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発達障害の「早期発見・診断」とは?|高知県内の専門家に聞く「発達障害を知ろう」②

発達障害の「早期発見・診断」とは?|高知県内の専門家に聞く「発達障害を知ろう」②

発達障害の見極めから診断までの流れについて、JA高知病院・本浄謹士先生に聞きました

子育てで気になる子どもの成長や発達について、高知県内の専門家に聞く「発達障害を知ろう」。この記事では、発達障害の早期発見から診断までについて、高知県内の現状を紹介します。

高知県では、子どもの特性や苦手なことを見極める際に「ESSENCE(エッセンス)」と呼ばれる視点を活用し、必要な支援や医療につなげています。JA高知病院(南国市)の小児科医・本浄謹士さんに聞きました。

 

※2021 年 6 月 15 日、JA高知病院の情報を更新しました。

 

本浄さんはJA高知病院の小児科医長です。小児科診療の中で、子どもの発達相談や発達障害の診療に取り組んでいます。

子どもの「苦手」を早めに知る 大切な1歳6カ月、3歳児健診

発達障害を知ろう①」では自閉症スペクトラム障害、ADHD(注意欠如多動性障害)、LD(学習障害)、発達性協調運動障害の特性を紹介しました。特性は、幼い頃からはっきりと出ている場合もあれば、「何か気になるな」という程度、そして全く気付かれていない場合もあります。「できるだけ小さいうちに苦手なことを知って対応を始めることで、子どもも親も無理なくスキルを身につけることができる」と本浄さんは説明します。

「何か気になるな」を専門家が早めにキャッチする場の一つが乳幼児健診です。市町村が行う 1 歳 6 カ月児健診と 3 歳児健診は全ての子どもが受診するように、法律で定められています。身体計測、問診、歯科診察、小児科診察を通して、子どもが順調に成長しているか、病気や障害がないかどうかを見極めていきます。

発達に関しては「『子どもができないことを指摘される場』と誤解している親御さんがいますが、違いますよ」と本浄さん。「健診は得意なことも苦手なことも引っくるめて、子どもの成長の過程を知る大切な場です。苦手なことを早めに知り、うまく子育てをするための入り口と考えてください」

市町村によって違いはありますが、健診には医師や保健師のほか、歯科医師、歯科衛生士、栄養士、言語聴覚士ら子育て支援の専門家がいます。子育てで知りたいことや気になることを相談できる場でもあります。

 

1 歳 6 カ月児健診、3 歳児健診は「うまく子育てをするための入り口」です。子育ての相談もできます

ESSENCEとは?兆候を放置しないことが大切です

健診には問診があり、主に保健師が担当します。子どもと保健師が向かい合って座り、物の名前を聞いたり、積み木をしたりします。出された指示を理解しているか、指先の運動ができているかどうかなどを見ていきます。

その際に大事にされているのが「ESSENCE(エッセンス)」と呼ばれる視点で、児童精神医学の研究で知られるスウェーデンのクリストファー・ギルバーグ博士が提唱しました。高知県には「高知ギルバーグ発達神経精神医学センター」という機関があり、ギルバーグ博士が発達障害の早期発見・支援や専門医の養成に協力しています。

本浄さんはセンターの研究員としてギルバーグ博士からESSENCEを学び、講演会などを通して、高知県内の保育士や保健師に見極め方を伝えています。

2017年に行われた講演会。本浄さんがESSENCEを紹介しました
2017年に行われた講演会。本浄さんがESSENCEを紹介しました

ESSENCEでは「乳幼児の発達で気になる兆候」として 12 項目が紹介されています。診断名ではなく、「神経精神発達障害のある子どもたちの早期の状態を表す名称」とされています。

 

【ESSENCEの 12 項目】※例は一部です。年齢は目安です

①発達全般…コップから飲む、年齢に応じたおもちゃで遊ぶ、なぐり書き( 1 歳 6 カ月)、排泄の自立、見立て遊び、閉じた丸を書く( 3 歳)

②運動発達…平たいところを転ばず歩く( 1 歳 6 カ月)、走る、両足跳びをする( 3 歳)

③感覚反応…抱っこやスキンシップ、音、光、匂いなどに過敏?鈍感?

