「前転」につながる運動遊びとは?高校生と園児が「みやもっち体育」で交流しました
子どもの発達段階や気持ちに合わせた関わりを考える授業が春野高校で行われました
高校生が子育て支援について考えるユニークな授業が高知県立春野高校で行われています。12 月 1 日には杉の子せと幼稚園の園児たちを招き、幼児向けの体育「みやもっち体育」で交流しました。
高校生たちは園児とペアになり、前転につながる運動遊びを通して、子どもの発達段階や気持ちに合わせた関わり方を考えました。
目次
高校生は社会に出る前に、子育てについて学んでいます
春野高校(高知市春野町)には、衣食住や福祉に関わる仕事を目指す「生活クリエイト系列」があります。生活クリエイト系列の高校生は 2年生の家庭科で「子どもの発達と保育」を学んでいます。
3 年生では「子育て支援講座」という独自の科目があり、赤ちゃんとお母さんとの交流などを通して 2 年生での学びを発展させています。
今回の授業も「子育て支援講座」で行われました。春野高校を訪れたのは杉の子せと幼稚園(高知市長浜)の年中児たち。「お兄さん、お姉さんと遊べる!」と元気いっぱいです。
身体接触に制限がある中での「ふれあい遊び」とは?
授業を進めるのは幼児体育講師の宮本忠男さん。「運動嫌いの子どもをなくそう」と、遊びの要素を取り入れながら体の基本的な使い方を楽しく教える「みやもっち体育」を編み出し、県内の幼稚園や保育園で実践しています。
宮本さんが授業で設定したテーマは「園児とのふれあい運動遊び」です。新型コロナウイルスの感染対策で身体接触に制限がある中で、園児と気持ちを通わせ、つながることを目指しました。
高校生と園児が 2 人 1 組となり、まずは仲良くなるところから。ビニール袋を使ってキャッチやしっぽ取りをしながら、コミュニケーションを取りました。
園児たちは早くも大盛り上がり。しっぽ取りでは追いかけっこが続きました。
宮本さんは「幼児は、追いかければどこまでも走る。高校生のみんなはまだ走れるけど、子育てをする世代になると走れなくなる」。「捕まえるぞー!」と言って追い掛けなかったり、フェイントを掛けたり、反対側に走っていったり。体力を消耗せずに子どもを楽しませる“技”を紹介しましたが、そこは若い高校生たち。どこまでも追いかけ、園児たちを喜ばせていました。
「前転」と「でんぐり返し」の違い、知っていますか?
体が温まり、距離も縮まったところで、マット運動に移りました。宮本さんは「高校生、『前転』と『でんぐり返し』の違い、知ってる?」と質問。同じ前回りですが、でんぐり返しは回るだけ、回った後に立ち上がるのが前転だそうです。
前転につながる運動遊びがこちら。スポンジでできた長い棒を使うことで、ペアで息を合わせる体験もできました。
・高ばい…四つ足で膝を付けずに前に進む。前転を誘発する運動
・横転がり…それぞれが棒の端を持ち、丸太のように転がりながら進む
・ゆりかご…座って棒をおなかに挟み、ごろんと後ろに倒れて背中をマットに付けてから起き上がる
前転をする時に、背中を反らさずに後頭部から背中、お尻の順にマットに付けることを「順次接触」と言います。「ゆりかご」は順次接触を体験する遊びです。また、あごを引いておへそを見ることで、頭頂部ではなく後頭部をマットに付けて回ることができるそうです。
それぞれの課題が終わると、園児はポケモンのカードをゲット。棒を使って高校生と遊びました。
待ち時間では子どもの興味を引く方法を実践しました
今回の授業には園児 26 人、高校生 24 人が参加。課題ごとにできた待ち時間では、高校生と園児がおしゃべりしました。「飽きてきたかな…」というタイミングで棒を使った遊びを提案する高校生もいました。先生の話を聞く時間になると上手に気持ちを切り替えるなど、臨機応変に対応していました。
授業が終わると、園児たちは名残惜しそうに「また遊んでね」とハイタッチ。杉の子せと幼稚園の岡則明園長は「高校生が園児を大事に扱ってくれているのが分かった。子どもが普段見せない笑顔を引き出してくれました」と話していました。
子どもたちの「私を見て」を大切に
園児が帰った後、宮本さんは高校生に語り掛けました。
みやもっち体育で関わる幼児の中には「何でこんなことせないかんの?」と話す子どももいるそうです。ですが、しらけているように見えても、子どもたちの心にはやはり「私を見て」という気持ちがあるそう。
「子どもの心をつぶすのは簡単。無視して否定すればいいんです。そうしないためにどうやって関わっていくか」「『つながる』にはいろいろな方法がある。幼児のことを理解し、タイミングを合わせるのも一つの『つながる』です」
目の前の子どもの気持ちを理解するためにコミュニケーションを取り、けがのないように配慮しながら遊んだ高校生たち。「子どもと一緒に楽しい時間を過ごしたい」という一生懸命な姿勢には、子育て世代にも学ぶところがたくさんありました。