞かせの練習をする際、当時小学 5 年生だった息子に聞いてもらったそう。その時のツッコミがこちら。
「『パンツ』は普通のアクセントで読むんじゃなくて、語尾を上げないと『ズボン』の意味にならないんじゃない?」
なるほど、確かに。
「おやつの絵本」は控えめに…!
これまで紹介してきた絵本は、子どもの心を育てる「主食の絵本」。一方で、キャラクターやアニメの絵本は「おやつの絵本」と呼ばれるそうです。
おやつの絵本ももちろんあっていいのですが、「全部おやつになると、もったいない」と花房さん。特に子どもはおもちゃ感覚で絵本を選ぶので、任せておくとおやつの絵本ばかりになることも。
「主食の絵本は、大人が選んでお子さんに手渡してあげてくださいね」
コロナ禍の子育て…絵本でコミュニケーションを取っていきましょう
講座では、新型コロナウイルスの影響についても触れられました。
コロナの感染拡大が始まった以降に生まれた子どもたちは、自分が生まれた時から周囲の大人がマスクを着けています。「マスク生活の中で、子どもたちが顔全体の豊かな動きや音を見聞きする経験が少なくなっている」と花房さんは語ります。
言葉の獲得やコミュニケーションへの影響も指摘されていて、親としては心配になりますが、「大人が絵本という媒体を使うことによって、子どもとのコミュニケーションのための声掛けができますよ」。
保育園や幼稚園での読み聞かせは先生がマスクをしていることが多いので、家庭での読み聞かせがより大切になっているとのこと。「お母さんやお父さんが『楽しいな』と思う絵本を読むことで、子どもにもうれしい気持ちや楽しさが伝わります」
「面白かった?」「分かった?」…大人から質問するのはやめましょう
最後に、花房さんが紹介した読み聞かせNG行動は…?
【家庭で読み聞かせをするときのポイント】
- 質問をしない…質問をすると、子どもは「次も聞かれるな」と気になり、お話の世界に入れなくなります。いろいろ聞きたいけれど、ぐっとこらえて!
読み聞かせをする際、抱きがちなのが「賢く育ってほしい」「語彙(ごい)力、読解力を上げたい」という気持ち。「幼い頃から読み聞かせをしてきた子どもの方が語彙力が高くなった」といった研究結果もあり、親としては期待してしまうところですが、花房さんは「『勉強させるために絵本を読む』のではなく、『読んでいたら、いい効果もあるよ』ぐらいの気持ちでいてほしい」と呼び掛けました。
読み聞かせの後、「面白かった?」「この場面の意味、分かった?」などと聞きたくなりますが、そこはぐっと我慢。子どもが質問してきたら、対話するようにしましょう。
読み聞かせでよく寄せられる相談が「同じ本を『もう 1 回読んで』と何度もせがまれる」だそうです。
花房さんによると、これは「この絵本、とても楽しかった!」「絵本から感じ取りたい、学び取りたい」という子どもの気持ちの表れ。「つまり、お父さん、お母さんの読み聞かせが成功したということなんですよ」。エンドレスはしんどいので、「じゃあ、あともう 1 回だけね」と応えてあげるといいそうです。
子どもは絵本を通して、さまざまなことを体験し、喜怒哀楽の感情を感じ取ります。「こんなことをされたらうれしい、悲しいと心を揺さぶられることで、心は育ちます」と花房さん。
「大人に読み聞かせをしてもらった絵本は、子どもにとって大切な思い出になり、心の支えになり、生きる力にもなります。わが子に読み聞かせできる時期はあっという間に終わります。絵本の力を信じて、子育てしていきましょう」
花房さんおすすめの絵本はこちら
「おとなのためのくすくすひろば」で紹介された絵本はこちら。
- てぶくろ(絵:エウゲーニー・M・ラチョフ、訳:うちだりさこ、福音館書店)
- 三びきのやぎのがらがらどん(絵:マーシャ・ブラウン、訳:せたていじ、福音館書店)
- やまのバス(文:内田麟太郎、画:村田エミコ、佼成出版社)
- くだもの なんだ(作・絵:きうちかつ、福音館書店)
- ねびえ(文:毛利子来、絵:堀内誠一、福音館書店)
- はけたよはけたよ(文:神沢利子、絵:西巻茅子、偕成社)
- おおきなかぶ(再話:A・トルストイ、訳:内田莉莎子、画:佐藤忠良、福音館書店)
- バスがきました(作・絵:三浦太郎、童心社)
- こんとあき(作:林明子、福音館書店)
- おもち(作:彦坂有紀・もりといずみ、福音館書店)
- おーいはーい(作:和歌山静子、ポプラ社)
- がたん ごとん がたん ごとん(作:安西水丸、福音館書店)
- ぺんぎんたいそう(作:齋藤槙、福音館書店)
- どうすればいいのかな?(文:わたなべしげお、絵:おおともやすお、福音館書店)
- かみさまからのおくりもの(作:ひぐちみちこ、こぐま社)
- ごぶごぶ ごぼごぼ(作:駒形克己、福音館書店)
- ととけっこう よがあけた(案:こばやしえみこ、絵:ましませつこ、こぐま社)
- わらべうたであそびましょ!(絵:さいとうしのぶ、のら書店)
- ケーキやけました(作:彦坂有紀・もりといずみ、講談社)
- つるかめ つるかめ(文:中脇初枝、絵:あずみ虫、あすなろ書房)
- おおきくなるっていうことは(文:中川ひろたか、絵:村上康成、童心社)
- バナナのはなし(文:伊沢尚子、絵:及川賢治、福音館書店)
- ゆらしてごらん ひつじさん(作:ニコ・シュテルンバウム、訳:中村智子、サンマーク出版)
- ゆすってごらん りんごの木(作:ニコ・シュテルンバウム、訳:中村智子、サンマーク出版)