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桂浜水族館のカワウソ舎、実はぼろぼろ…老朽化でリニューアルを計画しています

桂浜水族館のカワウソ舎、実はぼろぼろ…老朽化でリニューアルを計画しています

桂浜水族館のカワウソ舎、見に行ったことはありますか?

コツメカワウソの王子と桜(おう)の一家が暮らす展示スペースなのですが、実はぼろぼろ。木や壁は剥がれ、柱はシロアリに食われ、水槽は水漏れ…と、限界を迎えています。

桂浜水族館ではカワウソたちに今よりもいい暮らしを提供するため、カワウソ舎のリニューアルを計画中。日本のカワウソブームの陰で、生息地では絶滅が危ぶまれている実態も伝えていこうと、クラウドファンディングに挑戦しています。

桂浜水族館のカワウソ舎、老朽化でもう限界!「リアルな営み」紹介へリニューアルを EINEE高知

(高知新聞Plus 2023 年 11 月 7 日掲載)

高知市浦戸の人気スポット、桂浜水族館で今、先送りできない問題が起きています。それは、カワウソ舎崩壊の危機。コツメカワウソの展示スペースが老朽化し、限界を迎えました。さらに、コツメカワウソは近年、その愛らしさからペットにする人が増え、生息地では乱獲や密輸の危機にさらされています。桂浜水族館では二つの危機を乗り越えようと、クラウドファンディングを開始。「リアルな営みを紹介するカワウソ舎」へのリニューアルを目指しています。

桂浜水族館のカワウソ舎。老朽化が進み、崩壊の危機を迎えています(写真はいずれも高知市浦戸の桂浜水族館)
桂浜水族館のカワウソ舎。老朽化が進み、崩壊の危機を迎えています(写真はいずれも高知市浦戸の桂浜水族館)

柱はシロアリ、水槽は水漏れ、ドアも落ち… 

桂浜水族館では2005年から、コツメカワウソの飼育を本格的に始めました。現在は雄の王子と雌の桜(おう)の一家がカワウソ舎で暮らし、今年8月には赤ちゃんが生まれました。

コツメカワウソの王子と桜の一家。この夏に生まれた赤ちゃんたちがすくすく成長中
コツメカワウソの王子と桜の一家。この夏に生まれた赤ちゃんたちがすくすく成長中

カワウソ舎は20年以上前に立てられ、横幅は6メートルほど、奥行きは4メートル弱。離れて見るとあまり分かりませんが、「もう、ぼろぼろ」と飼育員の丸野貴也さんは嘆きます。

海のすぐそばにある桂浜水族館は潮風の影響をもろに受けます。経年劣化に加えて、カワウソの習性もカワウソ舎崩壊の一因に。

カワウソ舎はよく見ると、ぼろぼろ。塗装が自然に剥がれた箇所を、カワウソたちがさらに剥がしていきます
カワウソ舎はよく見ると、ぼろぼろ。塗装が自然に剥がれた箇所を、カワウソたちがさらに剥がしていきます

「カワウソは手先が器用。岩場に手を突っ込んで魚を捕る生き物なので、木や壁が剥がれたらさらに剥がします。子どもたちはみんなやんちゃ。成長につれて力も強くなり、破壊もします」

これまでにも資金を募って修繕してきましたが、現在は柱がシロアリ被害で朽ち、水槽はコーティングが劣化して水漏れが発生。「この間、ドアが外れて落ちました。『だましだまし』とよく言いますが、もうだませてない」と丸野さん。建て替えに向けて動き始めました。

「かわいいから飼いたい」でいいの?安易なペット化に警鐘 

カワウソ舎のリニューアルに向け、桂浜水族館が考えたのが、近年のカワウソブームへの警鐘です。

コツメカワウソは最も小型のカワウソで、主に東南アジアに生息しています。日本で「かわいい」とペットにする人が増えた結果、現地では乱獲や密輸が横行。環境破壊も進み、絶滅が危ぶまれています。

カワウソたちを見守る飼育員の丸野貴也さん。「カワウソたちが遊ぶ姿だけでなく、抱える問題も伝えられる展示にしていきたい」(提供写真)
カワウソたちを見守る飼育員の丸野貴也さん。「カワウソたちが遊ぶ姿だけでなく、抱える問題も伝えられる展示にしていきたい」(提供写真)

コツメカワウソはそもそも、ペットには向かない生き物。今回のクラウドファンディングを担当する長谷川皓さんは「ふんを大量にするし、獣の臭いもあります。飼育員が戻ると、『カワウソ舎から帰ってきたな』と分かるくらい」。広報の森香央理さんは「SNSで拡散される写真や動画を見ていると、カワウソのリアルが知られていないと感じますね」。

「『飼いたい』という人に悪気はないけれど、結果としてカワウソの命が奪われている」「ニホンカワウソが最後に確認された高知の水族館として、現状を伝える役目があるのでは」

そんな議論を経て、SNSやユーチューブで「カワウソのリアル」を発信。ペットブームに警鐘を慣らしています。

臭い、泣き声 カワウソのリアルな営みを伝えたい

桂浜水族館は和建設、仁淀川町と連携し、町内で森林保全活動を進めています。カワウソ舎の建て替えでは間伐材を活用していきます。

カワウソ舎の内部。シロアリに食われ、「土台はぼろぼろ」
カワウソ舎の内部。シロアリに食われ、「土台はぼろぼろ」

目標は、カワウソたちに今よりもいい暮らしを提供すること。「飼育数を考えると、もっと広いスペースが欲しいですが、難しい」と丸野さん。「カワウソたちが遊べるギミック(仕掛け)を入れて、狭い空間でも伸び伸び暮らせるようにしたい」と、石畳をよじ登れるスペースを造る、流れのある川を設置するなどの構想を練っています。

来館者向けには、絶滅が危ぶまれている実態も伝える展示を模索しています。

「いとおしいから会いに行こう」と思ってもらえるカワウソ舎を目指します(提供写真)
「いとおしいから会いに行こう」と思ってもらえるカワウソ舎を目指します(提供写真)

「今の新しい水族館はほとんどがガラス張りで、カワウソは完全室内展示が多くなりました。うちみたいなむき出し展示は珍しい」と森さん。桂浜水族館ならではの古さを生かし、「臭いや鳴き声、餌を食べる際の音なども含めて、リアルな営みを知ってもらう場にしたい」と考えています。

「カワウソに対する『かわいいから飼いたい』という思いを、『いとおしいから会いに行こう』に変えたい」と丸野さんたちは口をそろえます。カワウソの飼育環境をよくすることで、安易なペット化にも一石を投じていく。桂浜水族館の新たな挑戦です。(門田朋三)

 

クラウドファンディングは12月26日まで行われ、目標は800万円。寄せられた資金はカワウソ舎の解体や設計、建設費に役立てられます。詳しくはこちら

「EINEE高知(えいねぇ高知)」は高知県内の地域振興の取り組みを支援するクラウドファンディングです。四国銀行、READYFOR、高知新聞社の3社が運営しています。

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この記事の著者

ココハレ編集部

ココハレ編集部

部員は高知新聞の社員 6 人。合言葉は「仕事は楽しく、おもしろく」。親子の笑顔に出合うことを楽しみに、高知県内を取材しています。

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