「すぐにイライラ」「親と話したくない」「友達に腹が立つ」…思春期が始まった子どもにどんな言葉をかけたらいい?|助産師・細川真利さんが小学5、6年生に講演しました
幼い頃は「お母さん!」「お父さん!」とくっついてきたわが子。「そういえば、あまり話をしてくれなくなった」と親が感じ始めるのが、思春期に入る小学校高学年くらいからだそうです。
思春期は体も心も大きく変化します。「すぐにイライラする」「親と話したくない」「友達に腹が立つ」…さまざまな気持ちを抱えている子どもたちに、親はどう接したらいいのでしょうか。
助産師の細川真利さんが高知市の横浜新町小学校の 5、6 年生向けに行った講演から、ヒントを探りました。
目次
細川さんは地域で働く助産師です。高知市一宮東町 5 丁目の「このは助産院」を拠点に、産後ケアや、母乳や育児、抱っこやおんぶの相談などに対応しています。
保育園や幼稚園、学校での性教育にも長く取り組んでいます。2023 年には助産師の谷泰子さんと「いのちのおはなしキャラバン隊!土佐姉妹」を結成。性について親子で話すきっかけにしてもらおうと、体験を取り入れた親子向けの講座などを企画しています。
今回の講演会は 2024 年 6 月 21 日、高知市横浜新町 5 丁目の横浜新町小学校で、PTA人権講演会として開かれました。
参加したのは 5、6 年生と保護者たち。「私もあなたも大切な命~思春期に向かう君たちへ~」と題し、命の始まりから語られました。
命の始まりは?「この子はいらない」という人はいますか?
細川さんが子どもたちに見せたのが、精子と卵子の写真。「何の写真か分かる?」と問い掛けると、「精子」「卵子」とすぐに声が上がりました。今の子はちゃんと習ってるんですね。
精子は「男の人が持っている命のもと」、卵子は「女の人が持っている命のもと」。
「卵子と一つの精子が一緒になったら、受精卵になります。みんなはこの小さな細胞から始まり、今こんなに大きくなっています」
講演では、おなかの中の赤ちゃんの超音波写真や動画が紹介されました。
講演会の前に、5、6 年生にはアンケートに答えてもらったそうです。妊娠、出産に関して寄せられた質問がこちら。
「生まれた赤ちゃんを必要としない親はいますか?」という、ドキッとする質問。細川さんはこう答えました。
助産師としてたくさんのお産に関わってきた細川さんは、出産の様子を子どもたちに話しました。
「赤ちゃんが生まれると、お母さんのお胸で初めて抱っこしてもらいます。お母さんは『うれしい』と抱きしめます」
「みんなは元気に生まれて、お母さん、お父さん、周りの大人たちがいっぱいお世話してきたから、大きくなって、今ここにいます」
親を代表して、生後 6 カ月の子どもを育てる先生が「最近、パパになりました」と紹介されました。
「奥さんの妊娠はすごくうれしかったけれど、お父さんになる実感は全然湧かなかった」という先生。「子どもはとてもかわいい。泣いたらすぐに駆け付けるけど、先生が行ったら余計に泣きます」と話すと、子どもたちは笑顔に。
「みんなのおうちの人も、みんながかわいい。みんなが泣いたらすぐに駆け付けたと思います」「自分の子どもができて、命って大事だなと、あらためて思っています」
「お母さんに声をかけられただけでイライラする」と言われたら…
命の始まりにほっこりした子どもたち。「でも、みんなはいつまでも赤ちゃんじゃないよね」と細川さん。続いて、アンケートで寄せられた体の悩み、心の悩みを紹介しました。
「自分の体で気になること」はこちら。
- 周りの子より成長が速い、遅い
- 身長が伸びない
- 身長が高いのが気になって、猫背になる
- ニキビができる
- 周りの友達は生理が来ているのに、私は来ていない
「身長が伸びない」という声が多かったそうです。続いて、「自分の心で気になること」がこちら。
- すぐにイライラする
