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【ココハレインタビュー】助産師・藤原恵さん|子育て中のお母さんの「あったらいいな」を「はぐあす」で形に

【ココハレインタビュー】助産師・藤原恵さん|子育て中のお母さんの「あったらいいな」を「はぐあす」で形に

ランチ会、おしゃべり会、産後ケア…「はぐあす」の拠点づくりに向けてプレ事業を行っています

「誰か大人とおしゃべりがしたい」「ちょっと横になって休みたい」「ゆっくり食事がしたい」…。産後のお母さんの多くが感じる「こんなサービス、あったらいいな」を形にしようと、地域で活動している助産師さんがいます。

高知市で「mamaサポートよつば助産院」を開業する藤原恵さん。産前産後のお母さんたちを支える活動「いのち育みサポート はぐあす」の拠点づくりを目指しています。2022 年 7 月に施設がオープンする予定で、現在はプレ事業として多職種と連携しながら、ランチ会やおしゃべり会、日帰り型の産後ケアなどを提供しています。

「お母さんが元気でいられることが子どものすこやかな育ちにもきっとつながる」と取り組む藤原さんにお話を聞きました。

お母さんたちのニーズに対応しています

高知市朝倉甲にある「よつば助産院」で 2021年12月、「はぐあすママday」が開かれました。赤ちゃんを抱っこし、おむつや着替えなどを詰めた大きなバッグを手にしたお母さん 2 人を、藤原さんたちスタッフが迎えました。

スタッフが赤ちゃんを連れて別室へ。藤原さんはお母さんたちと向き合いました。「お家では赤ちゃん、どんな感じですか?」。子育ての状況や困っていること、気になっていることを丁寧に聞いていきます。抱っこからの解放感、そして藤原さんの明るい笑顔に、お母さんたちの表情が和らいでいきました。

「はぐあすママday」は「はぐあす」が提供している日帰り型の産後ケアです。リラックスヨガやランチ、見守り保育、母乳・育児相談などを行い、お母さんが休んだり、交流したりできる場をつくっています。

はぐあすでは他にも、カフェを貸し切りにしたママランチ会や、妊婦さんも参加できるおしゃべり会などを開いています。お母さんたちのニーズに対応した活動には、藤原さんの助産師としての経験、そして中学 3 年、小学 4 年、1 年の 3 人の子どもたちの母親としての経験が生かされています。

母と子のために何ができる?

藤原さんは 1975 年、高知市で生まれました。助産師になろうと決めたのは大学生の時。もともとは看護師を目指していました。

きっかけは、中高時代に悩まされた頭痛でした。「病院で診てもらっても、原因が分からなかった。学校に行きたいけど行けない、しんどい時期でした」

苦しみながら、「しんどい人の気持ちをじっくり聴ける人になりたい」と考えるように。「カウンセラーかなと思いましたが、心を病んでいる人に限定するのではなく、もっと幅広く聴いていきたい。それなら看護師かなと」

大阪の看護大学に進学。教育課程の一つである「母性」に興味を持ち、実習の一環で分娩(ぶんべん)介助を担当しました。

実習では 1 人の妊婦さんに関わった上で、お産に臨みます。担当した妊婦さんは、藤原さんと同じように頭痛に悩まされていました。

「実習で継続的に妊婦さんに関われたことがとても印象的でした。母だけでもなく子だけでもなく、『母と子のために何ができるか』を考え、関わることが面白かったです」

お産が始まると、「私がしっかりしないと!」。藤原さんにやる気のスイッチが入りました。

「実習なので、学生の私が何とかできるものではないんですが。産後のお母さんと赤ちゃんを見ていると、自分自身も何とも言えない幸せな、温かい気持ちになれました」

「母と子のカップルが好き」。そう感じ、助産師の道を選びました。

「産前から産後まで、長く関わりたい」と助産院を開業

看護師、助産師、保健師の資格を取り、卒業後は高知大学医学部付属病院に就職。産婦人科で助産師人生をスタートしました。

大学病院の産婦人科では一般の産婦人科とは違い、難しい症例も経験します。亡くなる赤ちゃんもいます。「1 年目の時、水頭症で亡くなった赤ちゃんがいました。悲しくて泣いていたら、ドクターに『そこで泣くのがお前の仕事じゃない』と言われました」。厳しい言葉に、はっとした藤原さん。最善を尽くした上で、「次にどう生かすか」を考えることの大切さに気付きました。

その後、看護学科の教員を経て、京都へ。毎月120人ほどが生まれる個人病院でたくさんのお産を経験しました。「忙しい時は 5、6 人生まれるような病院で。楽しかったです」。しかし、ある時、一人一人のお母さんについてよく覚えていないことに気付きました。

私は助産師として、たくさんお産を取ることをしたかったのだろうか。実習の時みたいに、産前から産後まで 1 人の女性に長く関わりたかったのでは…。

助産師として自分がやりたいことを考えた時、見えてきたのが「開業」という道。住み込みで助産院の仕事を学ぶ日本助産師会の長期研修を受けることにしました。

研修では 1 年かけて 5 カ所の助産院を回ることに。研修前に夫と出会い、結婚。「結婚して、すぐ別居です。とんでもないですよね(笑)」

家族の協力を得て、2006 年 4 月に「よつば助産院」を開業しました。30 歳の時でした。

自分も母親に。子どもはかわいいけれど、気持ちがふさぎました

開業から 1 カ月後、妊娠が分かりました。多くの女性と同じように、出産・育児と仕事との両立に直面します。「さあこれからという時だったので、複雑な気持ちにはなりました。でも、『まずは自分が母になって、子育てを経験しなさい』ということなのかなと考えました」

