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入学、進級、新しい担任、合理的配慮…自閉スペクトラム症の子どもの新年度は?|高知県自閉症協会の「保護者座談会」で思いを語りました

入学、進級、新しい担任、合理的配慮…自閉スペクトラム症の子どもの新年度は?|高知県自閉症協会の「保護者座談会」で思いを語りました

自閉スペクトラム症(ASD)の子どもを育てる上で困っていること、知りたいことは?

高知県自閉症協会では、子どもの発達が気になる人や不安を感じている人を対象に「保護者座談会」を開き、子育てや日頃の悩みを共有しています。

2025 年 5 月 15 日に開かれた座談会には小学生から高校生のお母さんが参加。「新年度になって支援が変わってしまった」「合理的配慮の必要性を伝えるのが難しい」…。入学や進級など、新年度のスタートに伴う困り事を中心に思いを語りました。

 

高知県自閉症協会の「保護者座談会」は 2025 年度、高知県立ふくし交流プラザ(高知市朝倉戊)で 3 回開かれます。乳幼児から高校生までの保護者が参加でき、会員以外の人も見学できます。

  • 5 月 15 日(木)
  • 7 月 3 日(木)
  • 11 月 6 日(木)

5 月 15 日は 7 人のお母さんが集まりました。

お菓子と飲み物でほっこりしました
お菓子と飲み物でほっこりしました

小学校に入学…友達は欲しいけれど、「近づいてこられた」と受け止めてしまいます

小学 1 年の男の子のお母さんは、友達との関係を打ち明けました。男の子は地域の小学校に入学しました。

「息子はすごく頑張っています。『友達が欲しい』と言っているんですけど、『友達』の捉え方や感じ方が違うようです」

例えば、朝の登校時に同級生から「おはよう」とあいさつされると、「話しかけられた」「近づいてこられた」「嫌だ」と受け止めてしまうそう。

「朝の気持ちが崩れちゃって…。『そうじゃないんだよ』といつも伝えていますが、なかなか難しいです」

園から小学校へ。大きな環境の変化です
園から小学校へ。大きな環境の変化です

入学後の様子を見て、学校や医療機関とも調整し、現在は「支援学級で学習にしっかり取り組みましょう」という方針で学校生活を送っています。

親子で一緒にいたある日、小学生からこんな声が上がりました。

「あっ、○○(支援学級の名前)の子だ!」

発言した小学生に悪気はなかったようですが、「私の気持ちがまだできてなくて、ショックを受けました」とお母さん。「これからいろいろ頑張らないと…」と話していました。

中学校の進級で学校の対応が様変わり…「合理的配慮」とは?

中学生のお母さんたちは、進級や受験対応への悩みを語りました。

1 年の女の子のお母さんは「小学校は嫌がってたけど、中学校は『制服を着たい』と思ったみたい。『中学校はこういうもの』というのも頭に入ったようで、今は通っています」

先生について、「ママ、どう思う?」と聞かれますが、「今は深入りせず見守っている」と話していました。

中学校に入ると、また新たな環境に
中学校に入ると、また新たな環境に

3 年の男の子のお母さんは、学校の対応の変化に疑問を感じていました。

「新年度で担任の先生が替わり、対応ががらっと変わってしまいました。聴覚過敏がひどいのを学校に分かってもらえなくて…。学校と何度も話し合っていますが、昨年してくれていた対応を今年はできない理由がどうしても納得できません」

男の子は図書室が気に入っていて、学校に行く楽しみになっています。

「図書室の先生って何にも言わずに見守ってくれるよね」と別のお母さんが話すと、皆さん「うん、うん」と共感していました。

「支援が必要な子どもが多くて、学校が対応しきれていないのかも」という意見も
「支援が必要な子どもが多くて、学校が対応しきれていないのかも」という意見も

学校での「合理的配慮」は一人一人の障害の状態や教育的ニーズなどに応じて決定されるものと、文部科学省が定義しています。ですが、座談会では「理解のある先生に出会えるかによるよね」という話になりました。