- お母さんに声をかけられただけで、イライラする
- イライラして、つい周囲に当たってしまう
- ちょっとしたことで悲しくなる、怒ってしまう
- 何でも心配になるし、緊張する
心では「すぐにイライラする」が断トツだったそう。「親に話しかけられただけでイライラする」と聞くと、「思春期の子育てって大変そう…」と思ってしまいます。
子どもたちの悩みを受け止めた細川さんは、こう語りかけました。
大人の体へと変化していく思春期には、脳から「成長ホルモン」がたくさん分泌されます。体の成長を促すホルモンですが、心にも影響するそう。
「思春期は体の変化に心が追いつかず、不安定になります」
「イライラするのは自分が悪いわけでも、親や先生、友達が悪いわけでもありません」
私たち大人は「思春期は不安定になるけれど、そのうち終わる」と知っています。でも、始まったばかりの子どもたちや真っただ中にいる子どもたちは、これまでになかったイライラに戸惑います。「ずっとこのままだったらどうしよう」と困っている子もいるそうです。
向き合う親は「うちの子は今、そういう時期」と受け止め、「あなたが悪いわけではない」「必ず終わりが来る」と伝えてあげたいですね。
小学生からスマホを持つ時代。「SNSで知り合った人と、会ってもいいですか?」
アンケートでは、友達についての声も寄せられました。
- 友達と仲良くなりたい
- 友達にどう思われるか気になる
- 本当にあの子と友達なのかな
- 私、嫌われてない?
- 友達はキレやすいけど、実は優しいと知っている
学年が上がると、わが子の友達関係も気になるところ。細川さんによると、思春期以降は「だんだんと価値観が変わり、『合わないな』という友達も出てくる」そうです。
友達について、こんな質問もありました。
小学生からスマホを持つ時代。連絡手段として便利な一方で、親が見えない、把握しきれないことも出てきます。これも心配の種の一つ…。
「本当の友達」とは?友達関係で悩む子どもに伝えたいこと
友達関係では「友達に腹が立つ」「何かいじわるしたくなる」などが「人には言えない悩み」として紹介されました。
親としては「相手の気持ちを考えなさい」「相手が嫌がることはしない」と教えたいところ。その前に、細川さんはこう問いかけました。
子どもたちからは「私」「自分」という声が上がりました。
例えば、「今日遊ぼう」と誘われたけれど、遊べない時。「誘いを断ったら嫌われるかも…」と心配して、自分の気持ちを言えない子もいるそうです。
細川さんは「体の傷と違って、心の傷は目には見えない」とも語りました。
「お友達は普通にしてるけど、実はつらくて泣きたい気持ちでいるかもしれない」
「心が大人になるということは、言葉を選べるようになるということ。みんなには、相手を傷つける言葉よりも、応援する言葉を選んでほしいと思います」
細川さんは講演の最後に、「みんな、お顔を見せて」と子どもたちに呼びかけました。一人一人の顔を見ながら「いい顔してるね!」。笑顔になる子どもたち、「ふーん」という顔をしつつもまんざらでもなさそうな子どもたちが印象的でした。
ココハレ編集部員の子どもは小学 3 年生なので、わが子の思春期はこれから。講演を取材しながら、小学校高学年は「大人に向かう変化がまだ始まったばかりの時期」なのだなと実感しました。
だんだんと親子の会話は少なくなっていくことを想定し、「私はあなたの話をいつでも聞く」というメッセージを今から発信していきたいと思いました。
ココハレでは 7 月 12 日(金)、子育てセミナー「ココトーク」を開催します。細川さんと谷さんによる「いのちのおはなしキャラバン隊!土佐姉妹」と一緒に、幼児期の性教育について考えます。
高知市でココトーク「おうちで始めるいのちのおはなし『赤ちゃんはどこから来るの?』にどう答える?」(高知新聞社)|ココハレが子育てセミナーを企画!性教育に取り組む「土佐姉妹」と考えます