④コミュニケーション…人に要求できる、言葉の理解

⑤活動…活動的過ぎる、自発的な動きが少なくておとなし過ぎる

⑥注意…名前を呼んだ時に反応するか、集中力があるか

⑦社会的な交流…感情を出しているか、他の子どもに興味・関心があるか

⑧行動…同じ行動を繰り返すことがある、日課や決まった手順にこだわる

⑨気分…気分の変動の幅が大きい、急に泣く・怒る、かんしゃくが激しい

⑩睡眠…睡眠時間が短い、入眠までに時間がかかる

⑪食事…極端な好き嫌い、食べることに興味がないように見える

⑫発作…視線が固定して動かなくなる、突然奇妙に手足を動かす

 

乳幼児期は特性がはっきりと現れていない場合や、年齢的に判断が難しい場合があります。ESSENCEは診断前に支援を始めるきっかけになります。大切なのは兆候を見逃さないこと、そして「様子を見よう」と放置しないことだそうです。

本浄さんは保健師や保育士が参加する講演で「発達障害の診断のあるなしにかかわらず、兆候が一つでも見られたら子どもと家族への支援を始めてほしい」と呼び掛けてきました。乳幼児期の子どもを見る視点として、高知県内に徐々に広がっています。

ESSENCEは「いろいろな立場の人がいろいろな場面で活用できる項目」として、質問紙が高知県のウェブサイトで公開されています。家庭で気になることがあったら、市町村の保健師に相談してみてください。

 

発達障害の診断のある・なしにかかわらず、「気になる兆候があれば支援をスタートするべき」とされています。

「即、医療へ」というケースはほとんどありません

子どもに気になる兆候が見つかった場合、「『即、医療へ』というケースはほとんどない」と本浄さんは話します。多くの場合、市町村の担当者が保護者の話を聞きながら経過を見ていき、「より専門的に」という場合に医療機関が紹介されます。もちろん、保護者が医療機関に直接予約を取って受診する場合もあります。

子どもの発達障害を診療するのは主に児童精神科医や小児科医です。JA高知病院の発達相談では、本浄さんが診察室で子どもの様子を観察しながら、保護者の話を聞きます。市町村を通している場合は、健診の結果や保育園からの報告も参考にしながら、「子どもの状態像を固めていく」そう。その上で、子どもの苦手なことを保護者に説明し、困った時の関わり方などを具体的にアドバイスしていきます。「初診で発達障害の診断をすることはまずありません」

その後は、医療機関での診察は数カ月に 1 度のペースになります。診察と診察の間の期間は保健師や保育士と連携しながら、必要な支援に取り組みます。

高知県内では、発達障害を診療する専門医の不足が指摘されています。過去には診断待ちの長さが問題になった時期もあり、「医師を増やすべきだ」という議論にもなりました。しかし、本浄さんは「発達障害の支援は医師にしかできないというものではなく、専門職が連携して取り組むもの」と説明します。

「発達障害では診断名を付けるよりも、子どもの苦手なことを見極めて困らないように対応していくことの方が大事です。薬の処方など、医師にしかできないことはありますが、医師はピラミッドのトップではなく、支援の共同体の一つなんですよ」

 

発達障害は「診断」よりも、苦手なことを見極めて困らないように対応していくことが大事です

 

発達に遅れや偏りがある場合、必要に応じて「療育」が始まります。高知県立療育福祉センター(高知市)について、「発達障害を知ろう③」で紹介します。

 

 

JA高知病院小児科の発達相談は月曜日午後と水曜日です。希望する人は電話で予約してください。

【JA高知病院】

  • 住所:高知県南国市明見字中野 526-1
  • 電話:088-863-8544(電話での問い合わせは平日 13:30~16:30 の時間帯で対応します)

この記事の著者

門田朋三

門田朋三

5歳と2歳の娘がいます。「仲良し」と「けんか」の繰り返しで毎日にぎやかです。あだなは「ともぞう」。1978年生まれ。

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