「児童家庭支援センター」を知っていますか?|「わが子を叱ってばかり」「毎日イライラする」…子育ての悩みを受け止め、支えてくれる施設です
「子育てのイライラはため込まず、吐き出して」。児童家庭支援センター「高知みその」「高知ふれんど」で聞きました
「わが子を叱ってばかり」「毎日イライラする」「何度も注意するのにどうして伝わらないんだろう」
そんな思いを抱えながら、子育てをしていませんか?
子育てに困った時や悩んだ時に相談に乗ってくれる施設に「児童家庭支援センター」があります。高知県内には高知市、高岡郡佐川町、安芸郡田野町、四万十市に計 5 カ所あり、電話や来所による相談に応じています。
イライラをため込まない子育てのこつについて、高知市のセンター「高知みその」「高知ふれんど」で話を聞きました。
※この記事は 2020 年に取材したものです。写真を変更し、 2024 年 11 月 8 日に再公開しました。
目次
児童家庭支援センターは乳幼児期、学童期の子育て相談に対応しています
児童家庭支援センターは、国と高知県の認可を受けた子育て支援の専門機関で、児童相談所や市町村などの関係機関と連携しながら、相談支援事業を行っています。高知県内のセンターは次の 5 カ所です。
- 高知みその(高知市新本町 1 丁目 7-30 )
- 高知ふれんど(高知市新本町 1 丁目 7-30 )
- ひだまり(高岡郡佐川町甲 1110-1 )
- ぷらうらんど(安芸郡田野町字上ノ岡 4462-58 )
- わかくさ(四万十市安並 850-2 しろきハウス 202 )
このうち、「高知みその」「高知ふれんど」は、社会福祉法人「みその児童福祉会」(岡山市)が運営しています。
みその児童福祉会は乳児院「高知聖園(みその)ベビーホーム」、児童養護施設「高知聖園天使園」、保育園「聖園マリア園」も運営していて、建物は江ノ口小学校の南側にあります。2024 年10月に新複合棟「misono」が完成しました。
「高知みその」では主に乳幼児期、「高知ふれんど」では主に学童期の子どもを育てる保護者から話を聞き、支援に取り組んでいます。
かんしゃく、不登校、発達障害…寄せられる悩みはさまざまです
「高知ふれんど」のセンター長・谷本恭子さん、「高知みその」の心理相談員・武市萌さんによると、高知市を中心に県内各地から相談が寄せられています。
「高知ふれんど」で多いのは不登校や発達障害に関する相談です。発達障害では、「発達が気になる」と言われ、半年、1 年と病院の受診待ちをしている保護者から「受診までの間、どうしたらいいか分からない」「どう関わったらいいですか?」という質問を受けるそうです。
「ふれんどでは、子どもの発達の特性を把握する『発達検査』ができます。来所してもらい、検査を行い、その子の特性と関わり方を伝えています」
「高知みその」では、産前産後のお母さんへの対応や、「子どものかんしゃくが収まらない」といった日常の子育ての困りごとに応じています。家庭訪問にも取り組んでいて、武市さんは「子育てで心配事がある場合は訪問して、一緒に沐浴をするなどしています。子どもが大きくなっても関わりを続けています」。
毎日相談を受ける中で、谷本さんと武市さんがお母さんたちに感じるのが「いいお母さんでいなきゃ」というプレッシャーの強さだそう。「ちゃんと子育てしなきゃ」と一人で頑張り過ぎて爆発して、子どもに手を上げてしまう…というケースは少なくないそうです。
「しつけで子どもをたたくのはだめ」。ではどうすれば…?
2020 年 4 月、改正児童虐待防止法が施行されました。親が子どもをたたく、長時間正座をさせる、ご飯を与えないといった体罰は、「しつけ」という理由でも禁止されています。しつけを理由に暴力が正当化され、虐待につながった事件をきっかけに法律に盛り込まれました。体罰には入りませんが、大きな声で怒鳴ったり、暴言を吐いたりすることも、「子どもの権利を侵害し、心を傷つける行為」とされています。
子どもがいけないことをした時に手をぺちんとたたく、お尻をぺんぺんするということも「体罰」となります。では、どんなふうに子どもと関わっていけばいいのでしょうか。谷本さんたちは、相談を寄せるお父さん、お母さんに「子どもができていることを褒め、できていないことはスルーしてみてください」と呼び掛けています。
そもそも、なぜ「子どもを何度注意しても、叱っても、言うことを聞いてくれない」ということが起こるのでしょうか。それは「親が自分に真剣に向き合ってくれる」ということを子どもが求めているからだと言います。
「親は当たり前にできることをスルーし、できていないことを怒ってしまいがちです。子どもはお父さん、お母さんに『自分を見てほしい』と思っているので、できていない時に真剣に怒られた体験を『いけないことをしたら、自分のことを見てくれた』と受け止め、『自分に真剣に向き合ってもらうには、いけないことをすればいいんだ』と考えるようになるんです」
子どもができていることを褒め、できていないことはスルーしましょう
こういった悪循環をなくすには、親が上手に頭を切り替えること、つまり「できていることを褒め、できていないことはスルーする」と反対のことをすればいいそうです。
「例えば、靴箱に靴を入れたら、『靴箱に靴を入れたね。すごいね』と声を掛けてみてください。子どもの表情が一瞬ぱっと輝きます。『私のこと見てくれてるんだ』という表情です」と谷本さん。
「当たり前のことを褒め、できていないことをスルーすることは決して『甘やかし』ではありません。たたいてしつけをするということも含め、これまでの日本の考え方、価値観をみんなで変えていきたいんです」
とはいえ、「できていないことをスルーする」のは言葉で言うほどは簡単にはいかないもの。困った時には一人で抱え込まず、誰かに話し、助けを求めることが大事です。
支援を求めるということに、「恥ずかしいことだ」「親として駄目な証拠だ」などと罪悪感を抱く人もいるそうですが、「そんなことは全く必要ない」そう。武市さんは「児童家庭支援センターではそれぞれ、子どもや家庭のことに関する相談を受け付けていますので、気軽に利用してください。イライラはどんどん吐き出して、気持ちを楽にしてください」と話しています。
「その人らしい子育て」をお手伝いしていきます
「高知みその」のウェブサイトでは「こんなことに困っていませんか?」と呼び掛けられています。
- 1 人で子育てをして心細い
- 誰かに話を聞いてほしい
- 子どもの成長や発育で心配なことがある
- 子育てがつらい
- 子どもがかわいいと思えない
「高知みその」のキャラクター「みそのん」はゾウです。ゾウは集団で子育てをするそうで、「若いお母さんゾウを先輩ゾウがサポートし、赤ちゃんゾウをみんなで守り育てるそうですよ」と武市さん。
「私たち人も、ゾウのようにみんなで子どもを育んでいく社会になっていきたいですね。みそのは子育て中のご家族とつながり、一人一人がその人らしく子育てができるようにお手伝いしていきたいと思っています」