2022年夏、高知のよさこいはどうなる?チームや企業から「今年なければ、もうようやらん」との声が上がっています
新型コロナウイルスの影響で 2020 年、21 年と中止になった高知のよさこい祭り。22 年夏の開催がどうなるのか、注目が集まっています。
中止によって、鳴子や衣装を作る業者は経営が厳しくなり、チームの運営者は運営手法の継承に苦心しています。「今年なければ、もうようやらん」との声も上がっています。
今年の開催方法については、4 月末に開かれるよさこい祭振興会の総会で結論が出される見通しとなっています。
よさこい継承、限界近づく…連年中止で鳴子・衣装の業者「今年なければ廃業」学生チーム「経験者ゼロに」
(高知新聞 2022 年 4 月 9 日掲載)
2020年から2年連続で中止になっているよさこい祭りについて、チームや企業から「今年なければ、もうようやらん」との声が上がっている。鳴子製造や衣装など関係業者は廃業を検討し、学生チームを中心に運営手法の継承に苦心する。主催団体が高知市の県民体育館での代替開催を検討する中、通常に近い開催を望む声に切実さが増している。
「今年、通常通りの規模で開催されないともう持たない」
鳴子メーカーのやまもも工房(香美市)の公文佑典社長(44)が、がらんとした工房でうなだれる。主力製品の鳴子の出荷はこの2年間、9割以上も減っている。
祭りが戻ったときに備え、工場長はアルバイトを掛け持ち。鳴子以外の新製品も企画して工房を維持してきたが、毎月赤字が続いている。「熟練の職人を手放したら、高知ならではの高いレベルの鳴子が作れなくなる」。現在、クラウドファンディングで工房の運営資金を募る。
衣装製造のドリーム・カンパニー(高知市)も、売り上げ9割減が2年続く。伊与田修社長(70)は「借り入れた資金はほぼ使い切った。今年祭りがなかったら、うちも閉めざるを得ん」と肩を落とす。
県内でよさこい衣装を手掛ける縫製工場では、すでに廃業した所もある。
熱の低下懸念
今年も開催できなければ、3年間の空白ができる。関連産業だけでなく、チームを運営する手法の継承や「よさこい熱」の低下を心配する声も上がる。
特に影響が大きいのが大学生チームだ。コロナ前に祭りを経験した4年生は来年の祭りまでに卒業し、学内によさこい経験者はいなくなる。
早稲田大学のチーム「東京花火」は、1~3年生のメンバーは全員、高知のよさこいに来たことがない。3年の見ノ木杏夏(あんな)代表(20)は「地方車を作ったことがないし、各演舞場をどう回るかも分からない」と話す。
県内の学生チームも同様だ。高知大3年で「高知学生 旅鯨人(たびげいにん)」の前田琉乃介代表(20)は「入学以来ずっとコロナ下で、わずかに参加できたイベントは全てステージ。高知特有の、道路で前進する方式で踊ったことは一回もない」。
学生に限らず、踊り子の意欲低下を指摘する声も多い。三重県の「よさこい塾・ありがた屋」はコロナ前と比べメンバーが半分に減った。坪田信司代表(54)は「みんながキャンプとか、山登りとか、別の趣味を見つけてしまった。よさこいに帰ってきてくれるか不安」と話した。
「完全に近い形を」
主催のよさこい祭振興会は、今夏に通常開催ができなかった場合に備え、県民体育館での開催を検討する。昨夏に企画された高知市のりょうまスタジアムでの特別演舞=中止=と同様に、感染対策が取れる場所として設定した。
ただ、鳴子や衣装の業者は「県民体育館では踊り子が少ないことが予想され、受注数に響くため事業継続は厳しい」。学生チームも「祭りを経験しないと魅力を知る人が消え、チームもいずれ消滅する」とし、「少しでも通常開催に近い形を」と訴える。
一方、東京都や札幌市のよさこいイベントは、今年は開催を決めた。高知市の万々競演場を取り仕切る丁野信二さん(62)は「全国のよさこい関係者が高知の動向に注目している。何とか通常開催ができないか、最後まで知恵を絞るべきだ」と話す。
よさこい祭振興会に名を連ねる行政も、今年は開催に意欲的な姿勢を示す。浜田省司知事は8日の記者会見で、「次善の策としての代替案は理解できる」としつつ、「今夏こそ完全に近い形で実施したい。関係者の意欲をつなぐことは、空白期間が広がるほど厳しくなる」と述べた。
同振興会は4月末に総会を開き、開催方法の結論を出す見通し。判断の時が迫っている。(竹内悠理菜、海路佳孝)