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子どもを怒鳴ってしまう、たたいてしまう…「虐待」を防ぐため子育て中の親が知っておきたいこと

子どもを怒鳴ってしまう、たたいてしまう…「虐待」を防ぐため子育て中の親が知っておきたいこと

子どもを怒鳴りたくない。でもイライラして感情を抑えられない。どうすればいい?JA高知病院の本浄謹士先生に聞きました

子どもの食事、着替え、寝かしつけ…。毎日の子育てでは一つ一つのことに時間がかかったり、言うことを聞いてくれなかったり、想定外の行動を取られたり。うまくいくことばかりではありません。

子どもをたたくなどの体罰や、心を傷つける行為は「しつけ」という理由でも法律で禁止されています。ですが、理想通りにいかないのが子育て。ココハレの読者からも「子どもにイライラする」「怒鳴りたくないのに怒鳴ってしまう」という声が寄せられています。

感情的にならずに子どもと接するにはどうすればいいのでしょうか。児童虐待を防ぐために親が知っておきたいことについて、JA高知病院(南国市)の小児科医で、発達障害の診療でも知られる本浄謹士さんに聞きました。

※ 2022 年 2 月 18 日更新。JA高知病院の情報を修正しました。

 

本浄さんは南国市にあるJA高知病院の小児科医長です。小児科診療の中で、子どもの発達相談や発達障害の診療に取り組んでいます。南国市と香美市の乳幼児健診を担当し、学校や保育園・幼稚園、行政とも連携しながら子どもと保護者への支援を進めています。

この記事は「高知オレンジリボンキャンペーン 2021 」で 11~12 月に配信された本浄さんの講演と、インタビューを基に構成しました。

児童虐待とは?海外では「マルトリートメント」「ACE」と捉えられています

はじめに、児童虐待の定義について。日本では以下の四つに分類されています。

・身体的虐待:殴る、蹴る、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、おぼれさせるなど

・性的虐待:子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る・触らせるなど

・ネグレクト:家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、受診させないなど

・心理的虐待:言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に暴力を振るうなど

 

四つに分類されていますが、「これらの行為は全て、子どもの心を傷つける心理的虐待に含まれる」と本浄さんは説明します。

 

海外では、虐待は子どものトラウマや逆境的な状況に含まれるものとして、広く、具体的に捉えられています。「不適切な養育」と訳される「マルトリートメント」や、「小児期の不利で逆境的な経験(adverse childhood experiences)」の頭文字を取った「ACE(エース)」です。

ACEには「虐待」「ネグレクト」に加え、「家庭機能不全」という項目があります。親の精神疾患、DV、離婚・別居、関係者の投獄、薬物依存が当てはまります。

「学校でのいじめや、自然災害を加えている論文もある」と本浄さん。「子どものトラウマや逆境を示す言葉はたくさんあります。つまり、世界各国で問題視されているということです」

健康、経済、社会的問題…虐待の影響は成人後も続きます

子どもへの虐待がなぜいけないのでしょうか。本浄さんは虐待を「子どもに対する最も重大な権利侵害」と説明します。

虐待を受けた子どもに起こり得る問題は以下になります。

・自尊心、自己肯定感の阻害:怒られ続けるということは「あなたがあなたであっちゃ駄目」というメッセージを浴びせられ続けるということ

・うまくいかない対人関係:虐待によってコントロールされた結果、相手を力でコントロールする、相手に取り入って関係を築くようになる

・発達の阻害:家庭内での適切な会話や楽しい遊びが経験できないと、感情の調整や計画性、優性順位をつけるなどの能力が育ちにくい

・世代間連鎖:怒鳴られる、殴られるのが当たり前になると、自分が親になった時にこれ以外の育て方が分からなくなり、受け継いでしまう

・医学的、心理的、社会的問題:精神疾患、慢性疾患、低収入や離職のリスクが高まることが海外で指摘されている

 

日本では 2020 年に改正児童虐待防止法が施行され、親権者らによる子どもへの体罰禁止が盛り込まれました。たとえ「しつけ」であっても、次のような行為が禁止されました。

【体罰の具体例…厚生労働省の指針より】

・注意したが言うことを聞かないので、頬をたたく

・いたずらしたので長時間正座させる

・友達を殴ってけがをさせたので、同じように殴る

・物を盗んだのでお尻をたたく

・宿題をしなかったので夕飯を与えない

 

「おまえなんか生まれてこなければよかった」などの「暴言」は、冗談でも、子どもの権利を侵害し、心を傷つける行為とされています。

子どもに対して腹が立つのは、当然のことです

虐待が子どもに及ぼす影響や、体罰禁止などの法律を紹介しました。「子どもを怒鳴ったり、たたいたりすることはよくないことだ」と分かっていても、毎日子どもと向き合う中でうまくいかないことは起こります。ココハレには「感情をコントロールできなかった」という声も寄せられています。

「親は神様でも仙人でもなく、人。腹が立つのは当たり前です。親御さんから話を聞いていると、『そりゃ実際、腹も立つよねぇ』と思います」と本浄さん。

本浄さんの外来では「子どもをたたいてしまった」「どうやって育てたらいいか分からない」と打ち明けるお母さんがいるそうです。

「子どもをたたいた母親は悪い母親、駄目な母親なのでしょうか?子どもはたたかれているかもしれないが、今までそれなりに生きてきている。子どもが生きているということは、お母さんが日々頑張って子育てをしているということなんです。頑張っているけれどうまくいかず、やり方が分からなくなり、たたく。その結果だけを見て『悪い母親』『駄目な母親』と判断するのは違うと思います」

本浄さんにとっての「虐待予防」は、親が気軽に相談できる社会をつくること。「『子育てがしんどい』『どうしてもうちの子をたたいてしまう』ということを隠さずに言えて、支援につながることが一番大事だと思います」

