「ペアレント・プログラム」を受けてみた④|「ギリギリセーフ」を見つけよう
褒めるこつを学ぶ「ペアプロ講座」をココハレ編集部員がリポートします
子どもの困った行動を理解し、褒めて育てるこつを学ぶ「ペアレント・プログラム(ペアプロ)」。5 歳児と 2 歳児を育てるココハレ編集部・門田が高知市内で開かれている講座を受講し、全 6 回のシリーズでリポートします。
4 回目のテーマは「ギリギリセーフを見つける」。自分と子どもの「困ったところ」をあらためて振り返ってみると、実は困らないように対処できていることもあると気付きました。
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「行動」と「気持ち」を分けることに慣れてきました!
高知市の地域子育て支援センター「いるかひろば」で開かれているペアプロ講座。「自分編」と「子ども編」(私の場合は 5 歳長女)に分けて、現状把握に取り組んでいます。「いいところ」「努力しているところ」「困ったところ」がどんな行動かを書き出し、カテゴリーに分けると、自分と長女の傾向が見えてきました。
宿題として、カテゴリーに分けたものを清書したのがこちらです。まずは「自分編」。
前回も触れましたが、「困ったところ」のカテゴリーに「気持ちの調節」が多いのが私の特徴です。「怒りやイライラは素直に表現するくせに、楽しいことやうれしいことの表現するのが苦手」と分析しました。もっとバランスが取れたらいいなと思っています。
4回目の講座ではペアになったお母さんと見せ合いっこした後で、自分の傾向を発表しました。こんな意見が出ました。
- 「いいところ」に家事、育児があることが分かった。意識して頑張っていると思う。「気付いたらスマホを見ている」など生活習慣に困っている
- 育児に困ってこの講座を受けようと決めたけど、私は気持ちの調節で困っていることが分かった。気持ちをうまく調節できれば、子どもと楽しく過ごせる日が増えるかもしれないと思った
続いて、「子ども編」も見せ合いっこしました。
私とペアになったお母さんは、私と同じように 5 歳と 2 歳の子どもがいて、上の 5 歳児に困っています。一つ一つの項目で「分かるー!」と盛り上がりました。
ペアになったお母さんは、息子さんの「困ったところ」に「縄跳びをうまくいくまで飛び続ける」という行動を挙げていました。「もうおしまい」と声を掛けても、泣きながらでも飛び続けるそうです。親としては「もうやめて」と思ってしまう状況ですが、「行動だけ見たら、めちゃめちゃ努力家」という話に。子どもの行動に対して、親の見方や都合が入ってしまい、「困ったところ」になることもあるんだと、2 人で話し合いました。
発表ではこんな意見がありました。
- 困ったところは「食事」が多い。「まだ 3 歳。できなくても仕方ない」という気持ちを割とすぐに忘れて、「ちゃんとして」という気持ちが先行すると気付いた
- 3 歳で言葉が遅いのが心配だけど、書き出してみると、自分がしてほしいことを身ぶり、手ぶりでちゃんとアピールしてると分かった
「困ったところ」を「行動」と「気持ち」に分けて考えてみると、一歩引いて冷静になれます。講師の土居寿美子さんは「現状は変わってなくても、それをプラスと取るかマイナスと取るかでだいぶ変わってきます」。分けるということに、自分も含めてだいぶ慣れてきたように思います。
「困ったところ」から「いいところ」「努力しているところ」を引き出します
では、「困ったところ」をどうするか。その鍵となるのが「ギリギリセーフの行動」。「困ったところ」から、「いいところ」「努力しているところ」を引き出していくそうです。
考え方の流れとして、土居さんが挙げたのはこんな例でした。
困ったところ…イライラした時に周りに当たってしまう
↓
困っているが、こうはしていない…家具や壁をぼこぼこにする
↓
家具や壁をぼこぼこにしないための対処行動(ギリギリセーフ行動)…その場を離れて音楽を聴く。夕食を作らずに総菜で済ます
ギリギリセーフ行動とは、対処行動とのこと。土居さんは「毎回困っているわけではなく、何回かに 1 回は困らないように対処できているんですよ」と話していました。そういう観点から自分の現状把握表を見直し、ギリギリセーフ行動を赤で書いてみました。
注目は「努力しているところ」。ギリギリセーフ行動が隠れていました!
- すぐに怒る→怒りを相手にすぐにぶつけないようにためる。「私はイライラしている」と口で説明する
- 子どもを前に「めんどくさい」と言ってしまう→順番にこだわらず、できることから片付ける。子どもを待つ
「怒りっぽい」という自覚があり、実際によく怒っている私ですが、言われてみれば、毎回毎回怒っているわけではありません。気持ちをやり過ごすこともあれば、「今ちょっとしんどくてイライラしてるから、子どもの相手をお願い」と夫に託すこともあります。「自分は駄目だ」という思い込みはよくないんですね。
続いて「子ども編」。子どもの場合は発達段階にもよりますが、大人のように「困ったところを避けなければ」と意識して対処できることばかりではないそう。「対処一歩手前の惜しい行動」や「偶然うまくいった行動」も入れていくのがポイントだそうです。
長女の表はこうなりました。
- 妹が遊ぶおもちゃを先回りして取り上げる→気分がよければ譲る(たまにある例外的な行動)
- 気に入らないことがあると、すぐに泣く→嫌な気持ちになったことを言葉で説明する(「どんな気持ち?」と問い掛けると、説明できることがある)
- 自分が一番にならないと、納得せずに怒る→「一番」を姉妹でかわりばんこにする(大人が提案すればうまくいくこともある)
こうしてみると、大人が少し手を貸すことで、うまくいくことがあるんですね。専門的には「保護者による環境調整」と言うんだそうです。
子どもに手を貸すことに対して「自分でできる子にならないのではないか」と思っていましたが、嫌がるのを無理にさせるよりも、少し助けながらできるようになるのを待つ方が精神衛生上いいような気がしてきました。
怒らずに、待ってみました
4 回目の講座から数日後、長女が久しぶりに派手なかんしゃくを起こしました。状況からすると、「自転車に乗りたいが、今はいているスカートのまま乗ると、スカートが汚れてしまう。着替えないといけないが、着替えると遊ぶ時間が減ってしまうので嫌だ」ということのようですが、本人は説明できず、泣き声がご近所に響き渡っています。
以前の私なら、「恥ずかしい」「迷惑」という気持ちが先行して引きずって家に入れる場面ですが、「何で泣きゆうか教えて」と待ってみました。「待つ」という選択肢が普通に出てきたのも、「うるさいけれど、ちょっとだけ勘弁してください」と心の中でご近所さんにおわびしながら過ごせたのも、長女の「行動」と私の「気持ち」を分けて考えられるようになったからでしょうか。
とはいえ、ギリギリセーフ行動がいつも取れるわけではありませんし、対処の仕方が分からない「困ったところ」も存在します。どうすれば上手に気持ちを調節できるようになるのでしょうか。5 回目は 3 月上旬に開かれます。