遊びながら防災力を高める「あそぼうさい」|危険を予測する、逃げる、物資を運ぶ…子どもへの伝え方を紹介します
「あそぼうさい」という聞き慣れないタイトルのイベントが、高知市内で開かれました。
企画したのは言語聴覚士で防災士の小寺晶愛さんと、「みやもっち体育」でおなじみの幼児体育講師・宮本忠男さん。「遊び」と「防災」を掛け合わせ、子どもたちが楽しみながら防災力を高めていく活動を始めました。
「危険を予測する」「逃げる」「物資を運ぶ」など、非常時に求められる判断や体の動きを、遊びながら身に付けていく方法を紹介します。
性別、年齢、発達の特性に関係なく、みんなで取り組める「あそぼうさい」
今回の「あそぼうさい」は 2023 年 4 月 8 日、高知市長浜の杉の子せと幼稚園で開かれ、園児や卒園生の親子が参加しました。
講師は、言語聴覚士で防災士の小寺晶愛さんと、幼児体育講師の宮本忠男さんです。
小寺さんは仁淀病院(いの町)で発達障害のある子どもたちの療育に携わりながら、「発達障害と防災」の発信を続けています。
災害時は誰もが不安になりますが、特性のある場合は不安がより強く、パニックも起きやすくなります。小寺さんによると、「発達でこぼこがある子どもは防災訓練も苦手」。サイレンなどの大きな音や、先生が真剣な顔になる場面が怖くて、「防災訓練の日は休む」という子もいるそうです。
「あそぼうさい」が目指すのは「差別なく、排除なく取り組める防災」。年齢や性別、発達のでこぼこなど、多様な子どもたちが遊びを通して、みんなで楽しみながら防災力を高めていくことを目指しています。
「お水を運ぶ」をゲーム形式で体験しました
「防災」と聞くと、被害想定や避難場所を把握する、備蓄をするといった項目が思い浮かびますが、小学校低学年ぐらいまでの子どもにはまだ難しいですね。
幼少期から身に付けていきたいのが「自分で判断し、危険を予測・回避する能力」です。イベントでは、みやもっち体育の「運動遊び」を取り入れながら、いざという時に動く経験をしていきました。
まず始めに挑戦したのが「お水運び」。災害で断水したら、給水車まで水を取りに行きます。
水はビニール袋に入れてからバケツなどに入れて運ぶと、ほこりが入らず、きれいに保てます。
イベントでは小寺さんが実物を見せて簡単に説明した後、子どもたちが実際に運んでみました。
一通り運び終わると、宮本さんが新しい遊びを追加していきます。
「攻撃をよけながらタイヤの上を歩く」という遊びには、「足場の悪い場所を移動する」「自分で危険を判断し、回避する」の二つの要素が含まれているそうです。
火事は赤い布、津波は青い布…イメージしながら体を動かしました
次に登場したのは、みやもっち体育でおなじみの大きな布。今回は真っ赤な布が登場しました。
「何に見える?」と小寺さんが尋ねると、子どもたちは「火!」。宮本さんは布を触って熱がりながら、「あちち!よけなきゃ!頭チリチリになるよ!」。なるほど、大事なことが言葉でも、視覚的にも理解できます。
ここでは、火をくぐって、園庭から園舎へと下り、園舎前に置かれたカードをゲットし、遊具をよじ登って再び園庭に帰るというミッションです。
続いては、青の布で「津波」をイメージ。段ボールやひもで阻まれた狭い場所をくぐり抜け、トイレにいる不審者に気を付けながらゴールに向かいます。
「タイミングを見定める」「走る」「よじ登る」「よける」「かがむ」など、災害時に求められる動きが遊びの中で自然と経験できることがよく分かりました。
過去の災害では、避難所のトイレで子どもが不審者に遭遇したという事例があったそうです。
「トイレで小さい子どもの後ろを大人がついて行ったら、『保護者だろうな』と思います」と小寺さん。お父さん、お母さんたちに「避難所が開設されて間もない期間はトイレが男女分かれていない場合があるので、注意してください」と呼び掛けていました。
いわゆる「防災訓練」とは違い、「あそぼうさい」は子どもたちの笑顔が絶えない時間でした。
防災に対して「怖い」というイメージが先行してしまう子どもも、遊びであれば自然と受け入れられます。「揺れたら物が落ちてくるよ」「危ないと思ったらよけてね」など、災害時に必要なことも日常でさりげなく、繰り返し伝えられます。
小寺さんと宮本さんは今後も「あそぼうさい」の活動を続けるそうです。ココハレでもお伝えしていきます。
ココハレでは発達障害のある子どもに必要な災害時の備えを紹介しています。