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離婚・再婚「ステップファミリー」に大切なのは「初婚の家族ではない」と理解すること|大阪産業大学准教授・菊地真理さんが講演しました

離婚・再婚「ステップファミリー」に大切なのは「初婚の家族ではない」と理解すること|大阪産業大学准教授・菊地真理さんが講演しました

親の離婚・再婚、子どもへの影響は最小限に。ステップファミリーが目指す家族観について、菊地真理さんが語りました

「ステップファミリー」を知っていますか?親の離婚、再婚などで、親の新しいパートナーとの関係を持つ子どものいる家族のことです。子どもと新しいパートナーとの関係、子どもと元パートナーとの関係などで複雑になり、それぞれの立場で葛藤が生まれ、家族形成が難しくなりがちだと言われています。

大阪産業大学准教授の菊地真理さんはステップファミリー研究の第一人者で、当事者支援にも携わっています。

菊地さんによると、ステップファミリーを理解する上で大切なのは「初婚の家族ではない」と認識すること。子どもの目線に立ち、新しい家族観のもとで、継親(けいしん)や、離れて暮らす親(別居親=べっきょしん)との関係を育んでいく必要があります。

高知市内で開かれた講演会から詳しく紹介します。

 

菊地さんの講演は 2023 年 11 月 5 日、高知市塩田町の高知市保健福祉センターで開かれました。高知市子ども家庭支援センターが毎年開いている「高知市子育て応援講演会」です。

高知市子育て応援講演会は毎年開かれています
高知市子育て応援講演会は毎年開かれています

菊地さんは大阪産業大学経済学部の准教授で、専門は家族社会学と家族関係学。2001 年からステップファミリーの研究を始め、当事者へのインタビュー調査などに取り組んでいます。

ステップファミリーの当事者を支援するSAJ(ステップファミリー・アソシエーション・オブ・ジャパン)では運営委員を務めています。

明治学院大学社会学部教授・野沢慎司さんとの共著に、2021 年に出版された「ステップファミリー 子どもから見た離婚・再婚」(KADOKAWA)などがあります。

ステップファミリーが目指すのは「普通の家族」ではありません

講演の冒頭、菊地さんはSAJが発行するリーフレットを紹介しました。

タイトルは「ステップファミリーを育むための基本知識」。表紙に父親、母親、2 人の子どものイラストが描かれています。

「ステップファミリーを育むための基本知識」が紹介されました
「ステップファミリーを育むための基本知識」が紹介されました

4 人家族のイラストですが、小さな字で関係性が記載されています。「実親子」「継親子」「継きょうだい」。菊地さんは「このような情報がなければ、一見、初婚でつくられた核家族に見えますよね」と語り掛けました。

表紙にはさらにこう記されています。

めざすのは「ふつう」の家族じゃない。

 

「ステップファミリーは初婚の家族とは違うと認識してほしい。当事者も支援者も『普通の家族』という捉え方から脱する必要があります」

年間20万人前後の子どもたちが親の離婚を経験しています

日本では 1990 年代から離婚が増えてきました。統計から、現在は「年間 20 万人前後の未成年の子どもたちが親の離婚を経験している」ことが分かっています。

婚姻件数における再婚の割合も増え、4 件に 1 件を超える割合となりました。

ステップファミリーという言葉が登場したのは 2000 年頃です。「連れ子再婚家庭」とよく言われますが、「親目線での表現になっています」と菊地さん。

アメリカでは「成人カップルの少なくともどちらかが以前の関係で生まれた子どもがいる家族」と定義されています。

ステップファミリーの定義とは?
ステップファミリーの定義とは?

