「つかまり立ち」「一人歩き」「動きが活発で心配」…赤ちゃんの運動発達、気になっていませんか?|赤ちゃん会高知会場で寄せられた質問に作業療法士・稲富惇一さんがお答えします〈後編〉
月齢とともに寝返りやハイハイなど新しくできることが少しずつ増えていく赤ちゃん。見守りつつ、「うちの子、ちゃんと発達できてるかな」と気になることも…。
「第 92 回赤ちゃん会」高知会場に設けられた相談ブースでは、赤ちゃんの運動発達について、ママパパからたくさんの質問が寄せられました。
ココハレでは主な質問を前編・後編でお届け。担当した作業療法士の稲富惇一さんの詳しい解説付きで紹介しています。
この記事は後編。「つかまり立ち」「一人歩き」についての質問や、赤ちゃんを見守る際の心がけなどについて聞きました。
前編はこちらをタップ▼
「寝返り」「反り返り」「ハイハイ」…赤ちゃんの運動発達、気になっていませんか?|赤ちゃん会高知会場で寄せられた質問に作業療法士・稲富惇一さんが答えます〈前編〉
目次
質問に答える稲富さんは認定作業療法士。高知健康科学大学・土佐リハビリテーションカレッジ(高知市大津乙)の講師として、作業療法士を養成しています。
専門は脳卒中と、子ども関連の脳性麻痺・発達障害・発達性協調運動障害など。病院で子どもの運動や生活面のリハビリなどに携わってきました。
現在は研究に加え、子どもの運動・学習の相談事業などに取り組んでいます。
家庭では 3 児のパパ!小学 6 年、4 年、1 年の子どもを育てています。
後編は「つかまり立ち」から紹介します。
【つかまり立ち】「ハイハイばかりでなかなかしてくれない…相談の目安は?」
ハイハイが上手になると、赤ちゃんの世界はさらに広がります。ハイハイが得意で、ものすごく速くハイハイで移動できる赤ちゃんもいますよね。
「つかまり立ち」はハイハイの次のステップ。
ハイハイが上手になると、「いつ立つかな?」と楽しみですが、なかなか始まらないと心配も…。


稲富さん
お子さんによっては床の上の生活を楽しんでいることがありますよ!
つかまり立ちが始まるのは生後 6 カ月から 10 カ月ごろと、かなり幅があります。
相談の目安は 1 歳を過ぎたころ。1 歳を過ぎてもつかまり立ちをしない場合は「筋力や姿勢のコントロールなどを確認した方がいい場合もあります」とのこと。
気になったら乳幼児健診、県や市町村の発達相談窓口などで聞いてみましょう。
【一人歩き①】「周りの子どもよりも早く始まりました…早くても問題はない?」
次の段階は「一人歩き」です。赤ちゃんが初めてよちよち歩きする姿は、親にとって見逃したくない大切な瞬間の一つ!
うれしい成長ですが、他の子どもより早く始まると、心配になることも…。


一人歩きが早く始まる赤ちゃんは一定数いますよ。
2023 年の国の調査によると、約半数の赤ちゃんが「一人歩き」できるようになるのが 1 歳ごろから。
生後 11 カ月未満の時点で一人歩きする赤ちゃんは全体の 9 %でした。
※政府統計e-Stat「一般調査による乳幼児の運動機能通過率より。詳しくはこちらから
一方で、 1 歳 4 カ月未満の時点で 1 割以上の赤ちゃんは一人歩きをしていないという結果でした。
統計データも参考にしながら、お子さんの成長を見ていけるといいですね!
【一人歩き②】「歩けているけど、歩き方が気になる」「歩行器は使うべき?」
次は歩き方の様子についての質問です。


稲富さんによると、気になる歩き方がこちら。
- 常につま先立ちで歩いている
- 同じ足ばかりを使う
- 極端に転びやすい
- 腰から背中上部にかけて身体が非常に反り返る
1 歳半ごろには、ほとんどのお子さんが上手に歩くことができます。そのころまでに「歩けない」「歩き方が気になる」といった場合は、 1 歳 6 カ月児検診の時などに相談することを稲富さんは勧めています。
「歩行器」についての質問も寄せられました。
そういえば、「一人歩きが遅いので、周りに使ってみたらと勧められた」という話を聞いたことがあります。


