「教えて!吉川先生」新型コロナウイルスとインフルエンザ|2022~23年の秋冬、同時流行はある?「全数把握」の簡略化、陽性者フォローアップセンターも紹介します
子どもの病気やけがについて、ココハレかかりつけ小児科医・吉川清志先生が解説します
子どもの急な発熱に「さっきまで元気だったのに…」と焦ったり、病気やけがについてインターネットで調べて、「本当に正しい情報なの?」と迷ったりした経験はありませんか?
「教えて!吉川先生」では、高知県内でたくさんの子どもたちを診察してきた小児科医・吉川清志(きっかわ・きよし)さんが「ココハレかかりつけ小児科医」として、子どもの病気やけがについて解説します。
今回のテーマは「新型コロナウイルスとインフルエンザ」。2022~23 年の秋冬は「コロナとインフルの同時流行」の可能性が指摘されています。流行の予測や、ワクチン接種について聞きました。
9 月 26 日から始まった感染者の「全数把握」の簡略化や、陽性者フォローアップセンターについても紹介します。
「教えて!吉川先生」はココハレの「病気・けが」からご覧いただけます
目次
コロナの第7波は落ち着いてきましたが、感染者はまだまだ多い状況
新型コロナウイルスの第 7 波はようやく落ち着いてきました。夏休みの人の動きに、オミクロン株の感染力の強さも相まって、大きな波ができました。
高知県内も 1 日の感染者数が 2000 人を超えた頃から比べると、現在は少なくはなりましたが、100~300 人台というのはまだまだ多い状況です。
次の“第8波”は起こる?
感染者が増える要因の一つが人々の生活面。これまでの傾向から考えても、人の動きが増え、普段会わない人と会う機会も増える「春休み・年度末・年度始め」「夏休み・お盆」「冬休み・年末年始」に感染の大きな波ができました。
今年の年末年始も、大きな波になるかどうかは分かりませんが、感染者数は増えるのではないかと予測されます。
インフルエンザとの同時流行はある?
日本のインフルエンザの流行予測は、夏の南半球での流行を参考になされてきました。2022 年はオーストラリアで流行し、2017 年、2019 年と同じような流行のピークができました。 2020 年と 2021 年には流行はみられていません。
日本でもコロナの感染拡大が始まった2020~21 年シーズン、2021~22 年シーズンには流行がなく、乳幼児を中心に日本人のウイルスに対する集団免疫が落ちていることが懸念されています。
加えて、10 月以降、海外からの入国制限がさらに緩和されることから、人の移動が活発になり、インフルが流行する可能性が指摘されています。
インフルの流行と、コロナの“第 8 波”が重なった場合、同時流行となります。
インフルのワクチンはいつまでに?
インフルエンザは日本では例年、12 月末から 1 月初めに流行が始まり、1 月末から 2 月初め頃に流行のピークを迎えます。接種完了時期として毎年、「遅くとも 12 月初めごろまでに接種を終えて、12 月末から 1 月には免疫ができているようにしましょう」と呼び掛けてきましたが、今年は早めた方がいいかもしれません。
というのも、オーストラリアでの今年の流行は、5 月から 6 月にかけてピークを迎えました。例年のピークは 7 月から 9 月ですので、2~3 カ月早まったことになります。「日本で流行すれば、ピークも早まるのではないか」と懸念しています。
予測は難しいのですが、今年は 11 月中に接種を終わらせておくのがよさそうです。
コロナ「全数把握」の簡略化で気を付けることは?
国の方針で、2022 年 9 月 26 日から、感染者の「全数把握」が簡略化されました。医療機関が保健所に出す「発生届」の対象は、これまでの「全員」から、次の 4 分類に限定されます。
- 65 歳以上の高齢者
- 入院が必要か、必要が生じる可能性のある人
- 重症化リスクがあり、コロナ治療薬や酸素の投与が必要な人
- 妊婦
これ以外の人は、県の「陽性者フォローアップセンター」に自分で情報を登録することになります。登録はウェブサイトか電話で行います。
これまであった保健所からの連絡はなくなり、発熱外来などで渡される配布用紙が療養証明書となります。また、「陽性者フォローアップセンター」に登録した場合、そこから療養証明書を取得できます。
子育て中のご家庭の多くが、自分で登録することになるでしょう。体調が悪化した際には、フォローアップセンターに問い合わせると、受診できる病院を案内してもらえますので、必ず登録してください。
感染者数をできるだけ抑えていきましょう
オミクロン株は感染力が強い一方で、肺炎など重症化する割合は低いのが特徴です。子どもは症状が軽いことが多いですが、それでも感染者数が増えると、重症化する人も増えていきます。ですので、感染者数をできるだけ抑えていくことが大切です。
コロナもインフルも、飛まつ感染に関しては、対策は同じです。屋内や、屋外で人と近い距離で接する場合は、これまで通りマスクを着用してください。人と距離が取れる場合は外して構いません。もうしばらく、これまで通りの感染対策を続けましょう。
ワクチンについては、コロナもインフルも、「発症を防ぐ」よりも「重症化を予防する」ことが最も大きな効果となっています。「重症化」や「ごくまれに起こる重い合併症」をどう考えるかはそれぞれの判断になります。加えて、コロナワクチンは後遺症の頻度を下げるとも言われています。
5~11 歳のコロナワクチンについても、国が予防接種法の「努力義務」としました。これは国内で接種をある程度進めた上で、副反応などのデメリットよりも、重症化予防などのメリットが上回っていると国が判断した結果ということです。
日本小児科学会も、健康な子どもへの接種を「意義がある」から「推奨する」と変更し、評価しました。接種を考える際の参考にしてください。