「あれができない」「これもできない」…つらかった保育園からの報告|高知市子育て支援センターいるかひろば・土居寿美子さんコラム「こころのとびら」㉙
子育ての悩みに寄り添ってきた「いるかひろば」の土居寿美子さんが子どもへの関わり方を紹介します
子育てで困った時、悩んだ時、相談に乗ってくれるのが地域子育て支援センターです。
コラム「こころのとびら」は、高知市の地域子育て支援センター「いるかひろば」を運営する特定非営利活動法人の理事長・土居寿美子さんが執筆。たくさんの親子に寄り添ってきた経験から、わが子への関わり方を紹介します。
引っ越しが続いた土居さん一家。長男と次男は新しい保育園に通い始めました。自分の思いを言葉で表現したり、人前で何かをするのが苦手だった長男。「あれもできない」「これもできない」…保育園から報告を受けるたび、土居さんは落ち込みました。
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毎朝の登園。「お兄ちゃんはあいさつせんがかね」とよく声を掛けられました
夫の転勤は続きました。次の赴任場所には 4 年おりました。子どもたちは新しい保育園での生活がスタートしました。
保育園までは子どもの足で 25~30 分の道のり。雨が降らない限り、毎日歩いて送り迎えをしました。
入園するには、私が仕事をする必要がありました。登園中に家でできる内職をしました。時間の融通ができるので、歩いて送り迎えができました。
子どもたちと歩いていると、いろんな方とすれ違います。朝は「おはようございます」、帰りは「こんにちは」とあいさつを交わしました。
次男はあいさつが嫌ではなく、人と話す際に臆することもなく、大人とのやりとりを自然にしていました。
でも、長男はあいさつはもちろん、知っている人でも自分から話すのが苦手でした。
「まあ、元気なあいさつができるね」「お兄ちゃんはせんがかね」
次男があいさつをした人からは、そんな言葉をよく掛けられました。その頃の私は、長男がどんな気持ちでいたかに思いをはせることはありませんでした。「その場から早く離れたい」と思っていました。
しばらくして、家で犬を飼うことになりました。「ぺそ」と名付けました。ぺそがわが家の一員になってからは、保育園までの散歩にぺそも加わりました。
すると、すれ違う人に変化が生まれました。
今までは子どもに着目し、「あいさつができる、できない」という話題になっていたのが、ぺそに関心を寄せるようになりました。長男があいさつを交わさなくても、「まあ、かわいい犬やね」と犬の方に気持ちを寄せてくれたので、ほっとしたのを覚えています。
「お母ちゃん、家で一緒に練習してもらっていいかな」
保育園では、次男はやんちゃで、お友達と戯れ、けんかになることもしばしば。元気いっぱいに過ごしていました。
長男は楽しかったこともたくさんあったと思いますが、私の記憶には「あれができない」「これができない」という保育園からの報告しか残っていません。
「お母さん、今日もトイレ失敗しました」「お昼寝でおねしょをしました」
トイレの自立が遅く、お迎えに行くたびにこう言われました。言われてもどうすることもできず、お迎えに行くのがしんどい時期もありました。
みんなの前で何かをするというのもすごく苦手でした。特に発表会の練習では、先生をてこずらせていたようです。
「お母ちゃん、家でせりふを一緒に練習してもらっていいかな」
ある日、そう言われました。私は返事をしたものの、無理強いはしませんでした。
本番ではしっかり声を出していました。「この子はどんな気持ちでせりふを言ったのかな…」。その姿を見ながら、涙が出ました。
思いを言葉で表現するのが下手な長男。保育園から帰ると、ぺその所に行き、頭をなでていました。ぺそは長男をぺろぺろとなめていました。
この頃から、長男とぺその無言のやりとりが始まりました。
土居さんに相談したい場合は、「いるかひろば」に問い合わせをしてください。
- 住所:高知県高知市六泉寺町22 港孕保育園内
- 電話:088-834-1484
- 利用時間:月~金曜日 9:30~15:30、土曜日(月 2~3 回)9:30 ~ 12:00
- 駐車場:無料。4 台(身体障害者用が 1 台)。置けない場合は提携先を案内します
【オンラインいるかひろばのスケジュール】
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- オンラインいるかひろば:月~金曜日。午前は 11:15~11:45 、午後は 15:00~15:30 。通所いるかひろばとつないで「集まりの時間」を行います
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