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子どもの「神経性やせ症」とは?|極端に食べない、食べた後に吐く…コロナ禍のストレス、不安で増え、高止まりしています

子どもの「神経性やせ症」とは?|極端に食べない、食べた後に吐く…コロナ禍のストレス、不安で増え、高止まりしています

思春期に多い摂食障害「神経性やせ症」。子育て中の親が知っておきたいこと、注意しておきたいことを高知大・小松静香先生に聞きました

「神経性やせ症」を知っていますか?極端に食事を制限したり、過剰に食べた後に吐き出したり、無理な運動をしたりして低体重になる病気で、「拒食症」とも呼ばれます。

コロナ禍で神経性やせ症になる子どもが増え、患者数が高止まりしていることが、国立成育医療研究センターの実態調査で明らかになりました。高知県内でも外来患者が増えています。

「神経性やせ症」とはどんな病気なのでしょうか。高知大学医学部付属病院で子どもたちを診療し、実態調査にも参加している精神科の小松静香先生に聞きました。

 

小松静香さんは高知大学医学部精神科の寄付講座「児童青年期精神医学」の特任助教です。付属病院の「子どものこころ診療部」(児童・思春期外来)で、発達障害や情緒障害、気分障害などを診療しています。

小松静香先生。高知大学医学部の卒業生です
小松静香先生。高知大学医学部の卒業生です

子どものこころの診療部は、国立成育医療研究センターが行う「子どもの心の診療ネットワーク事業」の高知県内の拠点病院です。

神経性やせ症の子どもは、高知県内でも増えています

子どもの心の診療ネットワーク事業では、新型コロナウイルス感染症が拡大して以降、「子どもの心の実態調査」を行ってきました。

コロナの流行前の 2019 年度と、コロナ禍の 2020 年度を比較して増えたのが「神経性やせ症」の子どもたち( 20 歳未満)。外来の初診患者数は 1.6 倍、新規入院患者数は 1.4 倍となりました。

2021 年度も傾向は変わらず、高止まりが続いていて、「コロナ禍でのストレスや不安が影響している」と推測されています。

コロナ禍の前と後で、子どもたちを取り巻く状況は大きく変わりました
コロナ禍の前と後で、子どもたちを取り巻く状況は大きく変わりました

高知大の子どものこころ診療部でも、初診患者数は全国と同じように増えています。「入院患者数の傾向は変わらないので、入院になる手前で治療につなげられているのでは」と小松さんは説明します。

高知大を受診する子どもたちの診断名を見ると、発達障害が 40 %余り、気分障害が 30 % 。摂食障害は 4 %なので、患者数自体は多くはありません。

ですが、神経性やせ症は単に「やせ過ぎている」という病気ではなく、進行すると命に関わります。小松さんに詳しく聞きました。

神経性やせ症には「制限型」と「過食排出型」があります

神経性やせ症は摂食障害の一つです。摂食障害とは「食事の量や食べ方など、食事に関連した行動の異常が続き、体重や体型の捉え方などを中心に、心と体の両方に影響が及ぶ病気」です。

ざっくり説明すると、「食事とカロリーのことで頭がいっぱいになる病気」。具体的には次のような症状です。

【摂食障害の症状】

  • 必要な量の食事を食べられない
  • 自分ではコントロールできずに食べ過ぎる
  • いったん飲み込んだ食べ物を意図的に吐いてしまう。下剤などを使って強制的に出す
  • 体重が減って体がやせていっても「やせている」と認識できず、「もっとやせなきゃ」と思う(ボディーイメージの障害)

 

「患者さんによって症状はさまざま」と小松さんは説明します。摂食障害は「DSM-5」という診断基準によってさらに分類されます。「排出行動」とは自分から吐いたり、下剤を使ったりして、食べたものを体から出す行為、「非排出行動」は過剰な運動などを指します。

神経性やせ症・制限型 低体重あり 過食なし 排出行動なし、非排出行動あり やせ願望・ボディーイメージの障害あり
神経性やせ症・過食排出型 低体重あり 過食あり 排出行動・非排出行動あり やせ願望・ボディーイメージの障害あり
神経性過食症 低体重なし 過食あり 排出行動・非排出行動あり やせ願望・ボディーイメージの障害あり
過食性障害 低体重なし 過食あり 排出行動・非排出行動なし やせ願望・ボディーイメージの障害あり/なし

 

つまり、神経性やせ症とは「低体重」がある摂食障害。「制限型」が極端に食べないタイプで、「過食排出型」が極端に食べて、自分から出すタイプです。

「『過食』は単なる『食べ過ぎ』ではなく、食べる量を自分でコントロールできない状態です。例えば、家にある食べ物を何でもあさって食べたり、『 1 回に食パン 2 斤、ジュース 2 リットル、スナック菓子 3 袋、ケーキ 5 個、おにぎり 3 個』といったように驚くほど食べて、一気に吐きます」

