「寝返り」「反り返り」「ハイハイ」…赤ちゃんの運動発達、気になっていませんか?|赤ちゃん会高知会場で寄せられた質問に作業療法士・稲富惇一さんがお答えします〈前編〉
生まれてから小さな体がぐんぐんと急成長する赤ちゃん。月齢とともに、運動の発達や動きについてふと気になったことはありませんか?
「片方にしか寝返らないけど大丈夫?」「ハイハイをしない」「歩き始めが遅いかも」…。個人差があると分かっても、周りのお子さんやさまざまな情報と比べてしまう時があるかもしれません。
2026 年 4 月に開かれた「第 92 回赤ちゃん会」の高知会場では、「運動発達」に関する相談ブースが初めて設けられました。
ココハレではママパパから寄せられた質問を前編・後編でご紹介。相談ブースを担当した認定作業療法士の稲富惇一さんの詳しい解説とともにお届けします!
目次
【赤ちゃんの運動発達】「首がすわる」から「一人歩き」まで
稲富さんは認定作業療法士。高知健康科学大学・土佐リハビリテーションカレッジ(高知市大津乙)の講師として、作業療法士を養成しています。
専門は脳卒中と、子ども関連の脳性麻痺・発達障害・発達性協調運動障害など。病院で子どもの運動や生活面のリハビリなどに携わってきました。
現在は研究に加え、子どもの運動・学習の相談事業などに取り組んでいます。
家庭では 3 児のパパ!小学 6 年、4 年、1 年の子どもを育てています。
「運動発達」の相談には 100 組以上が訪れました
「運動発達」の相談ブースが設けられた「第 92 回赤ちゃん会」は 2026 年 4 月 12 日に高知県立春野総合運動公園の体育館で開かれました。
生後 3 カ月~ 1 歳 6 カ月の赤ちゃん 965 人とその家族が参加し、身体測定や診察、歯科検診などを受けました。
「運動発達」の相談ブースには 100 組以上が訪れ、ママパパがわが子の発育について気になることを質問していました。
稲富さんによると、大きく分けて「寝返り」「ハイハイ」「一人歩き」の質問が特に多かったそうです。
赤ちゃんの個性の差なのか、注意して見てあげた方がいいのか、迷ってしまうこともありますよね。
質問をご紹介する前に、赤ちゃんの運動発達の基本について、稲富さんに教えてもらいました。
乳児期~ 1 歳半ごろの主な運動発達
赤ちゃんは主に次のような動きができるように発達していきます。
- 首がすわる
- 寝返る
- 一人座りをする
- ハイハイする
- つかまり立ちをする
- つたい歩きをする
- 一人歩き
この順番に沿って発達してもらいたいところですが…?

これはココハレ編集部員も初耳で、ちょっと驚きでした!一つ一つの動きには目安がありますが、わが子らしいペースも大切にしたいですね。
では赤ちゃん会で寄せられた質問を紹介していきましょう!
【寝返り】「どんな動きをしていたら始まりそう?」「決まった方にしか寝返りません」
まずは「寝返り」から。首がすわり、手足をよく動かすようになると「もうそろそろ寝返りかな」と楽しみですね。
一方で、うつぶせ状態になるので、寝る時などには安全面も気になり始めます。
「寝返りが始まりそう」というサインは?


体や足をねじる動きや、肩甲骨から腕を回すような動きをしていたら、いい傾向です!
稲富さんによると、寝返りは赤ちゃんが「自分で姿勢を変える」ことを経験する最初の大きな運動の一つ。
それまであおむけが中心だった赤ちゃんは、自分の意思で身体を回転させることで、見える景色や手の届く範囲が広がります。いわば「周囲の世界を探索するきっかけ」になります。
寝返りが始まる時期は生後 3 カ月から 6 カ月ごろにかけてが多いそう。赤ちゃんの動きに注目しながら応援したいですね!
赤ちゃんの動きをずっと見ていると、小さな癖にも気づきます。寝返りが始まったからこそ、見えてくる心配がある人も。


稲富さんいわく「大人が同じ側にかばんを持つことが多いように、赤ちゃんにも好きな方向があるのではないでしょうか?」。
赤ちゃんも興味を持つおもちゃやテレビが決まった位置にあれば、同じ方向に寝返る可能性があるとのこと。
一方向への寝返りがとても気になるなら、こんな対策があります。
- 赤ちゃんを寝かせる時に、頭と足の位置を逆に変えてみる
- 気に入っているおもちゃを置く場所を変えてみる
「出生前後で特に医師の診断や指摘を受けていなければ、最終的には全体の空間に注意を向けていくと思われます」とのことです。
ただ例外的に、脳性まひや斜視などの診断を受けているお子さんは、見る方向が偏ることや、一方向だけに注意を向けることに気をつけた方が良い場合があります。「主治医のアドバイスに従ってください」と呼びかけています。
【反り返り】「こんなに反る?!」「動きが強くて気になります」
うつぶせで遊ぶ赤ちゃん。両手を離して首を持ち上げた時に、「こんなに反るもの?」と感じたことがある方もいるかもしれません。


