「しつけ」を焦っていませんか?|子育ての悩みに寄り添う土居寿美子さんコラム「こころのとびら」⑭
高知市の子育て支援センター「いるかひろば」の土居寿美子さんが子どもへの関わり方を紹介します
子育てで困った時、悩んだ時、相談に乗ってくれるのが地域子育て支援センターです。
コラム「こころのとびら」は、高知市の地域子育て支援センター「いるかひろば」を運営する特定非営利活動法人の理事長・土居寿美子さんが執筆。たくさんの親子に寄り添ってきた経験から、わが子への関わり方を紹介します。
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「ダメ!」「やめて!」を子どもは「遊び」と捉えることがあります
前回のコラムでは「子どものわがままをどうしたらいいか」「どういうふうにしつけをすればいいか」という相談が多いこと、そしてそれを考えていく時に「わが子がどういう気質なのか」と考えるのが大事だという話をしました。
その前に、実は親ができる工夫がたくさんあるんです。
1 ~ 2 歳の子どもは好奇心旺盛。いろんなことをして遊びます。食べてはいけないものも口に入れたり、高い所によじ登ろうとしたり、触ってほしくないものを触ったり…。特に家の中は、大人からすると、してほしくない行動が多いですね。
そんな時、「ダメ」「やめて」の声をかけたら、余計にエスカレートしてしまう…。そんな悲痛な声も聞きます。
でも、子ども側からしたら、そのやり取りを「遊び」と捉えていることも多いように感じます。子どもが小さい時には特に、「何がいけなくて『ダメ』と言われているのか」かが分からない場合が多いように思うのです。
では、そんな時にはどうすればいいのか…。子どもが小さい時ほど、大人が配慮することで解決できることがたくさんあります。
・触られて困るものは、子どもの手の届かないところに置く
・上がってはいけない所に上がろうとしたら、抱っこして安全な所に連れて行く
・開けてほしくない所を開ける時には、開けられないように工夫する…などなど
こんなように、大人ができる工夫、配慮はたくさんあるのです。
子どもの成長、情緒の発達とともに「イヤだ!」という時期もやってきます。成長はうれしい反面、気苦労も増えてきますね。こういう場合も実は「あの手この手」があるんです。
【いるかひろばでの「あの手この手」】
★帰る時間なのにまだ遊びたくて、部屋の中でヤケを言っているAちゃん
母:「もう帰らんといかんがよ…」
Aちゃん:「イヤだ!」
職員:「Aちゃん、今日はどんな靴で来たのかな?ピンクかな白かな」…気をそらす
「どんな靴で来たのかな?」という言葉で気持ちが切り替わり、靴箱に走って行って靴を見せてくれたAちゃん。その後、靴を履いて機嫌よく帰りました。
★パズルで遊んでいる時、思い通りにはまらなくてイライラして、おもちゃを投げ始めたB君
母:「おもちゃを投げたらいかんろ」
職員:「パズルがうまくいかんかったもんね」…B君の気持ちを代弁
この後は、子どもの様子を見ながらあれこれ試します。
職員:「一緒にやってみようか」…一緒に遊ぶ
職員:(手の中に一つおもちゃを隠して)「どっちにあるかな」…全く違う遊びで気をそらす
その時、その子にヒットする方法があると思います。
子どもが小さい時は特に、「しつけ優先」の関わりではなく、紹介したような「どうして子どもがそんなことをするのかな」という視点で関わっていくことが大事です。
大人になって自尊感情が低い方の中には、「子どもの頃からダメなことやしてはいけないことをした時に、大人からただ怒られるだけだった」と振り返る人がいます。「怒るのがダメ」なわけではありません。怒ったところで、「何がいけないのか」が子どもに伝わってなければ、ただ「怒られて怖い」という感情だけが残ってしまうのです。
子どもの気を反らすということは、してほしくない行動を大人が怒らずにやめてもらうための方法です。つまり、「代わりの行動を提示する」ということで、これは決して子どもを甘やかすことではありません。
小さい頃から子どもの気質をつかみ、気持ちを否定せずに受け止めることを続けていくと、何がダメなのかを一緒に考えるなど、年齢に合わせた関わりができるようになります。「しつけ」の前に、親子の関わりの土台をつくることが大切なのです。
今回のコラムでは 1 ~ 2 歳のお子さんを例に紹介しましたが、この時期を過ぎたお子さんにとっても大切な関わり方です。気付いた時がスタートで、決して手遅れではありません。いるかひろばで一緒に考えていきませんか。