18 歳の男の子のお母さんは「息子は勉強はしたいけれど、聞き取りが難しいので視覚支援が必要でした。すごく分かってくれる先生にたまたま出会えたけど、中学校は 1 年で先生が替わる。分かってくれない先生の方がまだまだ多いですよね」

「支援を諦めて、『息子が生きてればいいや』という感じでやってきました。支援をしてくれるという先生に出会えたら、『やってくれるんですか!』って」

特性、思春期、進路に受験…子どもへの向き合い方を考えました

高校生のお母さんは「ずっとおとなしくて手のかからない子どもだった」と生い立ちを話しました。

「小学校でも教室にちゃんと座っていて、問題は感じませんでした。後から聞くと、授業中はずっとイマジナリーフレンドとおしゃべりしていたから、座っていられたそうです」

イマジナリーフレンドは「空想上の仲間」などと訳され、子どもの発達過程に見られる現象です。高学年になると不登校が始まり、中学生の時に診断されました。

「支援が遅れたとその時に気づきました。高校も難しくて、『もう死にたい』。今は勉強はいいかなと、本人にとって楽しいことだけしています」

「学校には行かせなきゃ」と思っていました
「学校には行かせなきゃ」と思っていました

小学校高学年から中学校、高校にかけてはちょうど思春期。進路や受験の話も絡み、ASDの子どもへの向き合い方はより難しくなるそうです。

「進路のことを言うと、『お母さんが不安をあおった』と言われます。自分は嫌だけど学校に頑張って行っているのに、それを認めてほしいのにって」

「学校に頑張って行っている分、家でかんしゃく。わーっとなります」

「自分に自信がないから、否定されると怒る。『あなたはそう思うのね』と子どもの話をいったん受け止めて、『でも、お母さんはこう思う』と自分の意見を言うようにしていますが、『でも』でもう怒っちゃう」

特性はそれぞれ違いますが、「親に言われると腹が立つ」「親以外の大人に言われた方が理解できる」というのは共通しているようです。

「私が直接言うと腹を立てるから、メモして壁に貼ったり、『講師の先生に聞いてみたら』とアドバイスしたり」というお母さんもいました。

子どもの心のケアについても話しました
子どもの心のケアについても話しました

また、ASDの人には、過去の出来事を突然思い出す「タイムスリップ現象」という症状が見られる場合があります。子どもの心のケアも話題になりました。

「嫌なことがあったり、いじめられたりしたら、ずっとトラウマになりますよね。相手の子がいなくなったとしても」

「うちの子はタイムタイマーが苦手。『音がいつ鳴るかが分からないので怖がります』と伝えていたのに使ったようで、パニックになってしまいました。嫌な経験をずっと引きずってしまうので、どうしてあげたらいいのか」

「その場所で楽しい経験を上書きしてあげなきゃいけないよね」との意見に、皆さん「そうそう」とうなずいていました。

 

保護者座談会ではそれぞれが現在の子どもの様子、親子関係、学校で困っていることなどを出し合いました。保護者同士の集まりですので、今抱えている問題が解決するわけではありませんが、「話を分かってもらえる人とおしゃべりできてスッキリした」と話していました。

不登校の子どもの居場所や発達障害に関する勉強会なども紹介されました。他の家庭の様子も含め、保護者同士の情報共有は、わが子への対応を考える上で参考になりそうです。

次回の座談会は 7 月 3 日(木)10:00から。申し込みは不要です。

高知市で「高知県自閉症協会・保護者座談会」(高知県立ふくし交流プラザ)|子どもの発達や子育ての悩み…保護者同士でおしゃべりしてみませんか?

この記事の著者

門田朋三

門田朋三

小学生ママです。長女は思春期の入り口にさしかかった4年生、次女はピカピカの1年生です。あだなは「ともぞう」。1978年生まれ。

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