稲富さんによると、「飛行機ポーズ」で首を持ち上げることで、「ハイハイ」や「立つ」ために必要な背中の筋肉を鍛えたり、興味を持ったものを見ようとしたりしています。
首を上げる筋肉は肩甲骨とつながっています。赤ちゃんは首がすわっても、首だけの力はまだ弱いので肩甲骨を後ろに引っ張ることで首を上げるのを手伝っているそう。「理にかなった動きで、全く問題ありませんよ」
同じ「反り返り」でも、抱っこの時にされると、あぶなっかしいことも…。
「抱っこしづらいほどの反り返り」については、「常に困っている場合は各自治体の窓口などで相談してください」と勧めています。
【ハイハイ】「促すための遊びは?」「しないままつかまり立ち…」「しないと発育に影響?」
次の大きなステップがハイハイ。「遊びながら後押しできる?」といった質問が寄せられました。


赤ちゃんが自分から動きたくなる環境をつくることが大切です。
稲富さんによると、赤ちゃんはハイハイをすることで、手足を協調して動かしながら移動するという経験を積んでいきます。
「ハイハイは全身の筋力やバランス、姿勢のコントロールや空間認識力を身に付ける上で良い影響を与えるとされています」
体の発育が促される以上に、「自分で動いて世界が変わる体験」が大切です。「視点が変わり、能動的に物体に触れる体験」です。
というわけで、おすすめの関わりがこちら。
- 少し手を伸ばした先に好きなおもちゃを置いてみる
- ママパパが少し離れた場所から、赤ちゃんに声をかけてみる
こうすると、赤ちゃんに「行ってみたい」という気持ちが生まれやすくなるそう。
赤ちゃんの気持ちを高めてあげることも大切なんですね!
ちなみに、動こうとしない、のんびり屋さんの赤ちゃんの場合は「前向き抱っこで親が動くことで、視線が変わる体験をさせてあげることもいいのでは」と稲富さん。
腹ばいや高ばい(膝を床につけず、両手両足で支えてお尻を高く持ち上げる姿勢)など、ハイハイの手前の動きが見られることは、いい傾向だそうですよ。
参考までに、2023 年の国の調査で得られたハイハイの目安を紹介します。
ハイハイをする赤ちゃんの月齢とその割合
- 5 ~ 6 カ月未満 で 6.3%
- 6 ~ 7 カ月未満で 19.5 %
- 7 ~ 8 カ月未満で 47.6 %
- 8 ~ 9 カ月未満で 67.4 %
- 9 ~ 10 カ月未満で 76.9 %
※政府統計e-Stat「一般調査による乳幼児の運動機能通過率」より。詳しくはこちらから
「ハイハイの次はつかまり立ち」。そう思っていたら、実際は違って戸惑うこともあるようです。


かつての日本では畳の上に座る生活様式で、赤ちゃんが自然とハイハイ移動をしやすい環境でした。
今は室内にいすやソファが置かれ、家の広さも昔より狭くなったため、「ハイハイしづらい一方でつかまり立ちがしやすくなった」と論文や研究で言われているそうです。
稲富さんは「いろんなことに興味を持つ赤ちゃんの立場で考えると、広い世界を見るために早くつかまり立ちをしたい気持ちも想像できますね」と話していました。
赤ちゃんによってハイハイの時期やスタイルはさまざま。「ハイハイは大事」と言いますが、しなかった場合は大丈夫なのでしょうか?


一昔前は、ハイハイをしないと「骨が弱くなる」「手をついた時に骨折する」などと言われることもありました。
稲富さんによると、骨が強くなるには、「重力の影響を受ける」「日光を浴びる」「しっかり栄養を取る」など、いくつもの条件が必要とのこと。
「ハイハイできた=骨が強くなる」とは必ずしも言えないということですね。
「つかまり立ちでも加重がかかり、骨は強くなります。ハイハイをしないこと自体は、あまり気にしなくて大丈夫だと思います」
「状況はお子さん一人ひとりで異なります」
ママパパの疑問に対するアドバイスを紹介してきましたが、「ここでお話しした内容が全てのお子さんに必ずしも当てはまるとは限りません」と稲富さん。心配な時は?

相談先には次のような窓口や機会があるので、ぜひ活用してください。
- 地域の子育て支援センター
- 市町村が実施する乳児健診(1 歳までの間で各市町村が定めた月齢に行うもの)
- 幼児健診(法定健診)の 1 歳 6 カ月児健診、3 歳児健診
- 県や市町村の発達相談窓口
- 自宅に保健師さんなどが来る乳児家庭訪問事業
後編では「つかまり立ち」「一人歩き」などについての質問を紹介します。
後編はこちらをタップ▼
「つかまり立ち」「一人歩き」「動きが活発」…赤ちゃんの運動発達、気になっていませんか?|赤ちゃん会高知会場で寄せられた質問に作業療法士・稲富淳一さんが答えます〈後編〉
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