イライラを防ぐために…まずは優先順位を決めましょう

では、親はどのように子どもに接するといいのでしょうか。本浄さんが自身のエピソードを教えてくれました。

次女が年中児だった時に、説教を始めた本浄さん。「理由はもう忘れましたけどね、腹も立って長々と言い聞かせました」。気付くと、次女は何と寝ていたそう。「子どもにはその年齢なりの理解力しかないので、怒ったり、こんこんと説教しても意味がない」と悟ったそうです。

子どもにイライラしないために有効なのが、優先順位を決めることです。

例えば、忙しい朝の準備。「早く着替えて」と何度も声を掛けても進まず、イライラ。このままでは遅刻してしまう…という場面では「親として何を一番達成したいか」を考え、行動を絞るといいそうです。

【保育園に遅刻しないように早く着替えてほしい】

・遅刻したくない→時間をかけないように、親が着替えさせる

・自分で着替えてほしい→着替えの時間を長く確保し、褒めて促す

 

「時間がない」とイライラして怒ってしまうくらいなら、「親がさっさとやってあげたらいいですよ」と本浄さん。着替えを手伝うことは「甘やかし」につながりそうな気がしますが、「子どもがスキルとして着替えることができるのなら、大丈夫。そのうち自分でやるようになります」。

 

子どもに多くを望むのは、イライラのもと。毎日の生活での優先順位を決めましょう

言葉に感情を乗せず、低い声で淡々と伝えましょう

子どもの褒め方にはこつがあります。ココハレ編集部員が悩んでいる「何度言っても歯磨きをしてくれない」を例に対応を聞きました。

本浄さんのおすすめは「低い声で淡々と伝える」「行動の変化を見逃さない」の二つです。

【子どもに遊ぶのをやめて、歯磨きをしてほしい】

親は「歯磨きをします」と声を掛ける。低い声で、淡々と

子どもが無視して遊び続けても、感情的にならない。「歯磨きをします」と繰り返し、行動の変化を待つ

「もう、お母さんってば、同じことばっかり言う」と子どもが発言する=好ましい行動の変化!

「あっ、お母さんの話を聞いてたね」と行動の変化を褒める

子どもがちょっと気をよくし、洗面所に近づく=さらなる行動の変化!

「洗面所に行った。すごいね」とさらに褒める

 

ココハレ編集部員のようにイライラを募らせ、「どうしてさっさと磨けないの!」「毎日同じことを言ってるでしょ!」と怒ってしまうのは、子どもの自己肯定感を下げてしまうのでNG。「遊ぶのをやめて歯磨きをする」という目標を達成するため、好ましい行動にのみ注目して褒めていきます。

これは「ペアレント・トレーニング」「ペアレント・プログラム」で取り入れられている手法です。親としてはかなりの忍耐力が必要ですが、「怒って後で自己嫌悪に陥るよりも、『できたできた!』『すごいすごい!』と褒めていく方が結果的にうまくいきますよ」と本浄さん。

「言葉に感情を乗せると、子どもに伝わります。怒りたくなっても、『話を聞かずに遊び続ける』といった好ましくない行動には反応しないようにしてください」

発達の特徴や脳のタイプから「育てにくい子ども」もいます

怒鳴ること、たたくことを回避するため、「子どもを褒める」「子どもへの要求水準を下げる」などを親なりに取り入れても、うまくいかないことはあるそう。「発達の特徴や脳のタイプから、『育てにくい子ども』はいる」と本浄さんは説明します。

本浄さんが所属する「高知ギルバーグ発達神経精神医学センター」と高知県は、子どもの成長が気になったり「育てにくい」と感じた時に参考になるリーフレットを作っています。ココハレの「発達障害を知ろう④」で紹介しています。

「『やめなさい』『頑張りなさい』と伝えてやめられる、できるようになる場合ばかりではありません。『座りなさい』と言って座らないのであれば、『どうして立ち歩くのか』という理由にアプローチする必要があります」

あれこれ試してみてうまくいかないなら、専門家にアドバイスを求めるのも一つの方法です。「今は相談先がいろいろありますが、支援者も人なので相性があります。自分にしっくりくる支援はどこかにあるので、諦めずに探してみてください」

今のやり方に「楽にできる方法」をプラスしてきましょう

「きちんとしつけができていない」「親ならうまく育てて当たり前」「わが子を怒鳴ったり、たたくなんてとんでもない」…。時にそんなプレッシャーも感じる子育て。「虐待者は母親が多いんです。頑張ってもうまくいかないお母さんに対し、世の中の目は厳しい。世のお母さんは損をしているなと感じます」。本浄さんはそう語ります。

怒鳴ってしまう、たたいてしまうという場合でも「今までの子育てが駄目だとか、間違っているというわけではなく、その保護者なりに子どものとの付き合い方を工夫している」とのこと。

「私たち支援者は、お子さんについて親御さんに教えてもらいながら、よりよい方法を考えていきます。一人で頑張らないで、今までのやり方に、もうちょっと楽にできる方法を一緒にプラスしていきましょう」

 

JA高知病院小児科は発達相談を月曜日午後と水曜日に行っています。完全予約制です。

【JA高知病院】

  • 住所:高知県南国市明見字中野 526-1
  • 電話:088-863-8544(予約センター)

初めての方はまず電話でお問い合わせください。予約センターの番号で、平日 13:30~16:30 の時間帯で対応しています。

この記事の著者

門田朋三

門田朋三

小1と年少児の娘がいます。「仲良し」と「けんか」の繰り返しで毎日にぎやかです。あだなは「ともぞう」。1978年生まれ。

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