低体重はBMIで診断します。15 歳以下の子どもは標準体重から診断します。

BMI=体重(kg)÷{身長(m)}²

BMIは 18.5~25 未満が標準です。18.5 未満が「やせ」で、14 を下回ると、入院が検討されます。

身長 150 cmで計算すると、45 kgだと 20 で標準。40 kgだと 17.78 で「やせ」になります。

BMIが標準値でも、1 カ月で 5 kg以上の体重の減少がある、本人が絶食している場合は治療が必要です。

小学校高学年から中学生、高校生に多いと言われています

海外の研究によると、神経性やせ症は男性が 12~13 歳から、女性は 14~15歳 から増えていくと言われています。「小学校高学年から増え、主には中学生、高校生です。思春期ですね」と小松さんは説明します。

思春期は人からの評価に敏感な時期。「ちょっと太った?」という一言がきっかけでダイエットを始めた、という経験のある人もいるのではないでしょうか。

神経性やせ症になる子どもたちは、思春期特有の心の状態に加えて、優等生タイプだったり、完璧主義であったり、強迫的なところがあったりするそうです。

「ちょっとしたことがきっかけになり、ダイエットを始めます。目に見えて体重が減ると、達成感が味わえます。すると、目に見える数字に執着して完璧を追い求め、『もっと頑張らなきゃ』と止まらなくなってしまいます」

診察に訪れる子どもたちに、温かく接しています
診察に訪れる子どもたちに、温かく接しています

コロナ禍は子どもたちのストレスの要因になっています。

「摂食障害だけに限りませんが、学校や部活など、さまざまな活動が制限され、気持ちをうまく発散できないことが影響していると考えらえます。『コロナ太り対策』もメディアで一時期取り上げられました。ダイエット特集やSNSでの情報にも影響されている可能性があります」

わが子がダイエットにこだわり始めたら?「体重」以外に目を向けるような関わりを

神経性やせ症が進むと、体にも心にも症状が出てきます。

【神経性やせ症の症状・身体】

  • 低体重、低体温、低血圧、徐脈(脈がゆっくりになる)
  • 髪が抜ける
  • 皮膚が乾燥する
  • 生理が不順になる・止まる
  • 疲れやすくなる、筋力が低下する

【神経性やせ症の症状・心】

  • イライラする、落ち込む
  • 集中力がなくなる、意欲がなくなる
  • 授業がしんどくなり、学校に行けなくなる

体の症状が進むと、危険な状態になります。神経性やせ症の人の死亡率は、一般よりも 5.9 倍。衰弱死や自殺につながってしまいます。

命の危険までには至らなくても、治療が遅れると、何度も繰り返す場合や、他の摂食障害に移行する場合があります。食べ物を万引するなど行動の問題が出る人もいます。大人が早く気付いて、治療につなげることが大切です。

では、親がわが子の症状に気付いたら、どうすればいいのでしょうか。「もっと食べなさい」は行き過ぎると逆効果だそう。

「本当は食べたいけれど、食べられない病気なので、家族が『もっと食べなさい』と説得すると、『もっとやせなきゃ』と必死になっている子どもとけんかになってしまいます。ご飯を食べなくなったり、やせによる体の症状が出てきたら、まずはかかりつけの小児科医に相談してください。イライラや集中力の低下も低栄養によるサインかもしれませんので、注意してください」

高知大学医学部では、学校現場との連携も進めています
高知大学医学部では、学校現場との連携も進めています

高知県内では、学校現場での研修が進められています。サインに気付いたら、担任の先生や養護教諭の先生に相談し、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーと連携していく方法もあります。

子どもたちは体重などの目に見える「数字」に執着しますので、家庭では他のものに目を向けさせるような関わりも大切です。

「お子さんには『体重が減って心配している』と伝え、体重以外の本人の健康的なところに注目してください。気分転換をしたり、部活の話をしたり、家族との時間を増やしていくのもいいでしょう。ストレスや悩みのしんどさを理解し、安心できる居場所をつくりながら、焦らずに規則正しい食生活を取り戻していきます」

家庭内だけでの対応は難しく、専門家の力が必要ですが、本人が受診を渋ることもよくあるそうです。「受診したがらない場合は、体の不調を話題にしながら『病院に行ってみようか』と話してみてください」

食べる量が減る、食べる種類が減る…小学校低学年でも起こる「回避・制限性食物摂取症」

最近、「回避・制限性食物摂取症」という新しい摂食障害が知られるようになりました。英語の頭文字を取って「ARFID(アーフィッド)」と呼ばれています。

ARFIDは明らかなやせ願望やボディーイメージの障害がないのに、食事が喉を通らなくなります。食べる量が減り、食べられる種類も少なくなります。神経性やせ症などこれまでの摂食障害や、他の病気では説明できません。

原因ははっきりとは分かっていませんが、不安が背景にある場合が多いと言われています。神経性やせ症に比べると低年齢でも起こり、小学校低学年ぐらいから相談があるそうです。

「発達障害を合併している場合も多いので、思春期前のお子さんでも『最近、食べる量が減ったな』と感じたり、低栄養のサインに気付いたら、かかりつけの先生に相談してみてください。学校と連絡を取り合って見守りながら、悪化する前に専門家につなげてほしいと思います」

この記事の著者

門田朋三

門田朋三

小1と年少児の娘がいます。「仲良し」と「けんか」の繰り返しで毎日にぎやかです。あだなは「ともぞう」。1978年生まれ。

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