地域とつながる子育て支援センターに|いの町「ぐりぐらひろば」
保護者会、ボランティア、高齢者との交流…子育て世代と地域をつなぐ「ぐりぐらひろば」
高知県内に 48 カ所ある「地域子育て支援センター」。主に乳幼児とその保護者が集う施設として、それぞれに活動しています。
吾川郡いの町の「ぐりぐらひろば」はその中でも、地域との交流に力を入れています。保護者会やボランティアの活動、高齢者との関わりなどを通して、子育て世代と地域とのつながりづくりを進めています。
高齢者も利用する施設
「ぐりぐらひろば」は1999年にオープン。当時は「育児コミュニティルーム」と呼ばれていました。翌年には平日は毎日遊び場を開放し、親子が集う場となりました。
場所はいの町総合健康センターの 1 階。高齢者向けの体操教室なども開かれる施設とあって、地域のお年寄りが普段から出入りしているのが、他の支援センターにはない特徴です。
スタッフの岩崎万里さんは「おばあちゃんが利用者の親子に『かわいいねぇ』と話しかけたり、おじいちゃんが『どっさり採れたき、お母さんらに分けちゃって』と柿を持ってきてくれたりします」。新型コロナウイルスの感染対策を取りながら、自然な交流を続けています。
ボランティアが育児支援
「ぐりぐらひろば」のもう一つの大きな特徴が「育児支援員」と呼ばれるボランティアの活躍です。子育て講座が開かれる際に親子の見守り支援をします。お母さんが子どもと少し離れ、リフレッシュするのに一役買っています。
高齢者との日常的な交流や育児支援員との関わりは、その親子を知っている人が地域に増えることにつながっています。「スーパーで会った時に声をかけてもらった」「近くに祖父母がいないので、お年寄りとの関わりがうれしい」。特に県外出身のお母さんたちにとって、心強い存在となっています。
保護者もできることを!いちごサークル
保護者も受け身ではありません。「ぐりぐらひろば」には「いちごサークル」と呼ばれる保護者会があり、有志で活動しています。保護者会活動も、県内の支援センターではあまりない取り組みです。
スタートは 2001 年。夏祭りや運動会、遠足、クリスマス会などを企画し、保護者同士の親睦を深めてきました。さらには、行政ができない資金集めも担当。町恒例の健康まつりでバザーを出店し、収益をおもちゃの購入費などに充ててきました。
サークルOBの中野登志子さんは中学 3 年生、小学 6 年生のお母さん。現在は育児支援員を務めています。「幼稚園に入園後、分からないことがあって困っていた時、ひろばで顔見知りになったお母さんが声をかけてくれました。いちごサークルはPTA活動で役立ちました」と当時を振り返ります。
今はできる範囲で
しかし、近年は参加する保護者が減ってきました。少子化に加えて、出産、育休を経て 1 年程度で職場復帰するお母さんが増え、少ない人数での活動に負担を感じる人も出てきました。
「もうやめた方がいいのでは?」。そんな声も上がりましたが、「活動が小さくなっても大事にしていこう」。大きな行事は見直し、「できる人ができる時にできることをする」と方針を変えました。現在、中心となって活動している宮沢恵さんは「サークルとして大きなことはできないけれど、ぐりぐらひろばと一緒に季節の行事などをしていきたい」と話します。
ココハレ編集部が取材した日は、クリスマス会に向けて準備をしていました。子どもたちが遊ぶ横で、宮沢さんと片岡恵さんがプレゼントを作っていきます。「いつも利用してくれているお母さんや、何かと助けてくださる地域の人に恩返しを」と宮沢さん。これも「できる人ができることを」の活動の一つです。
宮沢さんは 3 児のお母さん。小学 1 年生の長女を出産する前から、ぐりぐらひろばを利用しています。夫婦ともに県外出身。「誰の助けもない中、ぐりぐらひろばのおかげで子育ての仲間ができ、地域の人にも顔を覚えてもらいました。私たち親子はいろんな人に支えられて、ずっと見守ってもらっているなと感じています」
「ぐりぐらひろば」がオープンして 20 年余り。初代の子どもたちは成人し、中学生になった子どもが町の「乳幼児ふれあい体験」で訪れるようにもなりました。夏休みには「大きくなったよ」と遊びに来る小学生も。岩崎さんは「いろんな世代が交流し、少しでもほっとしてもらえる場にしていきたい」と話します。
子育て世代が安心して暮らすためには「地域とのつながり」が欠かせません。“ぐりぐら”ならではの取り組みを生かしながら、温かいつながりを育んでいます。
ぐりぐらひろばの対象は「主に未就学児の親子」となっていますが、夏休みなどの長期休みには小学生も利用しています。高知市などから訪れる親子もいます。詳しくはこちら。