菊地さんたちは研究を重ね、子ども視点からこう言い換えました。

【ステップファミリーとは】親の新しいパートナーとの関係を持つ子どものいる家族

 

両親が離婚・離別し、その後、親のどちらか一方、あるいは双方に新しいパートナーができたとします。その新しいパートナーと子どもが「継親子関係」となります。ステップファミリーには継親子関係が 1 組以上含まれます。

再婚後は「親として認めてもらいたい」。法制度、プレッシャー、世間の目が継親を追い詰めます

親が離婚する。つまり、法的な婚姻関係が解消されると、日本では親権を共同で持つことができない「単独親権」となります。子どもと親の関係は「同居親(どうきょしん)」「別居親(べっきょしん)」と変化します。

菊地さんは「親権のない別居親と子どもの関係は途切れやすいし、途切れやすいような法制度になっている」と説明します。日本では離婚後に母親が親権を持ち、別居親は父親となる場合が多いそうです。

法制度は再婚後も影響します。

親権を持つ同居親が新しいパートナーと再婚すると、パートナーは子どもにとって「同居継親(どうきょけいしん)」となります。同居する継親とも姓を統一したり、法的に親として認められるように、継親と子どもが養子縁組をしたりするケースが多いそうです。

「子どもからすると、『自分にとって親は誰?』『家族には誰が含まれるの?』と葛藤が生まれます」

ステップファミリーでは、初婚よりも家族の構造が複雑になります
ステップファミリーでは、初婚よりも家族の構造が複雑になります

継親にとっても「親にならなければ」というプレッシャーは大きく、葛藤が生まれます。講演では継母の声が紹介されました。

  • 私が一緒に住むのであれば、お母さんとしての役割を果たしていきたい
  • 本当に日常のこまごましたことに口うるさくなっちゃったんです。それがいいお母さんだと思ってたんです
  • (行政の子育て相談窓口で)「ほかのお母さん、もっとやってます」と。「自分の人生を犠牲にしてでも自分の子をみてます」みたいなことを言われたんですよね。継母には愛情もないだろうという前提があるので…(菊地さんの講演資料より抜粋)

 

「継親はどうやって継子と接したらいいかというアドバイスは得られにくい」と菊地さんは語ります。

「『本当の親らしくしなきゃ』が重圧になり、強く叱ってしまう。子どもも『何でこんなに厳しいの?』と感じながら、関係がうまくいくようにと考えて受け入れようとする場合もあります」

継親との関係を保つため、離れて暮らす親やきょうだいへの思いを隠す子どももいるそうです。

継親は「親」になるべき?新しい家族観で、親子関係を途切れさせないように

ステップファミリーにおいて、継親には「親にならなくては」というプレッシャーが生まれます。

同居親は家族関係がうまくいくことを願い、継親を「親」として受け入れるように子どもに強制していく場合があります。例えば、継父に対して「新しいパパを『パパ』と呼びなさい」というのがそれに当たります。

さらに、子どもと同居親の関係も複雑になります。「別居親への思慕を隠す」「別居親を軽視する同居親に反発する、不信感を抱く」「同居親への反発から、あえて継親と疎遠になる」など、大人の板挟みになります。

「新しいパパを『パパ』と呼びなさい」に戸惑い、怒り、不信を抱く子もいます
「新しいパパを『パパ』と呼びなさい」に戸惑い、怒り、不信を抱く子もいます

菊地さんは次のように問題提起しました。

継親は子どもにとって「親」でしょうか。「親になるべき」なのでしょうか。

 

菊地さんたちは長年の研究から、新しい家族観として「継続モデル/連鎖・拡張するネットワーク型」を提案しています。子どもの視点に立った離婚・再婚観で、「夫婦関係と親子関係は別々のもの」という捉え方です。

上が伝統的な家族観となる「代替モデル/スクラップ&ビルド型」で、下が「継続モデル/連鎖・拡張するネットワーク型」の図。菊地さんたちは新しい家族観を提唱しています(SAJ「ステップファミリーを育むための基本知識」p.4より)
上が伝統的な家族観となる「代替モデル/スクラップ&ビルド型」で、下が「継続モデル/連鎖・拡張するネットワーク型」の図。菊地さんたちは新しい家族観を提唱しています(SAJ「ステップファミリーを育むための基本知識」p.4より)

