視覚支援、グッズで「特性」「苦手」を軽くしていきませんか?|世界自閉症啓発デーに「こせいにあわせた くふう展」が開かれました
自閉症を正しく知ってほしい!保護者や支援者が生活に取り入れてきた工夫を紹介します
2023 年の「世界自閉症啓発デー」となった 4 月 2 日、高知市で「こせいにあわせた くふう展」が開かれました。
企画したのは、自閉スペクトラム症(自閉症)など特性のある子どもの保護者、支援者の皆さん。「自閉症を正しく知ってほしい」と、生活に取り入れている視覚支援グッズやストレス解消グッズを紹介しました。
ココハレ編集部が会場を取材しました。その人の特性に合わせ、「苦手」を軽くしていくアイデアを紹介します。
目次
アーリーバードプラスを受講した保護者らが企画しました
「こせいにあわせた くふう展」は 4 月 2 日、高知市南御座の「高知 蔦屋書店」で開かれました。
企画したのは、イギリス自閉症協会が開発したプログラム「アーリーバードプラス」を受講した保護者や支援者の皆さん。高知県内で活動する「TOMOはうす」が 2019 年から講習を続けています。
発達障害の特性を理解し、よりよいコミュニケーションを図り、問題行動を未然に防いだり、対処したりする方法を学んでいます。
今回のイベントは「自閉症のことを正しく知ってほしい」と、初めて企画されました。
自閉スペクトラム症の特性とは?
自閉スペクトラム症は、「コミュニケーションの苦手さ」「柔軟性を持った思考の苦手さ」などの特性のある発達障害の総称です。知的障害を伴う自閉症から、知的障害を伴わない「アスペルガー症候群」「高機能自閉症」まで全てを含みます。
具体的には次のような特性があります。
【自閉スペクトラム症の特性】ココハレ「発達障害を知ろう①」より
- 他者理解が苦手…「お母さんが熱を出してしんどい」という状況が理解できず、「ご飯まだ?」「遊ぼう」と言ってしまう。「空気が読めない」と言われる
- 言葉の裏を読むのが苦手…たとえ話や冗談が通じない
- 変化に弱く、臨機応変な選択ができない…スケジュールや道順の変更などに上手に対応できない
- こだわり…興味・関心に偏りがある
- 感情を共有することが苦手…クラスの友達が盛り上がっているのに、何が楽しいのか分からない
自閉症の人は「視覚に強い」とも言われます。口頭での説明よりも、絵や文字などを使った説明や、今から何をするのかが見て分かる環境の方が理解しやすいという特性です。
特性の現れ方や程度は人によって違うため、その人に合った支援が大切です。
スケジュール、やることリスト…「視覚支援」は「特別なこと」ではありません
「こせいにあわせた くふう展」では、視覚支援を中心に「その人に合った支援」が紹介されました。
会場は「高知 蔦屋書店」の 2 階ミニギャラリー。伊野商業高校の生徒が制作したポスターが来場者を出迎えました。
スタッフはおそろいのTシャツ姿でお出迎え。「これが私」を意味する「This is me.」というメッセージとイラストで、お互いの個性を尊重する大切さをさりげなく伝えていました。
視覚支援グッズには、日課を確認するもの、スケジュールとして覚えておくもの、忘れ物をしないための便利グッズなどたくさんありました。
声の大きさ、気持ちは「見える化」できます
声の大きさ、気持ちといった抽象的な概念は「見える化」するといいそうです。
会場では「声のものさし」や「気持ちの温度計」が紹介されていました。
「気持ちの温度計」は、「うれしい」「楽しい」「嫌だ」「腹が立つ」などの気持ちを数字や色で見える化しています。自分の気持ちを相手に言葉で伝えるのが難しい人にとって、コミュニケーションを助けてくれるグッズです。
「耳で聞いても理解が難しい」「書き写しが苦手」…ICTを有効活用!
発達に特性のある子どもたちは、学校の授業でつまずくことがあります。「先生の話を聞いても、理解が難しい」「授業中に黒板の文字を書き写すのが難しい」というケースです。
こんな時にはICTをうまく活用するといいそうです。
会場で紹介されたのが「Speechy」というiOSアプリ。話した声をリアルタイムでテキストに変換します。
しゃべり言葉が瞬時にiPadに文字で表示される上に、その文脈に合った言葉に変換されるので、誤変換が少ないそう。
授業で当たり前のように活用されたら、特性のある子どもだけに限らず、教える先生の負担も減るのではと思う便利グッズです。
「じっとできない」のは我慢が足りないから?集中を他にそらせるグッズ
「じっとしているのが苦手」という特性もあります。気持ちが他に向いてしまう場合に使えるのが、ストレス解消グッズです。
握った感触や、くるくる回るのを眺めることで、集中が他に向き、じっとしていられるそうです。
子どもが好きなタイプがどれか、試してみるといいですね。
「じっと座るのが苦手」という特性も、足つぼマッサージ器やバランスボールなどの身近なグッズで軽くしていけます。
TOMOはうす代表の久武夕希子さんによると、こうしたグッズは「海外の学校では当たり前に使われている」そうです。
「日本の学校でも『座っているのがしんどくなったら使っていいよ』と呼び掛け、座れるようになった事例がありますよ」
子どもの「できないこと」にとらわれず、「できること」を伸ばしていきましょう
「こせいにあわせた くふう展」で実行委員長を務めた浜田聖一郎さんは、わが子に「自分の気持ちを相手に伝えるのが難しい」という特性があり、支援グッズを取り入れてきました。
「『じっと座れない』など、わが子ができないことを見るのではなく、『ストレス解消グッズで気を紛らわせたら、多動が落ち着くんだ!』と見方を変えてほしい」と考えています。
「お子さんにはきっと、いいところがたくさんあります。目が悪い人が眼鏡を掛けるように支援グッズを当たり前に使って特性や苦手を補い、子どもができること、いいところを伸ばしていける世の中になればと願っています」