歩行器には小さなキャスターが付いていて、赤ちゃんは台に上半身を預けたり、座ったりしたまま足で床を蹴り、移動できます。
稲富さんは「歩行器は赤ちゃんが体を預けて足をパタパタさせる道具なので、自分の体重を足で支える練習にはならないと思います」と話していました。
「子どもの運動神経を良くしてあげたい」というママパパもいると思います。赤ちゃんの頃から何か始めておいた方がいいのでしょうか。
稲富さんによると、「走る」「ジャンプする」「投げる」「バランスを取る」といった基礎力は 3 歳ごろから上がっていくと、国内外の論文で言われているそうです。
稲富さんがチームが取り組んでいる幼児期の運動能力に関する調査では、例えば「バランス」に関しては 6 歳で急上昇するというデータが出たとのこと。
「研究や関わりを通して、子どもは 3 歳から 5 歳ごろにさまざまな体験を通して基礎を整えて、6 歳から急激に上がっていくという感覚を持っています」と稲富さん。
「歩行器のような道具は特に使わなくても大丈夫ですし、親が動きを過度に誘導すると、赤ちゃんは誘導されることに依存する恐れもあります。赤ちゃんは自ら興味を持って動こうとするので、その環境を整えてあげましょう」
【どう見守る?】「動きが活発になってきて、けがが心配です」
つかまり立ちや一人歩きが始まると、赤ちゃんはどんどん動きます。
好奇心のままにあっちに行ったり、こっちに行ったり。行動範囲が広がってますます目が離せず、ハラハラする場面が増えますね。


稲富さん
1 歳を過ぎたあたりの赤ちゃんは失敗しながら学ぶことで、体が育っていく時期です。
座ったり立ったりするのがまだ不安定なので、前に倒れたり、尻もちをついたり。親はヒヤッとしますが、こうした失敗は体の動きを学んでいる過程なのだそうです。
稲富さんのおすすめはおじいちゃん、おばあちゃんも含め、周囲の大人たちが見守り方を話し合っておくこと。
「この程度はチャレンジさせてあげよう」「ここは危ないから柵を設けておこう」と決めておくといいそうです。
相談ブースでは「公園にお子さんを連れて行っていない家庭が意外と多いのが印象的だった」そうです。
「つかまり立ちやつたい歩きができ始めたら、公園でさまざまな草木に触れたり、遊具をつかみながら追いかけっこをしたりするのもいいのではないでしょうか」
けがには十分気をつけながら、親子で楽しんでください!
【相談のタイミング】特に指摘がない場合は1歳6カ月健診を活用しましょう
子育てをしていると、「どこでどんなふうに情報を得ていくか」も悩みどころの一つです。
「インターネットで検索したら余計に心配になった」「情報がありすぎて分からない」という方もいるのでは。


稲富さんによると、インターネットで子育ての情報を見つけ、「自分の子どもに当てはまらない」と不安を抱えて相談に来るケースがあるそうです。
「ネットやSNSには正しい情報だけでなく、根拠のない情報や『今はやらない方がいい』と言われている過去の情報なども挙げられています」
気になることがある場合は「専門家にリアルで相談するのが一番」とのことです!
最後は、相談のタイミング。気になることがあった場合、「個人差」として見守るのか、相談した方がいいのか、迷うところです。


1 歳 6 カ月児健診では子どもの運動発達や言葉の発達、歯の状態などを確認します。多くの専門家に子どもの状態を見てもらい、相談できる大切な機会です。
「あくまで、お子さん一人一人で状況は異なります」と稲富さん。気になる場合は健診の機会や相談窓口を活用してください。
- 地域の子育て支援センター
- 市町村が実施する乳児健診(1 歳までの間で各市町村が定めた月齢に行うもの)
- 幼児健診(法定健診)の 1 歳 6 カ月児健診、3 歳児健診
- 県や市町村の発達相談窓口
- 自宅に保健師さんなどが来る乳児家庭訪問事業
「親子で楽しく過ごせる関わり」が発達を支えます
インターネットでさまざまな情報を手に入れられる時代。3 児のパパでもある稲富先生も「『これが正解だ』と言われるものが多すぎて、親としてはつらさを感じることもあります」と明かします。
第 3 子のお子さんは第 1 子・第 2 子のお子さんたちに比べて歩き始めが遅く、「運動発達について学んできた自分でも、気になった時期がありました」。
ただ「子ども自身が楽しく、さまざまなことに興味を持って動こうとしている場面を見ると安心した記憶があります」と振り返ります。
子どもの発達を支える上で、何よりも大切なのは「親子で楽しく過ごせる遊びや関わり」だと、稲富さんは考えています。
「赤ちゃんにとっては、一番大切な家庭の環境が安定していること、そしてお父さん、お母さんが笑顔で無理なく過ごしていることが一番だと思います」
「発育が気になったり困ったりして、笑顔でいられなくなった時は、迷わず専門家を頼ってくださいね」
わが子のことだからこそ、小さな変化にも気づいて不安になることがあります。成長の目安や個人差を知ることで安心につながりますが、悩んだ時は一人で抱え込まず、周りに頼ることも大切だと感じました。
赤ちゃんの時期はあっという間に過ぎてしまうもの。貴重な時間を親子で楽しく過ごしたいですね!
この記事の著者