「男性の生きづらさ」とは?困った時に「助けて」と発信する大切さとは?俳優・高知東生さんが幼少期から振り返りました
高知市出身の俳優・高知東生さんは、自身の薬物依存経験から、依存症問題の啓発に力を入れています。
薬物に手を出した背景には「生きづらさ」がありました。生きづらさの一因には「ジェンダーロール(性別役割)」の呪縛があったそうです。
高知さんが人生でこだわり、苦しんできたのが「男らしさ」「女らしさ」。「男は女の 3 歩前を歩け」「女性は俺が守らなきゃ」「男が弱音を見せたら負け」…そんな価値観で生きてきました。
幼少期からの周囲の関わりがその後の人生に影響を及ぼしていくことが、高知さんの語りから分かります。困った時に「助けて」と発信できる大人に育てていくために、親はどう関わっていけばいいのか。子育てをする上でも大事なメッセージがたくさん詰まったインタビューです。
高知東生さんが語る男の生きづらさ「女を守る」「男は女の3歩前」 “男道”自省、自分の弱さ受け入れ楽に
(高知新聞Plus 2022 年 12 月 20 日掲載)
高知市出身の俳優、高知東生さん(57)は、2016年に覚醒剤取締法違反で逮捕された後、依存症の回復プログラムを続け、依存症問題の啓発にも取り組んでいる。積極的に発信するツイッターでは、薬物に手を出した背景となった自身の生きづらさの一因に「ジェンダーロール(性別役割)」の呪縛があったと明かしている。高知さんが苦しんだ「男らしさ」とは何だったのか、どう向き合ったのか。高知さんと、その回復を支えてきたギャンブル依存症問題を考える会代表の田中紀子さんに聞いた。
刷り込まれた理想像「男は女の3歩前を歩け」
――ツイッターで、自身の生きづらさの一因に「ジェンダーロール」を挙げている。どういうことか。
高知:薬物で全てを失い、俺が向き合わなきゃいけないことは何だろうと考えた。自助グループの仲間と出会い、(自分を見つめ直す)依存症回復プログラムをやって、自分の生きづらさに気付いた。入り口は薬物だけど、振り返ると、実は一番苦しめられたのは「男らしさ」「女とは」というジェンダーロールだった。
子どもの頃、たぶんばあちゃんだったと思う。「男は女の3歩前を歩け」と言われた。事故や不測の事態が起きたときは男が女性や子どもの前に出て犠牲になれ、と。それが女性や家族の守り方、男の理想像だと思ってたんだよね。
青春時代はバブル景気。当時は「アッシー」「メッシー」「みつぐ君」という言葉があふれ、ジェンダーロールがまかり通っていた。身長、学歴、収入が高い「3高」じゃないと男として認めない、みたいに言われ、余計に「男とは」を意識した。
妄想で自縄自縛「弱さを見せたら嫌われる」
――身に付けた「男らしさ」は、人生にどんな影響を与えたのか。
高知:俺が付き合った女性はみんな、自分の足で立てる人たちだった。でも「頑張りは分かるけど、男を立てろよ」と認めたくない自分がいた。(相手が仕事で結果を出すと)意味もない歯がゆさ、自分が負けてるんじゃないかって感情が生まれて、ときには怒りに変わった。女性はしっかり生きてるのに、勝手に「守らなきゃ」と重く感じて苦しくなって、相手から逃げたくなったこともある。
行き詰まった会社経営も、家族や信頼できる専門家に助言をもらっていれば道はあったのに、「男が弱音を見せたら負け」みたいな変な縛りで誰にも相談できなかった。家族に迷惑かけたくねえ、弱いとこ見せたら嫌われる、と思って。「女を守る」と言いながら、自分の妄想に縛られていた。
田中:高知さんは、奥さんも彼女もバリバリ活躍してる人だったのに、1人で「俺が守らなきゃ」と苦しんでいたんだよね。会社でも、経営の根幹に関わる問題を早くから忠告していた部下がいたのに、「女同士のいざこざ」だと見なして、ちゃんと話を聞いていなかった。
高知:妄想が知らぬ間に性格の一部になり、こういう運命になった。薬物も「やったことない、俺できない」って言うのは恥ずかしい、かっこ悪いと思って「全然いいよ」って(手を出した)。それも自分の「男道」だった。
インタビューでは、高知さんが「男らしさ」と「生きづらさ」の関係性に気付いたきっかけや、芸能界のハラスメントについて語っています。続きは高知新聞Plusでご覧ごらんください。
高知東生さんが語る男の生きづらさ「女を守る」「男は女の3歩前」 ”男道”自省、自分の弱さ受け入れ楽に
「男性の生きづらさ」「男らしさの病」について「男尊女卑依存症社会」の著者・斉藤章佳さんが語りました。こちらから