生理の仕組み、子どもにどう伝えたらいい?生理不順、生理痛への対応は?|産婦人科医・毛山薫さんの講演から紹介します
「いのちのおはなしキャラバン隊!土佐姉妹」と高知県医師会が親子向けの思春期講座を企画しました
体も心も大きく変化していく思春期。自立に向かってわが子が歩んでいく中で、親子の関係も変化していきます。
思春期について親子で学ぶ講座が高知市内で開かれました。産婦人科医の毛山薫さんが講演し、女の子の体の変化や男の子の体の変化について解説しました。
生理の仕組みは子どもにどんな言葉で伝えたらいい?わが子の生理不順や生理痛への対応は?小学 3 年生と年長児の女の子を育てるココハレ編集部員が取材しました。
目次
思春期の体と心の変化…なぜ親子で学ぶ?
ココハレ編集部が今回取材したのは「夏休み親子で学ぶスペシャル思春期講座」。親子向けの性教育に取り組む「いのちのおはなしキャラバン隊!土佐姉妹」と高知県医師会の共催で、2024 年 8 月 4 日に高知市丸ノ内 1 丁目の総合あんしんセンターで開かれました。
思春期講座のタイトルは「おしえて薫先生!思春期の身体とこころ」ということで、産婦人科医の毛山薫さんが講師を務めました。
毛山さんは土佐高校、川崎医科大学を卒業。京都第二赤十字病院、徳島大学病院、高知赤十字病院を経て、けやまクリニック(高知市知寄町 1 丁目)で診療しています。
成長の過程で誰もが通る思春期を、なぜ親子で学ぶのでしょうか。毛山さんはこんな言葉で語りかけました。
「変化していく体と心について学ぶことは、皆さんが信頼し合える人間関係を築き、ステキな人生を送るために大切です」
「親子で一緒に学ぶことで、お互いをもっと理解し合えるようになるのではと思います」
「どうして男の人と女の人がいる?」「生理って何?」への答え方
講座には小中学生の親子ら約 80 人が参加しました。子どもの年齢が幅広いため、毛山さんはできるだけ簡単な言葉を使って説明しました。
例えば、「どうして男の人と女の人がいるの?」という質問への答えがこちら。
男の人、女の人、それぞれが赤ちゃんのもとを持っています。子孫を残すために体が大きく変わるのが思春期です。
「男の人と女の人の違いの一つがおまたですね」という話から、生理の話へと移りました。
生理とは何ですか?
膣は「おしっこが出る穴、うんちが出る穴とは別にある、赤ちゃんが通る穴のこと」、生理が毎月来る理由は「子宮をきれいにして赤ちゃんを待つため」。
なるほど、これならわが家の年長児にも伝わりそうです。
思春期に多い生理不順、生理痛…受診を考えるタイミングは?
生理が始まったばかりの頃は、周期がなかなか落ち着かないことも。初めての生理痛や気持ちの浮き沈みに戸惑う子どももいます。
思春期の女の子の変化で親が気をつけておきたい点は?
- 生理が来るのがバラバラで、うまく準備ができない
- 生理が来る前に、訳もなくイライラしたり、泣いたりする
- 生理痛が重い
- 生理がまだ来ない
生理痛は「あまりにしんどかったら、我慢する必要はないですよ」と毛山さん。婦人科の受診を考えるタイミングを三つ挙げました。
- 学校を休むほど生理痛が重い
- 生理が 3 カ月以上来ない
- 高校生になっても生理が来ない
「子どもを婦人科に連れて行くのはちょっと抵抗が…」「内診は受けさせたくない」というお母さんは少なくないのでは。
毛山さんによると、ほとんどの場合、子どもには内診を行わないそうです。
「内診は子宮が一番よく見えるので、大人の診察では行います。子どもの場合はおなかに超音波を当てて診察します」
ちなみに、超音波を当てて診ているのは「卵巣が腫れていないか」だそうです。
「卵巣はすごく不思議な臓器で、生理に関係なく、小学生でも腫瘍ができます」。異常がないかチェックした上で、鎮痛剤やホルモンのお薬を必要ならば処方するそうです。
生理が来なくなった…長く放置するのは危険です
中高生では「生理が来なくなった」と受診する子どももいるそうです。妊娠しているのでなければ、少しくらい大丈夫そうですが…?
毛山さんが診察している中高生で、生理が来なくなる主な理由がこちら。
この場合は毎日の運動量が摂取カロリーを大幅に上回っているのが原因と考えられるそう。「骨がもろくなり、骨折しやすくなるかもしれません」
成長期のダイエットの影響は骨がもろくなるだけではありません。将来妊娠した際に、おなかの赤ちゃんの体重も増えにくくなる可能性があるそうです。
「大人が『痩せなきゃ』とか『あの人、昔は痩せてきれいだったのにね』と言ってしまうと、子どもは『痩せた方がきれいなんだ』と思います。むやみに体重を落とすより、元気で過ごすことが大事です」
もちろん、健康のために痩せる必要がある人もいます。親がダイエットする場合は「なぜ痩せたいのか」を子どもに説明してあげるといいそうです。
男の人の役割は?「赤ちゃんのもとをつくり、女の人にプレゼントします」
男性の外性器の役割について、毛山さんはこう説明しました。
ペニスは赤ちゃんのもとを女の人に送り込むための、とても大切な臓器です。
思春期の性の悩み相談は、男の子からの方が多い傾向にあります。高知県思春期相談センター「PRINK(プリンク)」では相談の 9 割が男の子から。「自慰(マスターベーション)」「性欲」「包茎」に関することが多いそうです。
毛山さんも男の子から寄せられる悩みを紹介しました。
- 自分のペニスは友達と比べて小さいのでは
- 自分が思っていない時に硬くなってしまいます
- 包茎じゃないでしょうか
マスターベーションについて、毛山さんは「すごくプライベートなこと。悪いことではなくて、男の子も女の子もしていい」と語りました。
とてもプライベートなことだからこそ、ルールが大切です。
- 人に見せたり、触らせたりしてはいけません
- 外性器に触れる際は傷つけないように、手を洗って、爪も切りましょう
- 動画を誰かに送ることも決してしないように
特に男の子は強い刺激を求めがちで、将来の不妊の原因にもなっているそうです。
思春期を迎えたわが子にいきなり話すとなると、親としてはハードルが…。幼い頃から「外性器は将来、赤ちゃんをつくるためにとても大切」「大事に、清潔にしようね」と繰り返し伝えていきたいと、あらためて感じました。
まずは自分を大切に。自分の体と心を守れるのは、自分だけです。
講演では子宮頸がんを予防するHPVワクチンなどのお話もあり、女の子を育てる親として考えさせられました。
幼児を育てていると「思春期はまだまだ先の話」と思いますが、子どもはあっという間に成長します。「幼い頃からの積み重ねが大事」と言われる性教育。「まずは自分を大切に」をわが家でも伝えていこうと思います。
子宮頸がん検診、HPVワクチンについて、ココハレで紹介しています。
子宮頸がん検診、受けていますか?|20代から増え、30~40代に多い子宮頸がん。HPVワクチンの定期接種は小学6年~高校1年の女の子が対象です