「あなたが大切」と伝えたい・16年目のポッケ③|あなたにもお友達にも気持ちがあります
四万十町認定こども園「たのの」で16年続く命の学習「カンガルーのポッケ」。命の大切さを伝え、自己肯定感を高めていくヒントを紹介します
高知県四万十町大正の認定こども園「たのの」で 16 年続く命の学習「カンガルーのポッケ」をココハレ編集部が 1 年間密着しました。子どもに命の大切さを伝え、自己肯定感を高めていくヒントを探る 5 回の連載です。
第 3 回は「あなたにもお友達にも気持ちがあります」。子どもたちはさまざまな表情を見ながら「どんな顔かな?」と考えることで、自分の気持ちに気付き、友達の気持ちを想像することを学びました。
これはどんな顔?表情を描いた絵から、気持ちを想像しました
性教育や命の教育では、「自分を大切にし、相手も大切にする」ということを繰り返し伝えていきます。
そもそも「大切にする」とはどういうことなのか。カンガルーのポッケでは 11 月、「自分の気持ち・友達の気持ち」をテーマに考えました。
この日、「たのの」を訪れたのは四万十高校の 3 年生。「子どもの発達と保育」という家庭科の専門科目を選択している 4 人です。10 月に続くお兄さん、お姉さんの登場に、子どもたちの目が輝きます。
「気持ち」を考えるきっかけに選ばれた絵本は「おこる」。毎日怒られてばかりの男の子が主人公でした。「なんで怒るのかな?」「今日は『なぜかな?』を考えてみましょう」。園長の門田清子さんが園児たちを導き、高校生の登場です。
高校生は絵本「かおかお どんなかお」を使い、園児たちに質問していきました。
「これ、どんな顔か、みんな分かるかな?」
「楽しい顔!」「笑ってるから!」
「どんな時に、こんな顔になる?」
「うれしい時!」
前回の「『大きくなる』ってどういうこと?」もそうでしたが、クイズ形式となると、園児たちは盛り上がります。
「悲しい顔は、どんな時になる?」
「お友達が遊んでくれんかった時」
「たくましい顔は?」
「きんにくもりもりー!」
一生懸命考える子どもたち。表情について大人が正解を教えるのではなく、子どもが自分で「どんな気持ちなのかな」と考え、自分の言葉で説明していく過程が大事なのだと伝わってきました。
「怒ってもいい」「泣いてもいい」と、あえて伝えました
クイズの後、小児科医の沢田由紀子さんが子どもたちの前に立ちました。
「怒ってるお友達がいたら、どうする?お友達にどうしちゃる?」
「『怒らないよ』って優しく言うちゃる」「『優しく怒ったらいいよ』って言う」
沢田さんは「そうやね」と返します。
「泣いてる人が自分の目の前にいたらどんな気持ちになる?」
「悲しくなる」「意地悪されたのかもって思う」「けがしたのかも」
「じゃあ、泣いてる人がいたらどうしてあげる?」
「『嫌なことがあったが?』って聞いちゃる」
沢田さんは言葉を続けました。
「みんなは、怒りたくなる時ってない?」「お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんに怒りたくなることもあるよねぇ」
「怒ることは悪いことじゃないんよ」「泣くのも悪いことじゃない。嫌なことがあった時とか、痛かったら泣いてもいいんよ」
園児たちは静かに聞いています。
「みんな、怒ったり、泣いたりしながら生きています。怒ってもいいし、泣いてもいい」「その後は、にこにこ笑ってください。そして、困っている人がいたら、助けてあげてください」
「怒る」「泣く」といったネガティブな感情に対し、沢田さんは「怒ったら駄目」「泣いたら恥ずかしい」とふたをするのではなく、「いいんだよ」と肯定していきました。
まず自分の気持ちをありのままに受け止めることが、相手の気持ちを想像して受け止めることにつながり、さらに「自分を大切にし、相手を大切にする」ということにつながります。
子どもが感情を出すことを否定せず、共感しながら、気持ちにどう折り合いを付けるかを成長とともに一緒に考えていく。それも親の役割の一つなのだと、沢田さんの語り掛けから感じました。
カンガルーのポッケで使った絵本はこちら
最後に、カンガルーのポッケで使った絵本を紹介します。
【第 5 回 自分の気持ち・友達の気持ち】
「おこる」(作:中川ひろたか、絵:長谷川義史、金の星社)…月曜日から日曜日まで毎日誰かに怒られる「ぼく」が主人公。怒ることについて考えてみるきっかけになる一冊です
「かおかお どんなかお」(作:柳原良平、こぐま社)…楽しい顔、悲しい顔、笑った顔、泣いた顔。さまざまな表情が楽しめる一冊です。親子で顔まねするのもおすすめです
この連載はココハレの「性教育」で紹介しています。