喉が赤くなり、痛みます|「教えて!吉川先生」A群溶血性連鎖球菌咽頭炎
子どもの病気やけがについて、ココハレかかりつけ小児科医・吉川清志先生が解説します
子どもの急な発熱に「さっきまで元気だったのに…」と焦ったり、病気やけがについてインターネットで調べて、「本当に正しい情報なの?」と迷ったりした経験はありませんか?
「教えて!吉川先生」では、高知県内でたくさんの子どもたちを診察してきた小児科医・吉川清志(きっかわ・きよし)さんが「ココハレかかりつけ小児科医」として、子どもの病気やけがについて解説します。
今回は「A群溶血性連鎖球菌咽頭炎」。症状や治療方法を聞きました。
「教えて!吉川先生」はこちらから
「A群溶血性連鎖球菌咽頭炎」とは?
「A群溶血性連鎖球菌」という細菌が喉に感染して炎症を起こす病気で、「咽頭炎」のさまざまな症状が出ます。
「A群溶血性連鎖球菌」の「溶血性」は「毒性が強い」ということを表しています。そして、細菌が丸い形で連なっているので「連鎖球菌」です。「レンサ球菌」とカタカナで表記されることもあります。連鎖球菌には多くの種類があり、人に感染するのは主に「A群」と「B群」です。
主な症状は、喉の痛みです。普通の風邪よりも喉が赤くなり、痛みから飲み込みにくくなります。高熱が出る場合もありますが、微熱でも喉の痛みが強い場合もあります。咳や鼻水はあまり出ません。
菌が喉全体に広がると、扁桃炎(へんとうえん)を起こします。さらに扁桃腺の周囲や喉の奥まで感染が広がると、熱が高く症状が強くなり、入院治療が必要です。
喉以外の症状は?
溶血性連鎖球菌は略して「溶連菌」と呼ばれます。溶連菌が感染する場所は主に喉と皮膚です。溶連菌が喉に感染し、発疹が出る病気が猩紅熱(しょうこうねつ)です。
「猩紅熱」では、咽頭炎の症状に加えて、発疹が出ます。発疹は主に体に出て、皮膚が全体に赤くなります。その中に小さなぶつぶつがあり、サンドペーパー(紙やすり)のようになります。また、顔が赤くなり、口の周りが白くなります。舌がぶつぶつと点状に赤くなり、イチゴのように見えるため「いちご舌」と呼ばれます。
どうやって感染しますか?
咽頭炎の場合は飛まつ感染です。皮膚には接触感染します。
皮膚には伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん=とびひ)や蜂窩織炎(ほうかしきえん)など、皮膚の化膿を起こします。
流行する時期は?
流行する時期ははっきりとはありませんが、夏休み明けから秋にかけて少し減り、冬から春にかけて増える傾向があります。1 年を通して大きな変動はありません。
どの年代に多い?
5 ~ 15 歳の小児に感染しますが、小学校低学年の感染が最も多いです。3 歳未満の乳幼児にはまれな病気です。
治療方法は?
この病気を疑った場合は、綿棒で喉の細菌を調べる検査をします。検査結果は 10 ~ 15 分で判明し、陽性と診断後はペニシリンの抗生剤を服用します。
ペニシリンは溶連菌に有効で、10 日間飲みます。内服期間が長いのは、免疫の異常によって約 1 ~ 3 週間後に、非常にまれに起きる急性糸球体腎炎やリウマチ熱を防ぐためです。処方された薬は飲み切ってください。
薬を飲み始めて 24 時間以上経過し、解熱していれば登校・登園してかまいません。
予防方法は?
溶連菌は、喉と皮膚以外にも体のさまざまな場所に感染します。重い症状を引き起こすこともあり、甘く見てはいけない病気です。ワクチンがあればいいのですが、菌の種類が非常に多いため作るのが難しく、実現していません。
予防方法は特にありませんが、主に感染する場所は喉と皮膚で、重症化することはまれですので、手洗いなど通常の感染対策をして、普通に生活をしてください。きょうだいが感染した場合は離れて過ごしましょう。
吉川先生より「多くの子どもがかかる病気です」
「A群溶血性連鎖球菌咽頭炎」は多くの子どもがかかる病気です。有効な予防方法はありませんが、よく効くお薬があります。診断後は医師の指示に従って 10 日間きちんと薬を飲ませてください。
保育園や幼稚園、学校でもよく流行します。正式な病名以外に、「溶連菌咽頭炎」とも呼ばれています。受診の際に医師に伝えてください。「溶連菌咽頭炎」と診断されたら、保育園や学校に報告してくださいね。