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新型コロナウイルスに感染する妊婦さんが増加しています|高知県内の対応を高知医療センター・林和俊先生に聞きました

新型コロナウイルスに感染する妊婦さんが増加しています|高知県内の対応を高知医療センター・林和俊先生に聞きました

新型コロナウイルスが高知県内で急拡大する中、妊婦さんの感染も増えています。

高知県内では現在、「妊婦は症状にかかわらず、全員入院する」という方針が維持されていますが、「自宅療養も考えなければいけないほどの拡大状況」となっています。

妊娠中の感染予防やワクチン接種について、産婦人科医で高知医療センター副院長の林和俊さんに聞きました。

 

林さんは産婦人科医として、高知県の周産期医療に長く携わっています。これまで、高知医療センターの総合周産期母子医療センター長として、早産の予防や、リスクの高いお産や病院外など予期せぬお産への対応などに取り組んできました。

現在は医療センターの副院長と地域医療センター長に加え、高知県産婦人科医会の副会長を務めています。

産婦人科医の林和俊さん
産婦人科医の林和俊さん

現在は「感染した妊婦は症状にかかわらず、入院」となっています

高知県の周産期医療でのコロナ対応は 2020 年 5 月に決まりました。県内で妊婦さんがコロナに感染した場合、入院先は以下になります。

  • 高知医療センター(高知市)
  • 高知県立幡多けんみん病院(宿毛市)

妊婦さんはどちらかの感染症病棟に入院します。感染者が増えた時のために、軽症や濃厚接触者に対応する病院が他に複数あります。

デルタ株が主流になり、感染する妊婦が増えています

高知県内で感染した妊婦は、2020 年 4 月から 2021 年 6 月までの 1 年 2 カ月で 5 人。7 月以降は 8 月27 日までの約 2 カ月で 8 人となっています。林さんは「デルタ株が主流になり、明らかに増えている」と語ります。

高知県は感染拡大に伴い、8 月 19 日以降は、無症状の人や軽症の人の一部を入院やホテル療養から自宅療養へと切り替えました。妊婦さんは「全員入院」が維持されていますが、「重症化リスクのある人以外は入院できなくなるほどの感染拡大状況にある」と林さんは語ります。

妊婦さんの自宅療養は、既に全国で始まっています。千葉県では妊娠 29 週の妊婦さんが自宅で早産し、赤ちゃんが亡くなるということが起きました。1 人で自宅療養していたことや、症状が悪化しても受け入れ先が見つからなかったことが問題になっています。

「妊娠後期」はコロナが重症化するリスクが高まります

妊娠 28 週( 8 カ月)以降は「妊娠後期」です。おなかが大きくなり、出産まであともう少しというこの時期は、「コロナ重症化のリスク因子」の一つに挙げられています。つまり「妊娠後期にコロナに感染すると、重症化するリスクが高い」ということです。

「県外では人工呼吸管理やICU管理の必要な妊婦も報告されている」とのことで、週数に加えて、妊娠糖尿病や肥満、高血圧があると、さらにリスクが高まるそうです。

コロナでは、早産が増えることも問題となっています。コロナと早産との関係については、次の通りです。

  • 発熱やせきがひどくなる→出血や破水、陣痛を引き起こす可能性がある→結果として早産になる
  • 症状が悪化する→週数にかかわらず、帝王切開で出産する(人工的早産)

病院では感染を防ぐため、感染した妊婦さんが出産する場合は妊娠 37~38 週になると、陣痛を待たずに帝王切開を選択します。濃厚接触者にも当てはまります。

妊婦さんとその家族はワクチン接種を

特に妊娠後期にコロナに感染すると、母子ともにリスクが高まります。「思い描いていたお産ができなかった」ということも起こり得ます。

感染を防ぐために有効なのがワクチン接種です。「妊娠中にワクチンを打っていいの?」と心配する声がありますが、コロナのワクチンは「妊娠中いつでも接種できる」とのことです。

【妊娠中、出産後のワクチン接種について】

・いつでも接種できます

・流産や早産など胎児への影響は報告されていません(発生率はワクチンを接種していない人と同程度です)

・「不妊になる」という科学的根拠はありません

・発熱や頭痛などの副反応が出た場合は、アセトアミノフェン(カロナールなど)が服用できます

・授乳中も接種できます(ミルクに切り替える必要はありません)

 

ワクチン接種に加えて、毎日の感染予防が大切になります。手洗いに加えて、押さえておきたいポイントです。

【感染予防のポイント】

・ウレタンマスクではなく、不織布マスクを適切に着ける

・換気の悪い場所を避ける

・不特定多数の人が集まる場所で、マスクを外さない

・同居する家族以外とマスクを外して会話しない。飲食もしない

 

これまでに入院した妊婦さんの多くが、夫など同居する家族から感染していました。デルタ株が主流になり、「これからは子どもからの感染も起こり得る」と林さんは話します。

「妊婦さんをしっかり守るため、感染拡大に応じて周産期医療を見直していますが、今は危機的な状況です。ワクチンを打っていない、打つことを迷っている妊婦さんやご家族には、おそれずに接種することを強くお願いしたいです」

濃厚接触者になった場合や、発熱や咳などコロナが疑われる症状がある場合は、産婦人科を受診する前に必ず電話で相談してください。

この記事の著者

門田朋三

門田朋三

小 3 と年長児の娘がいます。「仲良し」と「けんか」の繰り返しで毎日にぎやかです。あだなは「ともぞう」。1978年生まれ。

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