出産後は、子どものいる生活に自分が慣れることから始まりました。「これまで自分の考える道を進んできたというのもあるのかな。思い通りにならないことがストレスで、毎日夫の帰りが待ち遠しかったです」

ですが、本当に大変だったのは 2 人目の出産後でした。

「いきなり 2 人のお母さんになりますよね。上の子の赤ちゃん返りもあり、『しっかり関わらなきゃ』という思いが強かったです。動き過ぎ、頑張り過ぎで心身ともに疲れていきました」

3~4 カ月たつと、子どもはかわいいけれど、気持ちはふさぎました。

1 人目と 2 人目は自宅で出産しましたが、産後の経験もあり、3 人目は助産院で産むことを決めました。産後 1 週間、信頼する助産師に身の回りの世話をしてもらいながら、赤ちゃんと密な時間を過ごし、「3 人育てる」という覚悟が決まりました。

「体も心も、2 人目の時のより早く回復しました。産後の過ごし方、女性の体の回復はその後の子育てにも人生にも、とても大事だと気付きました」

ちょうどその頃、高知県内でも産後ケアを取り入れようという動きが始まっていました。藤原さんは県の検討会の委員に選ばれ、さらに高知県助産師会の理事として、高知市の産後ケアの仕組み作りにも携わることになりました。「『産後ケア、要ります!』って。産後 2 カ月で県の委員会に参加し、当事者として発言できてよかったです」

産前産後の支援を「特別」ではなく「普通」にしたい

市町村の相談事業や産後ケアで家庭訪問する中で、お母さんたちの具体的な困りごとがたくさん見えました。

「赤ちゃんとの生活は時間がないし、手も離せないから、お母さん自身のご飯はお菓子やパンをかじるだけ。2 人目、3 人目となると、退院後すぐに上の子を自転車に乗せて保育園に送り迎えしています。『産後の回復』『母乳のために栄養を取る』なんて、分かっていても無理な人がたくさんいます」

行政による支援の場合、「支援が必要な人」はどうしても限定されます。「産後ケアを特別なことではなく、誰もが必要な時に受けられる普通のことにしたい」「息抜きしたり、不安を解消する充電タイムを社会全体でサポートできるようになれば、子育てを楽しく思えるお母さんが増えるのでは」と、藤原さんは考えるようになりました。

その頃、同じ思いを持つ保育士さんと出会いました。行政ではなく民間の立場で、専門職の力を生かしてお母さんたちを支えたい。お母さんたちが気軽に集まり、ゆっくり過ごせる拠点をつくりたい。その思いを形にしたのが「はぐあす」です。

管理栄養士、理学療法士らも参加し、2020 年 1 月に活動をスタート。「ママランチ de はぐあす」「はぐあすママのおしゃべり会」「はぐあすママday」を定期的に開いていて、高知市外から参加するお母さんもいます。

2020年10月、初めてリアルで開いた「おしゃべり会」。公園で楽しいひとときを過ごしました
2020年10月、初めてリアルで開いた「おしゃべり会」。公園で楽しいひとときを過ごしました

2022年7月、はぐあすの拠点がオープンします

「はぐあす」のコンセプトは「いのちを育む人を支える」。名前には大人同士がハグし合うように互いを支え合う「HUG US」と、未来の子どもたちを育てる「育(はぐ)明日」という意味を込めました。

「子どもを産んだらすぐにお母さんになるのではなく、お母さんも 0 歳。子どもにトライ&エラーができる場所が必要なように、お母さんにもトライ&エラーできる居場所が必要です。赤ちゃんが抱っこされて成長するのと同じように、お母さんも安心して包まれることで、だんだんお母さんとして成長していくのだと思っています」

はぐあすの拠点施設は、よつば助産院の隣で建設が進んでいます。1 階にはカフェ、乳児の一時預かり、セミナーなども開ける多目的スペース、2 階には宿泊ができる部屋を設ける予定。「夫婦でマタニティ合宿をしたい」「働くお母さんがちょっと楽できるように、お総菜を売りたい」「子どもが大きくなっても利用できる企画も」。2022 年 7 月のオープンに向けて夢は広がっています。

助産師の仕事は「ゆりかごから墓場まで」と言われます。乳幼児期、思春期、妊娠・出産、子育て、更年期、老年期…女性のライフサイクルに合わせて必要な支援を行うことを、藤原さんも意識しています。

「建物を建てちゃうなんて、これからどうなることかとドキドキしていますが、妊娠中から子どもが何歳になっても、女性が気軽に利用できて、体を休め、自分に向き合い、ほっとできる拠点になれば」

「お母さんは子どもが何歳になっても、ずっとお母さん。悩みは尽きません。はぐあすの活動を通して、『あなたは一人じゃないよ』『ずっと応援しゆうよ』ということをお母さんたちに伝え、長く支えていきたい。子育て支援のいい循環を高知につくっていきたいと思っています」

 

はぐあすの情報はインスタグラムフェイスブックで発信しています。

この記事の著者

門田朋三

門田朋三

小1と年少児の娘がいます。「仲良し」と「けんか」の繰り返しで毎日にぎやかです。あだなは「ともぞう」。1978年生まれ。

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