従来の家族観では、離婚で夫婦関係がなくなると、別居親と子どもとの親子関係も途切れてしまったり、疎遠になったりしていました。

新しい家族観は夫婦関係とは別に、父母それぞれと子どもとの親子関係があるもので、夫婦関係がなくなったとしても、親子関係は続いています。

講演では、新しい家族観のもとで関係を築いているステップファミリー当事者へのインタビューも紹介されました。

【小学生の実子と継子を育てる継母】

(継子には)最初からお母さんがいますからね。そのお母さんと会うことを禁じてないし、関係を断ち切らそうということを最初からしていないんで。

(継子にとって私は)「保護者」ですよね。お母さんではないけれども、普段の生活を見てもらえる、そこには安心感を持っているとは思うんですね。(菊地さんの講演資料より抜粋)

 

この女性は「継母が『母親』にならない」というスタンスを取っています。日々の生活の面倒を見るけれど、離れて暮らす母親との交流は阻害せずにサポートすることで、継子との信頼関係を築いています。これが継親独自の役割だと、菊地さんは語りました。

「再婚カップルは、実子には養育・教育の主導権を持ち、継親としては互いの子育てをサポートする役割を担います。『父親だから』『母親だから』という性別役割にもとらわれない、新しい形です」

ステップファミリー当事者へのインタビューから、新しい家族観が見えてきました
ステップファミリー当事者へのインタビューから、新しい家族観が見えてきました

継子である子どもたちのインタビューでは、継父のことを「おじさん」と呼んでいたり、悩みを打ち明けた際に「本当のお父さんじゃないからそんな強いことは言えないけれど、好きにしたらいい」と声を掛けてもらったり。

「父親・母親代わりとして継子の子育てやしつけ、教育に全面的に関わろうとするのではなく、子どもの育ちを一歩引いて見守るもう一人の保護者(大人)」という継親の役割やスタンスが紹介されました。

同居親の役割は「コーディネーター」です

ステップファミリーでは、同居親の役割は「『親子』としてではない継親子関係の形成を調整し、疎遠になりやすい別居親子関係を維持するコーディネーター」だと、菊地さんは説明しました。

離婚・再婚後に子どもの名字や継親子の養子縁組をどうするかなどを慎重に考える、別居親との面会交流について継親に理解を求める、継親を子どもの「親」ではない存在へと誘導するなどの役割があります。

講演では、離れて暮らす父親と子どもとの交流を続けながら、子どもと新しいパートナーとの継父子関係をつくっていった母親の言葉が紹介されました。

お父さんとの関係が子どもの中にあるから、(継父は)そんなにお父さんって感じじゃなくて、一緒に保護者というか扶養者というか…いいお兄ちゃんでいてほしい。

前のだんなさん(父親)も、やっぱり子どもにとっても欠かせない人だと思うので。(菊地さんの講演資料より抜粋)

 

「初婚家族」というこれまでの形ではなく、新しい家族観のもとで関係性を育んでいくステップファミリー。最も大切にしたいのは「子どもの立場から離婚、再婚を考えること」だと、菊地さんは最後に呼び掛けました。

同居親の役割は「コーディネーター」です
同居親の役割は「コーディネーター」です

「夫婦の離婚は親子の別れではありませんが、子どもにとって父母の離婚と再婚は『喪失』の繰り返しになりやすい」

「子どもに説明し、お父さん、お母さんにどうしてほしいのか、自分の思いを言える場を設けてください。子どもの気持ちを反映し、離婚・再婚前後の子どもの環境変化ができるだけ最小限となるように考えてもらいたいと思います」

 

講演で紹介されたリーフレット「ステップファミリーを育むための基本知識」はSAJのウェブサイトで公開されています。こちらから

記事で紹介した「継続モデル/連鎖・拡張するネットワーク型」の図はこちらから掲載しました。
SAJ・野沢慎司(編)/緒倉珠巳・野沢慎司・菊地真理(著)『ステップファミリーのきほんをまなぶ―親の離婚・再婚と子どもたち』金剛出版、2018年、p.163-164

SAJのウェブサイトではステップファミリーに関する書籍や事例などが紹介されています。こちらから

この記事の著者

門田朋三

門田朋三

小 2 と年中児の娘がいます。「仲良し」と「けんか」の繰り返しで毎日にぎやかです。あだなは「ともぞう」。1978年生まれ。

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